月70万円超「軽貨物ドライバー」の勝ち方をYouTuberが伝授する理由

弁護士JP編集部

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月70万円超「軽貨物ドライバー」の勝ち方をYouTuberが伝授する理由
弁護士JPニュースの取材に応えるごーしんさん(1月20日/弁護士JP編集部)

新型コロナの国内感染者が初めて確認されてから丸2年。いまだ収束の兆しは見えず、低迷する業界も少なくない。

かたや、宅配サービス業界は好調だ。国土交通省によると、2020年度の宅配便取扱個数は48億3647万個。日本国内で新型コロナの感染が初確認された前年度(※1)に比べ約11.9%増加しているという。

※1…日本国内では2019年度の終盤(2020年1月15日)に新型コロナの感染が初確認された

宅配サービス業への転職者も増える中、とりわけ人気を集めているのが軽貨物ドライバーだ。関東運輸局のデータを例にとると、2020年度の貨物軽自動車運送事業者数は、前年度より約115%多い8万5219業者となっている。

インターネットで「軽貨物ドライバー」と検索すると、業務委託(フリーランス)スタッフの求人や、「自分のペースで働くことができる」といったメリットが書かれた記事を多く目にする。コロナ禍の一時的な収入源としたい人にとっては、元の職業と両立しながら働けることも魅力だが、その現状はどうなのだろうか。

木更津を拠点にフリーランスの軽貨物ドライバーをしながら、YouTube「ごーしんフリーランス TV」や、ロールプレイング形式で実践的なドライバー研修を行う「軽貨物の学校」を運営するごーしんさんに話を聞いた。

ごーしんさんご自身は、どのようなきっかけで軽貨物ドライバーとなったのでしょうか?

ごーしんさん:フリーランスとしてヤマト運輸で配送をしていた知人から「1カ月に50~70万円の売上がある」という話を聞いたことがきっかけで、2017年12月から軽貨物ドライバーを始めました。

それまではパチンコ店で店長をしていたのですが、年々厳しくなる規制とともに、売上も利益も減っていく状況を目の当たりにしており、違う業界への転職を考えていたんです。

実際に始めてみていかがでしたか?

ごーしんさん:売上はそれなりにありましたが、縄張り争いという壁にぶつかりました。より多くの荷物を効率よく配送できるコース、車を止めやすい場所、積み込みしやすい場所など…。フリーランスの場合は、それらを確保できるかで売上に大きな差が出てしまうので、みんな必死です。私も、誰にも文句を言われないくらい早く行って場所取りをするなど、地道な努力を積み重ねました。

当初から「フリーランス」という働き方を選んだ理由は?

ごーしんさん:時間の融通が利く、というのが大きな理由です。小さな子どもがいるので、風邪や熱のときにもすぐ対応できるのがいいですね。

フリーランスという働き方については、ギグワーク(※2)に柔軟に対応できて、それを楽しめる人には向いているのではないでしょうか。

※2…単発でオファーを受ける仕事。フードデリバリーの配達員など

ギグワークを楽しめる人、ですか。

ごーしんさん:フリーランスである以上、売り上げが元請けの都合に左右されることは免れられません。コロナ禍で宅配サービスの需要は増えていますが、そこには各社の熾烈な価格競争があります。

国土交通省によると、2020年度の宅配便取扱個数のうち約94.8%はヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社が占めています。一見、この3社と業務提携を結んでおけば安泰のようでもありますが、現実はそう甘くはありません。競争が激しい分、荷物の単価を下げたり、経費削減のためにフリーランスドライバーへの委託を減らしたり、各社の方針は目まぐるしく変わります。大手だけに依存していると、ある日突然仕事がなくなってしまうなんていうこともあるんです。

その他に、フリーランスドライバーとしての心得などはありますか?

ごーしんさん:配送品質の管理を徹底することですね。これができていないと、元請けから契約解除されるリスクが高まります。

具体的にはどういうことでしょうか?

