“アセクシュアル”、 “ノンバイナリー”の意味は? …企業、自治体も積極的に取り組む「多様性」の奥深さ
「うちの会社はどんな人も分け隔てせず、多様な人材を受け入れている」
そう自負しているなら、まず次の用語を説明できるか試してみてほしい。
1:LBGTQ+
2:SOGI
こんなの知っている。では次はどうだろう。
3:ノンバイナリー
4:アセクシュアル
いかがだろう。全問正解できたなら、冒頭の発言に胸を張っていい。「?」が続いたのなら、なんちゃっての可能性大だ。
もっとも、なんちゃってだからと気にする必要はない。ただ、昨今は多様性が世界標準。きちんと認識していれば、より豊かに社会の中で暮らしていけることになる。
ダイバーシティに積極的な企業が増加
企業などの団体が、ダイバーシティに積極的に取り組むケースは増えている。さらに踏み込み、LGBTQ+、すなわちレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を目指す企業も増えている。
こうした活動をサポートする団体も存在する。一般社団法人「work with Pride」だ。もともとは、2012年に日本アイ・ビー・エム株式会社と、国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ、NPO法人グッド・エイジング・エールズの3者が共同で日本でのLGBTQ+従業者支援に関するセミナーを企画したことからスタートした。
人々が自分らしく働ける職場づくりを進めるための情報の提供や、各企業が積極的に取り組むきっかけを提供することを目的に、年に一回、企業・団体の人事・人権・ダイバーシティ担当者を主な対象に、LGBTQ+に関するカンファレンスの開催などを行っている。
「PRIDE指標」とは
取り組みを実感し、企業がより能動的に取り組めるよう、2016年には「PRIDE指標」が策定された。これは、LGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティへの取組みの評価指標となるもので、なにをすればそうした人を許容する職場といえるのかの一つの基準となっている。
クリアしていれば、上記の用語の意味も答えられるはずだ。8回目となった「PRIDE指標2023」には398社の企業・団体及び自治体が応募。その数は年々増加しており、大小の企業が多様な人材を受け入れる職場づくりに高い関心を寄せていることが分かる。
企業の取り組み事例
その中の一社、佐川急便を中核とするSGホールディングスグループの取り組み事例をみてみよう。「PRIDE指標」については、同社は3年連続でシルバー認定を受けている。
もともと多様な人材の活用へ向け、ダイバーシティに力を入れている同社。最初は女性のみで取り組みをスタート。2011年のことという。その後、活動の本気度を示すため、グループ会社の各社社長が推進責任者となり、男性管理職を巻き込みながら活動の重要性を浸透させていったそうだ。
その結果、「当初の女性活躍のみの活動が、全社的に男性の育児参画、介護、障がい者の活躍、LGBT等活動へと広がり、それに対し、従業員の参画も増加し、マイノリティに対しての意識が変わっていった」(同社D&I担当者)という。
同社が積極的にダイバーシティ浸透を推進するのは、運送業という、男性が主軸の業種という事情もある。
「当社グループは、約9万人が働いており、社風として、全社一丸となりスピード感を持って行動できることが得意な文化。物事の理として、長所は短所にもなりえるところから、一方では、同じ方向を向くがゆえ、価値観がひとつに偏りがちな点もあります。そうした文化を変えることがひとつの課題でした」と同社D&I担当者は、多様化を推進する背景を明かす。
男性中心の職場におけるメリットとデメリット。メリットを生かし、デメリットを克服できれば、運送業のイメージが変わり、業界全体がレベルアップするーー。そこまでの使命感を持って取り組んでいるからこそ、取り組みは着実に成果につながり始めている。
カミングアウトを自身で選択できる
2023年度はさらに踏み込み、LGBT当事者が「カミングアウトを『する』・『しない』を自身で安心して選択でき、発言できる会社」の実現を目指し、新たな活動として、ALLY活動「レインボーミーティング」を始めた。これはLGBTを理解し、支援する人を指すALLYを増やしていく活動で、誰もが安心して接することができる職場づくりにつながるアクションだ。
9万人規模の企業がこうした活動を行うことで、同社だけでなく、誰もが安心して働ける職場がどんどん広がっていく。「PRIDE指標」という共通の取り組みがあることで、なかなか浸透を実感しづらい、よりよい社会にとって大切なアクションをより能動的に取り組める。こうしたことも、同指標に多くの企業が参画している理由といえる。
条例でアウティングを禁止する自治体も
自治体でもマイノリティに寛容なコミュニティづくりを推進する取り組みが増えている。性的な指向や性自認を本人の同意なしで暴く「アウティング」を条例で禁止する自治体は、11月の時点で12都府県26自治体となっている。
例えば、岡山県総社市の「多様な性を認め合う社会を実現する条例」はカミングアウトを「自らが性的マイノリティであることを公表すること」と定義づけ、その上で、「性的マイノリティであることを、本人の意に反して公にすること」および「カミングアウトを強制し、または禁止すること」を禁止している。
静かに着実に広がる、多様な社会実現へ向けた取り組み。その先には、とげのない、なめらかで摩擦の起こりにくい、心地のよい社会の姿がみえる。
用語の意味
1:LBGTQ+
性的マイノリティーのうち、レスビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの総称
2:SOGI
Sexual Orientation and Gender Identityの略。ソジ・ソギと読む。意味は「性的指向と性自認」
3:ノンバイナリー
自身の性自認、性表現に男女の枠組みをあてはないセクシャリティ。男女どちらでもない性
4:アセクシュアル
他者に恋愛感情や性的欲求を抱くことのないセクシャリティ。恋愛感情を持つが性的魅力を感じない人をノンセクシャルと呼ぶことも
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