「あなたの父親の余命は4か月です」の告知…なぜ医者は、患者の死ぬ時期が分かるのか
親族や知人の訃報を聞くと、覚悟はできていても悲しいものだ。時には元気だった人が突然、亡くなってしまうこともある。誰しも「死」とは隣り合わせ。それなのに、知っていることは少なく、なんともミステリアスだ。
本連載では、そんな「死」の現実や不思議について、2万体を検死・解剖した法医学の第一人者が多様な角度から切り込み、解説する。
「ホントに?」「へぇ~」「まさか」…。知れば知るほど、「死」の奥深さを実感するーー。
第2回は、「あなたは余命〇か月です」。なぜ、医師は患者の死ぬタイミングが分かるのか、について。(全5回)
※ この記事は上野正彦さんの書籍『人は、こんなことで死んでしまうのか!:監察医だけが知っている「死」のトリビア』(三笠書房《知的生きかた文庫》)より一部抜粋・構成しています。
どこで死ぬタイミングを見極めているのか
末期がんの告知の際、家族に「余命何カ月です」と医師に教えられることがある。なぜ、人の命の限界が数字となってはっきりわかるのだろうか?
部位や組織別に指標があり、身体データを見ることで予測できるのか、あるいは病気の種類やその症状によって、ある程度、決まった数値がはじき出せるものなのか…。
その答えはひとえに医師の経験に尽きる。患者の症状と過去の事例を見ることで、だいたいわかるのである。
例えば、初め胃がんだったのが、その後、肺に転移したとする。転移が始まったら、半年以内に死亡するというのが一般的には常識になっている。早い人だと3カ月だ。
もし転移せずに一箇所に留まっていれば、一年から二年は生きていられる。しかし、転移していることがわかれば、医師は「もうだめだ」という判断を下してしまう。
若さや体力などの個人差があるので、一概にはいえないが、一応スタンダードな基準というものがあるのだ。
病気の種類ごとの”データ”も重要な判断指標に
ほかにも、がんだけでなく、菌の感染による敗血症も致命傷の病気なので、告知がされる。
また、心臓発作を何回も繰り返している人は、動脈硬化が強く血管がボロボロになっているので、これも余命がわかる。
このようにいろいろな病気が、今までの結果からデータとなって残っており、そこから余命の推定ができるのである。
経験豊富な医師ならば、実際に見聞した知見も蓄積されており、より高い確度で、余命を予測できるわけだ。
たいていのことは当たればうれしいが、余命に関しては、できるだけあたってほしくない。1日でも長く生きられるように外れて欲しい。それが余命宣告された患者の親族の多くの思いだろう。
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