テレビの発言やSNSを“コピペ”してPV荒稼ぎ… WEBメディアの「コタツ記事」“問題だらけ”でも黙認される理由

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

テレビの発言やSNSを“コピペ”してPV荒稼ぎ… WEBメディアの「コタツ記事」“問題だらけ”でも黙認される理由
“コタツから出ずとも作れてしまう”ことから「コタツ記事」と呼ばれている(玄武 / PIXTA)

近年WEBメディアなどでは、直接取材や調査、検証を行わず、テレビ番組での発言やSNS、ブログ投稿などを記事化した、いわゆる「コタツ記事」が多く見受けられる。

人気の番組や、著名人のSNS、ブログを引用した記事が「発言に賛否」「~に私見」「~に反響」といった見出しとともに拡散され、メディアやプラットフォームのアクセスランキング上位に入っている。

こうしたコタツ記事に関しては昨年11月、ジャーナリストの江川紹子氏がX上で「ほとんどドロボーじゃないか」と疑問を呈するなど、記事を世に送り出すメディアや、それを掲載するプラットフォームの姿勢・倫理を問う声も少なくない。

引用など、要件を満たせば問題無いが…

世の中にあふれるコタツ記事だが、法的な問題はないのだろうか。著作権に詳しい前原一輝弁護士は「他の人の発言を持ってきたら、直ちにアウトというわけではなく、その記事が法律上の要件を満たしていれば適法になる時もあります」と話す。

「一定の長さのある発言は、著作物に該当する可能性がありますから、たとえばテレビ番組での発言をそのまま抜き出して勝手に使用すると、問題となる可能性があります。

ただし著作権法の中には『こういう場合には著作物を自由に使ってよい』という例外的な規定が存在します。

1番メジャーなのは引用です。公正な慣行に合致しているか(引用を行う「必然性」があるかどうかなど)、引用上正当な目的の範囲内か、などの要件があり、その要件内であれば、著作物を引用して使用することができます。

正しい引用の方法に関しては、世の中にきちんと浸透していないところもあります。『出典を書けば問題ない』といった声もありますが、必ずしもそうではなく、引用したものよりも本文の方が量的・質的に多い『主従関係』が成り立っていなければいけません

ところが、コタツ記事においては、引用された内容の方が多いというケースも散見されます。それが、コタツ記事がやゆされる原因の一つではないでしょうか」(前原弁護士)

コタツ記事に関わる著作権法上の重要な例外規定は、引用以外にも存在する。

時事の報道をする場合には、著作物を自由に使用することができます。ただ、時事の報道と言っても要件がいろいろあります。まず『時事』なので、具体的に『いつまで』という決まりこそないものの、たとえば1年前の発言を、時事の報道にかこつけて取ってくるのはダメです。

一方で『今日、有名人の○○さんが不適切な発言をしました』といった形で、発言をそのまま抜き取って報道する場合は、出所の明示など、他の要件も含めて守られていれば問題ありません。

また、番組での発言や、SNSでの投稿などが切り取られ、かつ別の文脈で使われた場合には『同一性保持権の侵害』に当たりますし、さも過激な発言をしたかのように改変された、といった場合には『名誉・声望保持権の侵害』に該当する場合もあるでしょう」(同前)

問題アリでも“黙認”される理由とは

上記の基準を考えると、著作権上の問題を抱えているコタツ記事も少なくなさそうだが、前原弁護士は「黙認されているケースが多いと思います」と話す。

「違法なケースは多いと思いますが、一方で、発言を使われた側がコタツ記事によって生じる経済的損失はあまり大きなものではない場合が多いと考えられます。

著作権侵害を訴えるにも、法的に詰めていったり、交渉したりする必要があり、コストがかかります。それに対して、得られる賠償金はそれほど多くありません。

また著名人の場合には、本人が訴訟を起こすことによってマイナスイメージがつくリスクもあるでしょう」(前原弁護士)

作るのは簡単だが… 結果は重いものとなるかもしれない

コタツ記事以外でも、近年ではファスト映画など“他人の努力に乗っかった”コンテンツが拡散されている。こうした現状について、前原弁護士は「ついつい見てしまう人も多いが、このままでは良いコンテンツを作る人が減ってしまうのではないか」と危惧した。

簡単に作られ、一瞬のうちに消費されるコタツ記事だが、その影響力はPV以外のところにも現れるかもしれない。

取材協力弁護士

前原 一輝 弁護士

前原 一輝 弁護士

所属: 高樹町法律事務所

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア