宝塚歌劇団の謝罪会見が “炎上”した明確な理由 弁護士が指摘する企業としての「対応のまずさ」とは
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宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の宙(そら)組娘役として舞台で華やいでいた劇団員A(25)さんが9月30日、宝塚市内の自宅マンションで自ら命を絶った。団は外部弁護士による調査チームを設置し、その報告を受けて11月14日、記者会見を開いたが、会見の内容を巡ってSNS上は“炎上”。批判が殺到した。
団の会見には何が足りず、何が必要だったのか。企業法務に詳しい日笠真木哉弁護士に組織対応で求められる“核心”を聞いた。
「公平性が保たれていない」との印象を与えてしまった理由
会見の内容以前に「調査の対応姿勢に問題があった」と、日笠弁護士は炎上した理由をこう指摘する。
「外部調査と言いながら、正式な第三者委員会を立てず、(調査を)内輪で済ませてしまった。会見も調査チームではなく、報告書を受けた宝塚、阪急の役員が行った。これが見る人に『公平性が保たれていない』という印象をまず与えてしまった。本来は、ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)のように、独立した第三者委員会を立ち上げ、宝塚とは完全に切り離した状態で、批判も受け入れる覚悟で調査に臨まなければならなかった」
第三者委員会とは本来、監督官庁等からの指示に基づいて、あるいは自ら積極的に、利害関係のない元裁判官や元検事、弁護士、また金銭の問題があれば公認会計士などを入れて立ち上げるものだという。
しかし宝塚をめぐっては、一部報道によって歌劇団関連企業の役員が外部調査を委嘱された弁護士事務所に所属していたことも明らかになった。報道に対し団は「独立性が確保されている」と発表しているが、日笠弁護士は「“外部”の名の下で実質的には宝塚、阪急が雇った委託先に調査を行ってもらった形だ」と指摘する。
また、報告書には劇団員ら約70人にヒアリングを行ったとあるが、4人はヒアリングを拒否したという。こうした点も踏まえ、日笠弁護士は「実際どうかはわからないが、宝塚、阪急に都合のいいような報告書を作成してもらったのではないか。そのために作成の過程において、都合のいい人物にのみ聴取をしたのではないかと、どうしたって疑って見てしまう対応になっている」と語る。
記者会見の炎上は不可避だが…
一方、日笠弁護士は企業の不祥事や問題についての記者会見などで“炎上を防ぐ”ことは「できない」と断言する。
「炎上を少しでも“抑える”には『誠実に対応する』ということに尽きる。現代の情報社会の中では会見が行われる前に、民意、求められる答えはすでにでき上がっている。悪いことを隠そうと思っても隠し切れないという潔さも必要だ」(日笠弁護士)
その上で、今回の宝塚の会見について「『いじめはなかった』と一言で終わらせるのではなく、報道されているような行為は実際にあったのか、なかったのか。ひとつずつ事実を明らかにし、もし問題とされる行為があったのならばそれを認め謝罪する。そこから始めなければならなかった」(同前)と振り返る。
事件発覚直後、遺族に伝えるべきだったこと
さらに、事件発覚“直後”の対応のまずさが、その後の炎上に大きく影響しているとも日笠弁護士は指摘する。
中学を卒業して親元、故郷を離れ、舞台で活躍することを夢見て宝塚音楽学校に入校、2年間の稽古を経て宝塚歌劇団に進む少女たち。
「宝塚は大切なお嬢さんを親御さんから預かり、人間性も含めて大人へと成長させている。その中で(自死が)起きたのであれば、因果関係は分からないとしても道義的、倫理的な責任を感じ、まずは謝り、『徹底的に調べます、時間をください』と遺族に伝えるべきだった。(報道される前に)誠実に遺族に対応していればここまでのことにはならなかったはずだ」(日笠弁護士)
財務や評判に直結する「危機管理」の重要性
事件や事故などはいつ、いかなる時に起こるか分からない。企業は事件・事故が起きればその対応に追われることになる。日笠弁護士は、そうした事態に備え企業が日頃から「危機管理」に取り組んでおくよう勧める。
「危機管理は生産性がないため後回しにされがちだが、いったん事件・事故が起きてしまえば、一挙手一投足が財務や評判に直結する。普段から資本と労力を投入して危機管理を徹底しなければならない時代になっている」
宝塚に限らず、ニュースなどでは企業の役員らがそろって頭を下げる映像がよく流れるが、そこに誠実さ、誠意がなければ逆効果にもなりえる。宝塚の対応・会見を“反面教師”に、企業は自社の危機管理を見直す必要があるのではないだろうか。
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