東日本大震災では「19億円超」被害 能登半島地震“便乗”詐欺に警察庁など「迅速」注意喚起のワケ
1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に便乗した詐欺などの悪質商法について、警察庁や国民生活センター、消費者庁、金融庁などが注意を呼びかけている。
実際、4日には“業者”を名乗る人物が富山県高岡市の被災地区に現れ、「国から依頼された」と偽って被災者にブルーシートを1万円で売りつけようとした事案が確認された。またSNSでは、被災者を装うアカウントがスマホ決済サービスで資金を送らせようとする手口も散見されている。
東日本大震災の詐欺被害額は「19億円以上」
大規模災害に乗じた悪質商法等は、過去にも繰り返されてきた。2011年に発生した東日本大震災では、震災から5年の間に204件の詐欺事件が認知され、被害額は約19億900万円に上っている(警察庁が2016年に公表した「東日本大震災に伴う警察措置」より)。
当時確認されたのは、以下のような手口だ。
- 被災者への義援金名目で金品を騙し取る詐欺
- 屋根の修繕や住宅電気設備の点検が必要であると称して高額な修理・点検代を請求する事案
- 放射線の測定や除染等にかこつけ物品を販売しようとする事案
2011年版の犯罪白書では、実際に発生した事件として以下2例が紹介されている。
- 事例①
自営業の男(50)らは、医薬品の販売許可がないにもかかわらず、「体内に侵入した放射性物質を吸着し、排泄(せつ)します」などと放射性物質の体外排泄効果をうたって医薬品を販売するなどした。平成23年4月、2人を薬事法違反(医薬品の無許可販売等)で逮捕した(警視庁)。
- 事例②
無職の男(39)は、被災者を装い、インターネット上の掲示板に「被災地に遊びに行っていて被災した。交通費を支援してほしい」などと書き込み、これを見て連絡した被害者に対し、現金12万円を預金口座に振り込ませた。23年4月、同人を詐欺罪で逮捕した(長野)。
被災地“以外”でも被害に遭う可能性が
災害に便乗した悪質商法には被災者だけでなく、全国どこにいる人も巻き込まれる可能性がある。先日の能登半島地震後に警察庁が発表した注意喚起では、「特に発生が懸念される震災便乗の悪質事犯」として「被災者に対する事犯」「被災に関連した事犯」がそれぞれ紹介されている。
- 被災者に対する事犯
・被災者宅を訪問し、災害時に必要となる物品の販売や家屋の修繕等をうそを交えたり、不安をあおったりして契約させる行為
・医薬品が足りないことに乗じた無承認医薬品の販売・広告、健康を損なうおそれがある食品の販売
- 被災に関連した事犯
・公的機関や災害支援団体等をかたり、義援金の募集を名目に現金や電子マネー等をだまし取る詐欺
・被災者の身内や友人を装い、困窮を理由に送金を求める詐欺
今回、警察庁をはじめ各機関から迅速に注意喚起がなされた背景には、過去の大規模災害で悪徳商法が横行したという実態もあるだろう。
“ささやかな日常”が一瞬にして奪われた被災者の不安や心の傷は計り知れない。そんなことにも想像が及ばず、目先の利益に飛びつこうとする“不届き者”の手口に乗らないことも、被災地から遠く離れた人たちができることの一つではないだろうか。
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