「国家ブランドランキング」日本が初のトップに 輸出、人材、観光で“高評価”も…実生活との「ギャップ」どう受け止めれば?
フランス発祥の世論調査会社が行った調査で、日本が2023年の「国家ブランドランキング」において世界60カ国中1位に選出されたことが分かった。
喜ばしいニュースである一方、2023年は円安が進んだことに加えて、今年の漢字に「税」が選ばれるなど経済的な閉塞(へいそく)感が漂ったことから、“日本国内の実感”とはギャップがあるように思った人も少なくないのではないだろうか。
アジア太平洋地域“初”の首位獲得
調査を行った「イプソス」は世界最大規模の世論調査会社で、パリの証券取引所であるユーロネクスト・パリにも上場している。同社は2008年から、世界の地政学、貿易、ビジネス、観光の流れにおける政治的、経済的重要性に基づいて選ばれた60カ国について国家ブランド力を調査。「輸出」「ガバナンス」「文化」「人材」「観光」「移住と投資」の6つのカテゴリに関する回答者(※)の評価に基づいてランキング化している。
※回答者は「パネル国」として選ばれた20カ国の18歳以上の成人約6万人。2023年6月27日~8月3日にオンラインで実施
日本は5位だった2019年以降、着実に順位を上げ、2023年は6年連続首位だったドイツを抜き1位に。イプソスは「6つのカテゴリすべてでトップ10に入ったこと」「これまで強かった『輸出』カテゴリのほか『人材』『観光』カテゴリでも高評価だったこと」が首位獲得につながったと見ている。
なおアジア太平洋地域の国が1位になるのは、調査開始以来初めてだという。
「グローバルな経済的リーダー」では2位に
イプソスでは2023年から、国家ブランド指数のほか、国のブランド形成において重要性が増していると考えられるテーマについても調査を開始した。日本はそのうち、「私はこの国で製造された製品を信頼している 」「この場所は他のどの場所とも異なっている」で60カ国中トップに。「私はこの国がグローバルな経済的リーダーだと思う」でも2位にランクインした。
「実生活とのギャップ」どう分析する?
日本が世界の国々からこんなにも高評価を受けているとは鼻が高いが、やはり国内でさまざまな問題が噴出する中、実生活とのギャップには違和感を覚えざるを得ない。
これについて、イプソス日本CEOの内田俊一氏は「日本にはどちらかと言うと、プラス面をほめるよりも、マイナス面を指摘し、その部分をより良くしようとする文化的特徴があります。国内の報道などでも、ことさらネガティブ面をクローズアップすることで、結果的に閉塞(へいそく)感をあおってしまっている一面があるのではと考えています」と分析する。
「世界の人たちから見れば、日本は清潔であり、安全。人も親切で、食事も安くておいしいものがたくさんあります。また、リーズナブルで正確な公共交通機関、豊かな自然など、魅力にあふれた国なのではないでしょうか。円安もプラス面を見ると、魅力的な旅行先であったり、政治・経済の激変のない安定した投資先に映るかと思います」(前出・内田氏)
物価上昇については、以下のような見解を示した。
「他国が直面しているインフレに比べ、日本は良くコントロールされています。また、社会保障費は国民皆保険制度などに代表されるように政府主導で広範囲な保障を行うので、自己責任・自己資金で対応しなければならない国よりは高くなっています。
グローバル視点で評価すると、日本にもポジティブな面は多数あります。本調査は世界中の市民が自国を評価し、他国をどう見ているかが反映されたものです。このような他国からの評価は素直に喜ばしいものだと思います」(前出・内田氏)
たしかに、多くの日本人は「謙虚さ」の裏返しとして自らを卑下しすぎてしまう側面がある。昨今の社会情勢により生活に困窮する人も出てくるなど、対策が急がれる問題があることは間違いないが、「世界が評価した日本」を知れば、もう少しポジティブに現状を捉えられるようになるかもしれない。
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