『東リベ』マイキー1万円フィギュア「顔が変」で騒動「想像と違う」通販商品が届いたら?

弁護士JP編集部

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『東リベ』マイキー1万円フィギュア「顔が変」で騒動「想像と違う」通販商品が届いたら?
どこか間の抜けた表情の“マイキー”フィギュア(提供:オレマネさん)

人気漫画・アニメ『東京リベンジャーズ』のキャラクター佐野万次郎(マイキー)のフィギュアを購入したファンから、「届いたものがサンプルと全然違う」との声が相次ぎ、販売元が返品・返金の対応を迫られた。

当該商品は、2021年12月1日に販売元「オフィス28」のサイト内で発売が発表された。SNS上では「予約した!」という報告や、「買おうか悩んでいる」「ポチらなきゃ」という声など、人気キャラクターのスケールフィギュア(※1)発売を好意的にとらえた意見が多く投稿された。

※1 スケールフィギュア…漫画・アニメの中に出てきたままのデフォルメされていないリアルな頭身のフィギュアのこと。

予約数も好調だったのか、同社は2022年2月4日に、同作の主人公・花垣武道(タケミチ)のフィギュアも発売することを発表している。

しかし時を同じくして、「サンプルと顔が違う」「返金対応してほしい」・・・SNSを中心にマイキーのフィギュアが手元に届いたファンらから抗議の声があがりはじめた。実際に購入したオレマネさん(@CatTetora)さんは、フィギュアの出来に思わず笑ってしまったという。

オレマネさんさんは、“これはこれで面白い”と返品しないつもりだというが、販売元の「オフィス28」では未開封品に限定し、期日を設けたうえで返品・返金の対応(※2)を決めた。

※2 すでに返品・返金対応は終了している(2022年3月4日現在)

マイキーフィギュアの金額は妥当だった?

今回の騒動について、フィギュアやプラモデルに詳しいライターのしげるさんは「フィギュアは手作業の工程が多く挟まる工業製品なので、品質には多少のばらつきが出ます。近年のフィギュア専門メーカーの製品は相当に高度な製造管理が行われていますが、それに比例して価格も高額になっている。

今回は『東京リベンジャーズ』という人気タイトルで初めて発売されたスケールフィギュアだったことから、そういった事情を踏まえていない人や若い人が購入した点が騒動を大きくした原因だと思います」と分析。

「現物をしっかりと見ていない状態での話ではありますが、個人的には1万円(販売価格は税込9800円)だったらあれくらいの出来でもおかしくはないと思います。専門メーカーの製品だったら、特に大きな装飾やパーツがついていないキャラ単品のフィギュアでも、スケールフィギュアなら1万円台後半くらい以上が相場ですから。

ただ、それはフィギュアを普段から買い慣れている人間の話であって、作品やキャラクターに惹かれて初めてフィギュアを買った若い人にとっての1万円は重みが違う。コミックそのままのハイクオリティなものが届くだろうと、期待する気持ちもわかります」(しげるさん)

現在のフィギュアはほぼ受注生産に近い体制で量産されており、まずモデラーが塗装まで行った見本を公開してネットなどでユーザーから受注をとり、その上で半年~1年以上の時間を使って量産する。この見本をデコレーションマスター(デコマス)と呼び、デコマスはそのまま中国などの工場で量産するための仕様指示の役割も持つ。

「デコマスは広報用の素材と製品仕様書のような役割を兼ねているので、メーカーとしても気合いを入れて製作します。だから量産の際には、どれだけデコマスに近づけることができるかが重要になる。メーカーのクオリティコントロールに問題があった場合、モデラーが作った一点物のデコマスと量産品の間にズレが発生することはありえますし、逆にそういったエラーを起こさないメーカーはユーザーからの信頼を得ます。

今回のフィギュアの写真を見る限りでは、製品版のアイプリントや顔の彫刻が甘く見えるところもあるので、クオリティコントロールにちょっと難があった可能性もあります」(しげるさん)

