【銀座時計店強盗】 運転手役「成育歴や精神的な未熟さ考慮」も懲役4年6か月“実刑”判決 裁判官「責任は相応に重い」
今年5月、東京・銀座の高級時計店に覆面の男性らが侵入し腕時計などを奪った事件で、実行役を送迎した「運転手役」の特定少年(当時19歳)に対して、東京地方裁判所(蛭田円香裁判官)は25日、「被告は指示役に従う従属的な立場だったものの、事件で重要な役割を果たした責任は重大」として、懲役4年6か月の実刑判決を言い渡した。
事件発生から約20分で逮捕
事件は今年5月、白昼の東京・銀座で起こった。
高級時計店に覆面の男性3人が侵入。刃物を見せ「伏せろ」「ぶっ殺すぞ」などと店員を脅した上で、バールを使いショーケースを破壊、店にあった腕時計など74点およそ3億850万円相当を奪い逃走した。この様子は通行人らによって撮影され、SNSなどでも拡散された。
3人は腕時計等を強奪した後、運転手役が待つ逃走用車両に乗って逃走。赤信号無視などをしながら警察の追跡を逃れたが、最後は車を乗り捨てて逃げこんだマンション敷地内で逮捕された。事件発生から逮捕までは、約20分だった。
実行役3人と運転手役が逮捕され、うち16歳の少年=少年院送致=を除く特定少年3名が起訴された。また、事件をめぐっては、7月に逃走用車両を借りた容疑で会社員の男性(33歳)が、9月には指示役とみられるアルバイトの男性(18歳)が逮捕されている。
東京地裁(蛭田円香裁判官)は9月25日、実行役1人に対して懲役4年6か月の実刑判決を言い渡していた。今日の裁判では、「運転手役」の当時19歳(特定少年)の男性に対して、実行役と同じ懲役4年6か月の判決が言い渡された。
「やってしまったことの責任を取りたい」
運転手役の被告は犯行時、「あと30秒」などと犯行中の時間を計測し共犯者らに電話で知らせた上で、現場からの逃走を助けたとされ、これまでの裁判で起訴内容を認めていた。
検察側は論告で、犯行時の男性の役割について「実行犯らを送迎し、いつでも逃走できるようにするなど重要な役割で犯行に寄与した。くむべき点は一切ない」と厳しく指摘し、懲役7年を求刑。
一方の弁護側は、犯行時の男性の役割について「主体性がなく従属的で利用された側面がある」と説明。特定少年であることや、被害店舗の従業員に謝罪し、示談が成立していること、母親が更生に助力することなどを鑑みた上で、保護観察付執行猶予の判決を求めていた。
被告は最終意見陳述で、「過去を変えることはできないが、やってしまったことの責任を取りたい。力になりたいと言ってくれた人たちに感謝している。今後はその人たちのためにがんばろうと思う」と更生の意志を述べていた。
裁判官「被告の責任は相応に重い」
蛭田裁判官は今回の判決理由について、奪われた腕時計などがすべて回収されたことや、被害店舗の従業員が刑事処罰を望んでいないことなどを挙げた上で、「人通りの多い道に面した路面店に覆面で侵入するなど大胆で、危険かつ悪質な手口。被害金も計3億円あまりと多額で結果は重大だ。成育歴や精神的な未熟さ、母親が更生に助力することを考慮しても、被告の責任は相応に重い」と述べた。
なお、未決勾留日数60日を刑期に算入するほか、訴訟費用は被告人に負担させないとした。
公判を通して伏し目がちだった被告だが、判決日だけは傍聴席を窺うなど緊張の色をほのかにのぞかせていた。ただ判決が言い渡された後は、動揺する様子もなく、判決理由など裁判官と通訳(※)の言葉を坦々と受け止めているように見えた。
※本公判では、日本語よりも英語が堪能な被告のために通訳が同席し、裁判官らの言葉はすべて英語に訳された。
判決理由や控訴についての説明も英語に訳された後、最後に裁判官が「わかりましたか?」と問いかけ、その言葉が英語に訳されると、被告が静かに「はい」と日本語で答え閉廷した。
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