「本人にバレるよ」北見市職員5人のパワハラ被害相談“取り下げ”促し問題に...市側の説明二転三転 “隠ぺい”との声も

小林 英介

小林 英介

「本人にバレるよ」北見市職員5人のパワハラ被害相談“取り下げ”促し問題に...市側の説明二転三転 “隠ぺい”との声も
北海道北見市役所(写真:photoAC)

北海道・北見市にある北見市役所で、とある職員5人が上司からのパワハラを訴えた。市側はパワハラ案件について、早急に第三者の目線から調査するのかと思いきや、申し立て内容を聴取していた課長がパワハラの訴えを取り下げるよう伝えたというのである。

「申し立てやめたら?」パワハラ相談も取り下げ働きかけ

「弱者に寄り添った、誠意ある北見市役所の対応を切に願います」

2023年12月14日、北海道北見市議会で質問に立った三浦亨議員(市民・連合クラブ)は、「伝言」として質疑の最後をこう締めくくった。伝言を伝えた主は、被害を訴えたとある職員だった。「助けてくれ」。そんな思いでパワハラ被害を相談したはずが、すべて水の泡となった。

13年から北見市の職員5人が30件ほどの「パワハラを受けた」として市側に苦情を申し立てたのは22年1月のこと。その際に「(パワハラを行った)本人にバレるよ」「申し立てをやめたらどう?」などと、パワハラ事案について聴取を担当していた課長から苦情を取り下げるよう働きかけがあったが、被害を訴えた職員らはそれに屈しなかった。

市側のみで調査も厚労省指針は「双方から事実確認

市側は同年4月に処理委員会を設置したものの、「頭をたたかれた行為」1件のみをハラスメントとして認定。さらに議事録さえも作成していなかった。

「市側の対応は隠ぺいだ」

「パワハラをもみ消そうとしているのか」

ハラスメントの被害を申し立てた職員は憤る。20年6月に施行された改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」では、雇用主側に「労働者からの相談に応じ、パワハラに関する事実について確認する」ことが求められる。

厚生労働省の指針によると、個別の事案の判断に際しては、相談窓口の担当者等が業務の目的を大きく逸脱した言動等の事項に十分留意し、相談を行った労働者の心身の状況や行為があった際の受け止め認識にも配慮しながら、相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要と示されている。

北海道新聞の報道等によると、前述の処理委員会では申立人に直接話を聞くことなく市側が用意した聞き取り資料のみで議論を進めたという。市側としては、早急にこの問題を処理したかったのではないかとも考えられる。

北見市長が一転「第三者委員会を置く」、批判受け方針転換か

「個別の状況についてのご質問でありますので、関係者のプライバシー保護の観点から、その点について私から申し上げることはできない」

辻直孝北見市長は23年7月の定例記者会見で、記者からの質問に対して明言を避けた一方、会議録作成については「昨年、すでに見直しを指示し、見直し後は会議録を作成している」と答えた。また、調査は市だけの調査のみ行うとし、第三者委員会での検証は否定していた。

ところが、市民らからの批判が相次いだのだろうか、一転、同年8月の記者会見ではそれを覆し、第三者委員会を設置して「(判断を)委ねることが適当だと判断」したと述べた。翌月の会見では第三者委員会の開催見込みについて、同年10月以降になるとの見解を示した。

第三者委員会「パワハラ行為の検証」検討の可能性も

弁護士らで構成される「ハラスメント事案への市の対応に関する第三者調査委員会」の第1回と2回目は23年12月6日と同月18日、24年1月18日には3回目が開かれている。

第三者委員会の設置要綱では、あくまでも市側の対応は適切だったか。それを確かめるために第三者委員会を設置すると説明している。しかし、出席した委員からは「そもそものパワハラ行為」についても検証することを検討する可能性がある見方を示したほか、23年12月18日には、新しく2件の不当な扱いがあったことが判明している。

北見市「回答控える」とコメント、ハラスメントはどう検証されるか

1月18日の第3回委員会では、申し立てを行った職員が提出していた資料を配布したが、いまだに動きは見えない。北見市の担当者は、本稿記者の取材に対し「プライバシーに関わることでもある。回答は控えさせていただく」と一切の回答を拒否した。

全国で相次いで報告されているハラスメント問題。訴えやすくなったと見るべきか、過剰反応と見るべきか意見は分かれるだろう。ただし、批判を受けて対応を変えるなど問題発覚からの経緯を見る限り、今回の北見市の対応はあまりにもお粗末と言わざるを得ない。今後の第三者委員会の検証がどのように進むのか注目したいところだ。

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