ただし、しげるさんは今回の騒動について、デコマスと製品の間のギャップはそこまで大きくなかったのではないかという点も指摘する。

「デコマスの画像を見ると、かなり煽り(低い位置から被写体を見上げる状態)で撮影されているんですよね。そうすると顔の上下が圧縮されて、目と顔の比率が変わって見える。だから、製品が届いて正面から見たときに『似ていない!』と感じたということもあるかもしれません。これまでにもっと悲惨な出来のフィギュアはありましたし、スケールフィギュアとしては安価な1万円という価格を考えると、あまり騒ぐのも酷かなという気もします」。

写真はイメージです(buritora/PIXTA)

フィギュア購入時に気を付けること

デコマスと商品のギャップを想像するのは、フィギュアに慣れ親しんでいないと難しい。しかも現在のフィギュア販売は、受注生産が多く実物を見てから購入を決めることはほとんど出来ない状況だという。では知識を持たないファンがフィギュアを購入する際には、どの様な点に気を付ければいいのだろうか。しげるさんは2つの注意点をあげる。

  • 制作会社、販売会社:知らない会社であれば検索し、過去の作品や実績を確認する
  • 製造期間:受注から手元に届くまでの期間を確認し、製造期間を計算する

特に製造期間については、大手フィギュア制作会社のサイトを見ると、現時点(2022年3月4日)で2023年以降の発売スケジュールが掲載されている。しげるさんは「受注期間から手元に届くまでの期間で製造期間も決まってくる。急いで受注を取って、急いで作った商品のクオリティが低いのは分かりますよね」と注意を促した。

三木 悠希裕 弁護士の見解

今回の騒動では販売元の対応により返品・返金が可能となったが、「クーリングオフ」は通信販売商品が適用外。「かわいくない」「かっこよくない」と思っても、通常は返品できないだろう。そこで購入者として、想像と違う商品が届いてしまったらどうすれば良いのか、三木悠希裕弁護士に話を聞いた。



受注販売の場合でも、通信販売である以上クーリングオフはできないのでしょうか?

三木弁護士:一般的にクーリングオフは、特定商取引法に規定されている、特定の取引方法に関して、一定の期間内であれば、無条件で一方的に契約をなかったことにする制度です。通信販売については、クーリングオフではないですが、同法15条の3第1項において、8日以内であれば、申し込みの撤回又は解除ができるとされています。

もっとも、同項但し書きにおいて、販売業者が広告に返品に関する特約を表示している場合は、その特約によることになりますし、もし返品に費用が掛かるようであれば、その費用は購入者の負担となります。

まだ完成していない製品にお金を払う受注販売というのは、どういう契約なのでしょうか?

三木弁護士:受注販売は、「あらかじめ一定の規格で統一された物品を、製作者の材料を用いて制作し、その所有権を移転する」ことが重要な契約ですので、売買契約の性質を有するものであり、通信販売で購入したということであれば、返品の特約次第ということになります。仮に特約が広告に表示されていなければ、前述のとおり解除は可能です。

受注販売の商品を購入する際に購入者が気を付けること、企業が販売にあたって気を付けるべきことをそれぞれ教えてください。

三木弁護士:通信販売はクーリングオフの対象外ですから、消費者は冷静に購入するかどうかを検討する必要があります。また購入に際しては、返品についてどのような特約の内容となっているか、きちんと確認をとり、あとあとトラブルとならないように、広告を保管する(インターネットのページであればスクリーンショットをとる)などの対策をしておくとよいでしょう。

逆に企業側は、通信販売においては、特約を広告にきちんと表示させること、また完成品がまだない場合は、試作品と全く同じというわけではないことについて、注意を促しておくのがよいでしょう。

今回のケースでは販売元も非を認めた形ですが、「思っていたのと違う」「顔が変」としてSNS上で抗議した場合、販売元から商品の価値を下げたとして訴えられることはないのでしょうか?

三木弁護士:内容にもよりますが、企業の社会的名誉を傷つければ、名誉毀損罪、表現によっては、偽計業務妨害罪という犯罪に該当する可能性は否定できませんし、民事上の損害賠償責任を問われる恐れもあります。

SNS上で発信する際の留意点を教えてください。

三木弁護士:特にSNSでの発信は、簡単に転載されるなどして、自分でも思っていなかった大きな影響を与えてしまい、また自分でコントロールして収束させることが不可能となる場合もあります。消費者として取引内容に問題があると考える場合は、直接販売元に対応を求めるか、お近くの消費生活センターで相談されるのがよいでしょう。

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