末端価格“465億円相当”覚醒剤700キロ押収、“不法上陸者”1名逮捕…海保「密輸・密航」取り締まり速報値公表
17日、海上保安庁が「令和5年の密輸・密航等取締り状況について」速報値を発表した。
昨年、同庁が摘発した薬物密輸事犯は4件(前年比2件増加)で、薬物はいずれも覚醒剤だった。また、金地金(※金を保存しやすいよう変形させた塊のこと)および銃器(弾倉)の密輸事犯各1件を摘発した。
薬物所持事犯としては、覚醒剤や大麻、指定薬物を不法所持していた船員の摘発を計6件、日本在住外国人によるコカインの不法所持1件も摘発。さらに、密航事犯1件(不法上陸者1名)の摘発も行った。
過去最多1件で700kgの覚醒剤押収
海上からの密輸事犯については、一度に大量の密輸を行えることから海上貨物等に隠匿する手口が主流とされており、昨年においても覚醒剤、金地金、銃器はいずれも海上貨物に隠匿されていた。
覚醒剤の押収量は前年の60倍を超える合計約750kgだったが、そのうち700kgが昨年3月に京浜港東京区大井ふ頭で起きた密輸入事件により押収されたものだ。
この事件では、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ発の船便を利用し営利目的で覚醒剤を密輸したとして、中国籍で20~50代の男女7人が麻薬特例法違反などの容疑で逮捕された。その後の突き上げ捜査により同中国人のうち3名が覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで再逮捕されている。
押収された700kgという量は、税関の水際対策の一環で押収した覚醒剤としては過去最多だといい、末端密売価格は約465億円相当だった。
ロシア人不法上陸者1名が逮捕
一方で「密航事犯」では、船員等が単独で不法上陸するなど、近年、小口化の傾向が続いているという。
昨年摘発された1件についても、福岡県福岡市に所在するマリーナに入港した香港籍ヨット「JARRAH」からロシア人乗組員1名が、入国審査官の許可を得ることなく不法に上陸したことから、出入国管理および難民認定法違反(不法上陸)の疑いで通常逮捕されたものだった。
粘り強い捜査でコカイン製造摘発も
過去の密輸事件を足掛かりにした捜査が実を結んだケースもある。薬物所持事犯として検挙された、日本在住外国人によるコカインの不法所持1件がそれに当たる。
海上保安庁の「国際組織犯罪対策基地」が過去の密輸事件を足掛かりに内偵捜査等を進め、関係機関との合同捜査の結果、メキシコ麻薬カルテル関係者らがコカインを製造する滋賀県栗東市の集合住宅が浮上。
ペルー国籍で20~70代の男女5人が、共謀してコカイン約847グラム(末端価格約2000万円)を営利目的で製造したとして麻薬取締法違反(営利目的製造)の疑いで昨年5月に逮捕された。
当時の報道によれば、部屋からはコカイン製造に使う塩酸などの薬品や粉砕器、手回し洗濯機など約200点が押収されたという。
昨年4月に政府の新型コロナウイルス感染症の水際対策が変更されたことを受け、「ヒト・モノの往来が増加していることから、密輸・密航の増加も懸念される」として、海上保安庁は引き続き取り締まりを強化・徹底するとしている。
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