公衆浴場は「身体的な特徴」で利用 厚労省が通知、当事者団体は合意済も「トランス女性」へ“筋違いなヘイト”絶たず

弁護士JP編集部

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公衆浴場は「身体的な特徴」で利用 厚労省が通知、当事者団体は合意済も「トランス女性」へ“筋違いなヘイト”絶たず
記者会見に臨んだLGBT法連合会のメンバーら(11月27日 霞が関/弁護士JP編集部)

最高裁が先月25日に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、特例法)の「生殖不能要件」(3条1項4号規定)が憲法13条に違反していると判断した後、特に女性トイレや公衆浴場など「女性スペース」の利用をめぐってトランスジェンダー女性に対するヘイトが巻き起こっていることなどを受け、LGBT法連合会が27日、厚生労働省で記者会見を開いた。

自称すれば「女性スペース」利用できるわけではない

性別の変更には、医師の診断書のほか、特例法3条1項が定める以下5要件が必要だ。

  • 1号:18歳以上であること
  • 2号:現に婚姻をしていないこと
  • 3号:現に未成年の子がいないこと
  • 4号:生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(いわゆる「生殖不能要件」)
  • 5号:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること(いわゆる「外観要件」)

先月の最高裁判決では、このうち4号(生殖不能要件)について「身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るもの」だとして、裁判官15人全員の一致により、憲法13条に違反していると判断された。

また5号(外観要件)についても、15人中3人の裁判官が「違憲」であるとして高裁へ差し戻され、今後改めて審理されることになっている。

なお、最高裁判決に付された裁判官の個別意見では、「心は女性だ」と主張する男性が公衆浴場などの女性スペースに入ってくるという不安の声があることを踏まえて、以下のように指摘されている。

「5号規定は、治療を踏まえた医師の具体的な診断に基づいて認定される性同一性障害者を対象として、性別変更審判の要件を定める規定であり、5号規定がなかったとしても、単に上記のように自称すれば女性用の公衆浴場等を利用することが許されるわけではない」(三浦守裁判官)

LGBT法連合会事務局長・神谷悠一さんは会見で「裁判官の個別意見からも、特例法の要件の問題と男女別施設の課題が別だということは明らか。両者が安易に接合され、実態を踏まえれば施設利用における課題解決とは無縁となる言説が繰り返されることに、改めて警鐘を鳴らす」と訴えた。

厚労省は「身体的な特徴をもって判断するもの」と通知

公衆浴場や旅館の共同浴室の利用については、今年6月に厚労省からも「(自認する性別ではなく)身体的な特徴をもって判断するもの」との通知が出されている。

そもそも共同浴室については、2000年に厚生省(当時)生活衛生局長名で通知された「公衆浴場における衛生等管理要領等について」で「おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと」と定められている。

6月の厚労省通知では、この要領が風紀の観点から混浴禁止を定めたという趣旨を踏まえ、共同浴室における「男女」は「身体的な特徴をもって判断するもの」とした。また、「浴場業及び旅館業の営業者は、例えば、体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要がある」との考えも示されている。

会見に参加した奈良女子大学名誉教授・追手門学院大学教授の三成美保さんも「(浴場では)外性器を含む裸身をさらすため、法的性別・性自認ではなく『身体的特徴』による区別は合理的」と指摘(同通知についてはLGBT法連合会も同意)。

一方で「トランス女性」と自称して男女別施設を利用しようとする男性については「厳正に処罰するべき」と断言した。

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