ごーしんさん:配送の仕事は一見、単純に見えるかもしれませんが、実際にやってみるとそう簡単にはいきません。効率よく回れるルートを考えたり、回る順番に合わせて荷物を取り出しやすいよう積み込み方を工夫したり、配達先で車両を停めておく場所を確保したり…。

新型コロナの影響で、未経験で軽貨物ドライバーを始める方も増えましたが、慣れないうちは「きちんと荷物を届ける」ことだけでも大変です。

指定の時間に荷物を届けられない「遅配」、その日のうちに荷物を配りきれず指定の日に届けられない「未配」、荷物を誤って届けてしまう「誤配」は、サービスの品質に直接かかわることなので、元請けも厳しく目を光らせています。

特に誤配は、例えば荷物の中身が他人に見られたくないものであった場合、損害賠償を求める裁判にまで発展する可能性もあるので注意が必要です。

時間的制約のプレッシャーの中、慣れないうちは思わぬミスもしてしまいそうです。

ごーしんさん:時間に追われていると、身だしなみやお客さまに対する態度がおろそかになってしまいがちですが、それが原因でクレームが入り、契約解除に繋がることもあります。

軽貨物ドライバーという仕事をする上で、気を付けるべきポイントや工夫のしどころはたくさんあるのですが、フリーランスの場合は研修もなく、なかなかそれに気づきにくい。一つ一つのポイントは小さなことかもしれないのですが、その積み重ねで仕事の効率もドライバー自身の評価もまったく変わってくるんです。

そんな中、ごーしんさんが「軽貨物の学校」を始めようと思ったのはなぜでしょう?

ごーしんさん:新型コロナをきっかけに未経験の軽貨物ドライバーが増え、ノウハウがないゆえに上手くいかない人たちを自分の周りでも見聞きするようになりました。

せっかく業界に新しい人材が入ってきているのに、このままでは不幸なことがたくさん起きてしまう。軽貨物ドライバーに特化して実践的なことを教える学校がないのであれば、自分がやりたいと思い、2020年11月に「軽貨物の学校」を開設しました。

「軽貨物の学校」ではどのようなことを教えているのでしょうか。

ごーしんさん:実際の配送の仕事に同行していただき、荷物を積み込んだり、回り方を決める「ルーティング」をしたりしながら、それぞれの作業のポイントをロールプレイング形式で教えていきます。

いくつかあるコースのうち、もっとも基本的なものは「1日コース」。まずは私が運転する車の助手席に座り、一通りの流れを把握します。ある程度コツを掴んだら、次はご自身だけで車を運転していただき、私は後ろから別の車でついて行きます。

一人だけで走ってみると、ナビを注視して後続の車が詰まってしまったり、車線の中央を走っていたり、右側車線に車を停めてしまう「逆駐」をしてしまったりなんていうことは案外たくさんあるんです。

その他、夜間の配送も経験できる「2日コース」、フードデリバリーの実地研修や、座学で経営のハウツーを学んでいただく「3日コース」もあります。

「軽貨物の学校」実地研修の様子

これまで、どんな方が受講していますか。

ごーしんさん:2020年11月に開設して以来、北は福島、南は鹿児島から、約40人の方が木更津にある「軽貨物の学校」へ足を運んでくださいました。出身業界も、漁師、看板屋さん、鍵屋さんなどさまざまです。

もともとYouTubeを見てくださっていた方からは「実際にハンドルを握って体験してみると、うまく配送ができない自分を実感できました」ですとか、宅配経験があった方からは「自分の効率の悪い部分、効率的な積み込み方などご指摘いただき大変為になりました」といった声をいただいています。

フリーランスドライバーとして業界を渡り歩くごーしんさんから見て、宅配サービス業は今後どのように変わっていくと思いますか?

ごーしんさん:新型コロナをきっかけに転職した方の多くは、コロナ収束後に元の職業に戻るのではないかと考えています。ただしドライバーが少なくなるからといって、1人あたりの売り上げが増えるというわけではありません。

アマゾンをはじめEC各社は、より低価格・高品質の宅配サービスを常に求めており、荷物はヤマト運輸や佐川急便といった大手だけでなく、多様なサービスに分散されています。1社に頼りきらず、ギグワークでより多くの元請けから仕事を取れるドライバーでなければ、業界でやっていくのは厳しいのではないでしょうか。

一筋縄ではいかないフリーランスドライバーを、ごーしんさんが続ける理由は何でしょうか?

ごーしんさん:今は、かつての「雇用されていなければダメ」という概念がどんどん崩れている時代だと思います。たしかにフリーランスの場合、ドライバー自身が変化しなければ淘汰されてしまう厳しさはありますが、新しい働き方に挑戦していることには大きなやりがいを感じています。雇用されているときには味わえない自由さがありますし、なかなかいいものですよ。

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