自転車の取り締まりに「青切符」導入へ…「傘差し」「ながらスマホ」「逆走」「歩道暴走」などが違反対象
自転車を取り巻く環境が大きな転換点を迎えている。
警察庁は、21日までに8月から議論してきた「良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する有識者検討会」の中間報告書を取りまとめ、自転車にも「青切符」を導入するなどの方針を示した。来年1月にも最終報告書を取りまとめて通常国会に道路交通法の改正案を提出。2026年からの運用を目指す。
荒れる自転車運転マナーに法改正で対処
自転車は国民のほぼ2人に1人が保有し、移動手段として浸透する一方、交通事故全体に占める自転車関連事故は増加を続けている。東京都に限れば、事故全体の46%と約半分を自転車関連の事故が占める深刻な状況だ。
有識者検討会メンバーでもあり、2000年から自転車を有効かつ、安全な交通手段として機能させることに尽力する自転車活用推進研究会理事長の小林成基氏は、「いまはルールを無視する者が多く、そのことがさらに”なんでもあり”を助長してしまっている。自転車を手軽で快適な移動手段として存分に活用するためには、いまこそ抜本的な改革が必要」と力を込める。
青切符の対象となるのはどんな行為
そのキー施策のひとつが、青切符の導入だ。正式名称は「交通反則告知書」。ドライバーが反則行為をして、警察官に反則告知を受けた際、この書類と納付書が渡される。違反切符を切られた者は、2つからどちらかを選択。つまり、違反を受け入れるか、罰金で済ませるかだ。
本来は自転車も赤切符での対応となり、罰金額なども裁判所を経て決定となるが、それでは手続きや対応が負荷となり、警察も裁判所も十分には対応ができない。そこで、原付きや自動車と同様に、青切符でワンクッション入れることで、対応の簡素化と交通法規の順守を促そうというわけだ。
反則金の額は、違反の種類に応じ、原動機付き自転車の場合とほぼ同じで数千円から数万円の想定という。また、青切符の取り締まり対象は、16歳以上となる。
導入の本当の狙い
これまでなかったものが追加されるため、あたかも自転車の取り締まりが強化される印象があるが、小林氏は、「勘違いされがちだが、強化ではなく、”緩和”です。本来、自動車同様の赤切符ベースの取り締まりをすべきですが、それでは大量に”前科者”がでてしまう。そうしないために、原付や自動車で導入されている青切符を活用することで、ルールの徹底により実効性を持たせるのが本当の狙いなんです」と解説した。
青切符の対象となるのは、歩道の暴走、信号無視、逆走、傘差しなどでの片手運転、携帯を使いながらの運転など。違反行為は分かりやすいよう細かく設定するといい、改正の趣旨から考えると、100前後のケースのなかから数種の事故につながりそうなものだけに限られるだろう。
例えば、注意されても無視するとか、わざと繰り返し違反するなど悪質な運転かどうかがボーダーラインになる。
飲酒運転、運転に支障をきたすような「ながら」運転などは、本来の「赤切符」で刑事罰として厳しく対処する。
また、一見して自転車のように見えるが本来は免許や自賠責保険、保安装置やナンバーが必要な電動車両を違法に走行させる例が急増し、危険な状況にある。これは明確な犯罪として厳しく取り締まるという。
自転車マナーはなぜこれほど悪化したのか
それにしてもなぜ、自転車運転のマナーはこれほど悪化したのか。
その背景について小林氏は「大震災後の公共交通機関の減便やコロナ禍での密を避けようと自転車を利用する人が増えたにもかかわらず、ルール通りに走れるほど道路環境が整備されていない。ルールも複雑でわかりにくく、どこをどう走れば良いか、どの信号を守れば良いか迷うことばかりです。守れない現実のなかで、利用者は都合の良い走り方をするしかないので、なかには信号無視をしたり、車道を我が物顔で走ったり、スマホを見ながら乗車する者がいたり…そうした行為を日常的に見慣れた人々がマネするのも無理のない話で、注意する人もいないから違反の認識そのものが希薄化してしまったんです」と現状を憂う。
もはや、”黙認”では安全を維持できない…。それが、今回の”ルール変更”につながっている。
「これまでキチンとルールを守ってきた人は、なにも心配する必要はありません。」と小林氏。免許こそないものの、自転車も道路交通法上の”車両”。そうした認識が浸透することが、移動手段としての自転車をより快適に、そして有効に活用する最大の原動力となる。
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