「16倍速再生」で動画広告表示を“実質ブロック”する機能が注目 「法的罰則なし」も弁護士が指摘する“ユーザーに不利益”の可能性とは
ウェブページ上の広告を非表示にする、広告ブロック機能。現在、ブラウザの拡張機能としてインストールするものや、広告をそもそも表示しないようにするブラウザなどがウェブ上で出回っている。
YouTubeでは動画を視聴する際に、Premium会員以外には広告動画の視聴が求められるが、これを回避する目的でも広告ブロック機能は使われてきた。
しかし、YouTube・Google側は広告ブロック機能の締め出しを強化しており、YouTubeでは広告ブロック機能の使用を禁止したり、機能を使用しているユーザーへの警告なども行われたりしている。
そんな中、YouTubeの広告動画を16倍速で再生し即座に終わらせることで、疑似的に広告をブロックする拡張機能「Ad Speedup - Skip Video Ads Faster」が注目を集めている。
広告収益を狙っているサービスと広告ブロック機能開発者らのいたちごっこは、YouTubeのみならず各所で続いているが、そもそもこうした機能を使うことは法的に問題はないのだろうか。
コンテンツによっては法的な問題となる可能性も…
IT関連問題などに詳しい鮎澤季詩子弁護士は「現在のところ、広告ブロック機能を利用することそのものを処罰する法律はありません」と話す。ただし、以下の点には注意が必要だ。
「閲覧・視聴するコンテンツの利用規約に広告ブロック機能を利用してはならないことが明記されている場合には、利用規約違反となりますから、利用規約にしたがって違約金の支払いやユーザーアカウントの停止等、コンテンツが定めたペナルティを負う可能性があるでしょう。
また、広告ブロック機能を利用してはならないことが明記がされていないコンテンツでも、広告を表示させないためのプレミアム料金が設定されている場合には、コンテンツ側が広告ブロック機能の利用を許容していないと考えられます。
この場合、ユーザーは広告ブロック機能を利用することで、プレミアム料金の支払いを不当に免れていますから、法的にみて問題があるでしょう」(鮎澤弁護士)
広告の“再生”は行われているが… 16倍速機能にもリスクあり
現在注目されている「Ad Speedup - Skip Video Ads Faster」は、広告を16倍速で視聴させることで疑似的にYouTubeの広告動画をブロックするというもの。広告の再生そのものは行われるが、ユーザーにとって法的なリスクはあるのだろうか。
「広告の倍速視聴機能を利用してはならないことがコンテンツの利用規約に明記されていれば、当然、規約違反になります。
また、広告の表示はあっても実際にユーザーが広告を視聴できないのであれば、広告を表示させていないのと同じであるとみなされ、コンテンツ側から、広告ブロック機能を利用した場合と同様の措置を取られる危険性があります。
もっとも、完全に広告をブロックしているのとは異なり、倍速視聴の場合には、ユーザーは広告主の名前や広告対象の存在ぐらいは認識しうると考えられますから、広告を完全にブロックしていることと同視できるとまではいえないのではないでしょうか。
判断は分かれると思いますが、少なくとも、規約違反と指摘されてトラブルに巻き込まれるリスクはあるでしょう」(鮎澤弁護士)
巡り巡ってユーザーが不利益を被る可能性も?
ユーザーが広告をブロックしたい一方、動画などのコンテンツを提供する側は、広告収入によって生計・経営を維持していることも少なくない。
しかしながら、広告ブロック機能の広まりによって彼らの広告収入が低下した場合、「コンテンツの質の低下を招き、結果として、ユーザーは実質的な不利益を被ることになるかもしれません」と、鮎澤弁護士はその問題を指摘する。
数十秒の広告をスキップすることが、巡り巡って自身の大きな損失となるかもしれない。広告にイラッとしたときは、一度そんなことを思い出して気持ちを落ち着けるのも、一つの手ではないだろうか。
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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