厚労省「飲酒ガイドライン」への意見募集28日まで アルコールを“少しでも”飲めば「リスクが高まる」病気とは
「女性は1日にビール500ml以上で生活習慣病のリスクが高まる」
11月下旬、厚労省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案) 」を公表すると、このような話題が盛んに報じられた。
報道を受け、SNSなどでは「分かりづらい」「実用的でない」「意味がない」などさまざまな意見も飛び交ったが、厚労省は11日から国民の意見を募る「パブリックコメント」を開始。今後、28日いっぱいを期限に受け付け、来年3月下旬に施行する予定だという。
“少しでも”飲酒しただけでリスクが上がる病気も…
同ガイドライン案は、飲酒量を「何杯飲んだか」「アルコール度数は何%か」ではなく、お酒に含まれる「純アルコール量(g)」で把握するもの。それによって、「自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけるための留意事項等を提示した」(同ガイドライン案概要より)としている。
純アルコール量は、以下の計算式で算出することができる。
お酒の量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8(アルコールの比重)
同ガイドライン案には、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として「1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」との数値が掲載されている。冒頭の「女性は1日にビール500ml以上」は、これを反映したものだ。
ちなみに、身近なお酒を「純アルコール量20g」に置き換えると以下のようになる。
- ビール(5%):500ml(ロング缶1本)
- 酎ハイ(7%):350ml(缶1本)
- ワイン(12%):200ml(グラス2杯)
- 日本酒(15%):180ml(1合弱)
- 焼酎(25%):100ml(グラス半分)
- ウイスキー(43%):60ml(ダブル1杯)
なお、国内の主要ビールメーカーでも2021年から順次、アルコール飲料に「純アルコール量」をグラム単位で表示する取り組みを実施しているので、チェックしてみてほしい。
また、生活習慣病のリスクを高める飲酒量とは別に、同ガイドライン案に添付された資料には、疾病別リスクと飲酒量(純アルコール量) について以下の表が掲載されている。
表を見ると、「少しでも飲酒をするとリスクが上がるもの」(0g<大)の多さに驚くのではないだろうか。
女性はアルコールに弱い?
ここまで見てきたデータから、多くの項目において女性の方が男性より少量のアルコールで健康リスクが上がることに疑問を持った人もいるかもしれない。性別の違いによる影響について、同ガイドライン案には以下のように記載されている。
「女性は、一般的に、男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないことや、エストロゲン(女性ホルモンの一種)等のはたらきにより、アルコールの影響を受けやすいことが知られています」
もちろん、アルコールを分解する分解酵素のはたらきの強さは個人差が大きく、一概に「男性はアルコールに強い、女性はアルコールに弱い」と言うことはできない。しかし、分解酵素のはたらきの強さは遺伝によるものであり、東アジアでは特に弱い人が多いとされている。
また、もともと分解酵素のはたらきが弱い人が長年の飲酒によって“強く”なったように感じているとしても、アルコールが原因となる口の中のがんや食道がんなどのリスクは非常に高くなるとのデータもあり、注意が必要だ。
ガイドライン「分かりづらい」との指摘も
同ガイドライン案には、少量の飲酒でもリスクが上がる病気があるというデータも掲載されたが、関係者からは「分かりづらい」との指摘もある。
アルコール関連問題などに取り組むNPO法人「ASK」は、「唯一の数値指標である『日に男性40g以上、女性20g』が独り歩きする事態を招く」として、先月24日に飲酒量の指標に関する緊急要望書を提出している。
またSNSなどでは、参考値として示された飲酒量について「現実的に実現できないなら意味がないのでは」といった声も多く見受けられた。
忘年会シーズンで飲酒の機会が増える今、パブリックコメントで意見を寄せてみるのもよいかもしれない。
■パブリックコメントはこちらから
「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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