オンラインカジノ「違法」でも200万人アクセスの現実 運営業者の摘発で「利用者」に起こり得る“最悪の事態”

榎園 哲哉

榎園 哲哉

オンラインカジノ「違法」でも200万人アクセスの現実 運営業者の摘発で「利用者」に起こり得る“最悪の事態”
気軽にアクセスしプレイできるが、その“代償”は大きい!?(Graphs / PIXTA)

海外の事業者が運営するオンラインカジノの賭博行為を手助けしたとして9月、決済代行業者の男2人が常習賭博ほう助の疑いで警視庁に逮捕された。海外のオンラインカジノ業者への入出金を代行する業者が摘発されたのは全国で初めて。

オンラインゲームのように、パソコンやスマートフォン等を用いて気軽にアクセスしプレイできる「オンカジ」ことオンラインカジノだが、利用すれば刑法の「賭博罪」等に該当し、逮捕される可能性もある。

海外では合法でも日本では犯罪

オンラインゲームなどに詳しいライターのA氏によると、オンカジのサイトには、いくつかのカジノゲームがあり、客は好みのゲームを選びアクセス、プレイすることができるという。

オンカジの利用者数について、情報通信工学を専門とする神戸大の森井昌克教授は業者へのアクセス数や調査資料などを基に 、100万~200万人にも上ると分析している。また、インターネット上には「オンラインカジノおすすめランキング!」というまとめサイトすらある状況だ。

しかしこのオンカジ、冒頭で述べた通り合法とする海外の拠点にアクセス、利用したとしても国内法では「違法」となることはあまり知られてはいないのだろうか。

警察庁のホームページでは「海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪です」と注意喚起し、賭博罪(賭博をした者は、50万円以下の罰金または科料)、常習賭博罪(常習として賭博をした者は、3年以下の懲役)に該当すると警告。常習者など悪質な賭博事犯の検挙事例や、近年の取締り状況(令和2年=16件121人、同3年=16件127人、同4年10件59人)についても言及している。

「少額であっても」賭博罪が成立

では、オンカジが違法である法的な根拠はどのようなことなのか。

風営法等に詳しい三堀清弁護士(三堀法律事務所)は、そもそも対面で行うリアルのカジノについても、「カジノで行われているゲームは、マシンゲーム(スロット、ビデオポーカー)およびテーブルゲーム(バカラ、ルーレット、ポーカー等)のいずれも、お金を賭けるという点で刑法の賭博罪(刑法185条以下)になります」と語る。

「賭博とは“勝敗の偶然性”に関して財物=経済的な価値のある物の得失を争う行為です。“勝敗の偶然性”とは、行為者(賭ける人)の主観的に見て不確実性(勝つか負けるかわからない状況)があれば成立し、客観的な不確実性は必要ありません。

たとえば、技術介入性があるゲームなどで当事者間の技術差が大き過ぎて誰の目にも勝敗が明らかであっても、極わずかでも勝敗の結果に不確実性があればよいとされています」(三堀弁護士)

また、財物については、たとえば飲食のもてなしや異性との情交等、財産的な価値があれば何でもよいとされているが、賭けられる財物が「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」には賭博罪が成立しない(刑法185条但し書き)とされている。

「財産的価値の低い物、たとえば、菓子類やカツ丼等の食事を賭けても犯罪とはならないということです。ですが、金銭は別です。金銭はその性質上、“一時の娯楽に供する物とは言えない”という理由から、少額であってもこれを賭けると賭博罪が成立する、という100年ほど前の古い判例(大審院判決=大正13年2月9日= )が今でも生きています」(同前)。

自らがプレーヤーであるかどうか

この賭博罪、たとえオンライン(遠隔やバーチャル等)で行っても「成立する」と三堀弁護士は指摘する。

「オンラインカジノのプレーヤーは、(ゲームが)実際に行われている現場に行くことはありませんが、現に行われているゲームの結果に関し、インターネットやSNSを介して、現金あるいはこれと同視できる仮想通貨やチップという『一時の娯楽に供する物とはいえない』経済的価値のある物を賭けてプレイに参加することに他なりません」

では競馬、競輪などの公営競技やパチンコなどは賭博罪に当たらないのだろうか。

「公営競技はそもそも賭博行為には該当しません。カジノ(あるいは丁半賭博等)では、客は自らプレーヤーとしてゲームに参加していますが、公営競技では客は自ら馬や自転車等に乗って競争に参加することはなく、単に勝馬、勝者に投票する馬券、車券等を購入し、当たった場合に配当を受けるだけという違いがあります。パチンコは客とホール業者が出玉に対する賞品(景品)を賭けるゲームではありますが、賭博罪に該当する行為ではありません」(三堀弁護士)

その理由のひとつとしては、賞品として提供される物が「客が一般に日常生活の用に供すると考えられる物品」=「一時の娯楽に供する物」に限定されている(風営適正化法19条、同法施行規則36条2項2号)こと、つまり「“娯楽”の要素が強いことが挙げられる」(同前)という。

ユーザー全員が特定される可能性もある

賭博罪はたとえ1回でも賭博を行えば成立、また過去の行為についても公訴時効期間(単純賭博罪、常習賭博罪ともに3年間=刑事訴訟法250条2項6・7号=)が経過するまでは成立する。

のめり込むことによって経済的破綻や心神衰弱にもつながりかねず、さらには検挙され刑事罰も受けかねないオンカジ利用について三堀弁護士は次の様に警鐘を鳴らす。

「通常はオンラインカジノのサイトのどのユーザーがアクセスしたか、という事実を特定することは困難ですが、仮に国内の闇オンラインカジノの業者が摘発された場合、そのサイトにアクセスしたユーザー全員が特定されることになり、処罰される可能性が出てきます。くれぐれも軽い気持ちでアクセスしないようにしてください」

取材協力弁護士

三堀 清 弁護士

三堀 清 弁護士

1957年、神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、1988年に弁護士登録(第二東京弁護士)。1997年に三堀法律事務所を設立。パチンコホールをはじめ、企業法務案件を多く手がける。

所属: 三堀法律事務所

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア