「セクシー田中さん」関係者ら誹謗中傷“カオス化” ネットにあふれる“正義感”の行きつく先

弁護士JP編集部

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「セクシー田中さん」関係者ら誹謗中傷“カオス化” ネットにあふれる“正義感”の行きつく先
ドラマ「セクシー田中さん」公式サイトは日本テレビHPでアクセスランキング1位の状態が続いている(https://www.ntv.co.jp/tanakasan/)

日本テレビで昨年ドラマ化された漫画『セクシー田中さん』の作者・芦原妃名子(あしはらひなこ)さんの急死をめぐり、ドラマの脚本家ら関係者への誹謗中傷が止まらない事態となっている。

これを受け、同局は1月30日に公式サイトを更新し「(ドラマは)日本テレビの責任において制作および放送を行ったもので、関係者個人へのSNS等での誹謗中傷などはやめていただくよう、切にお願い申し上げます」とコメントした。

騒動の経緯は…

芦原さんの急死の背景には、ドラマの脚本をめぐるトラブルがあったとみられている。

ドラマの最終回が放送された昨年12月24日、脚本家・相沢友子さんがインスタグラムに「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」と投稿。

同28日にもインスタグラムを更新し、「私が脚本を書いたのは1〜8話で、最終的に9・10話を書いたのは原作者です。誤解なきようお願いします」「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かしこれからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています」「どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」と投稿していた。

一方、原作者である芦原さんは先月26日にXを更新し、「今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った」という経緯を長文で投稿。ドラマ化にあたって日本テレビ側に提示していた「必ず漫画に忠実に」「(漫画が未完である以上)ドラマオリジナルとなる終盤は原作者があらすじからセリフまで用意する」などの条件を反故にされたと明かしていた。なおXの投稿にあたり、芦原さんは漫画の出版元である小学館と事実確認、文章内容の確認もしたという。

そして芦原さんは同28日に書き込みを削除し、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と新たに投稿。その後、行方不明となり、同29日に栃木県内で死亡しているのが見つかった。

「人殺し」「詫びろ」あちこちに誹謗中傷が殺到

一連の経緯が明らかになると、ネット上では脚本家のほか、脚本家のインスタグラムに同調のコメントをしていた著名人にも「人殺し」「もう世に出てくるな」「詫びろ」などの誹謗中傷が殺到。また、ドラマの公式SNSにも「あなたたちのせいで原作者が命を断った」「これどうするんですかね?」といった批判コメントが数多く寄せられている。

これらの書き込みには、非常に“強い”と感じる言葉も少なくない。原作に思い入れがある人、一連の経緯を知り“正義感”に突き動かされた人、テレビ局をたたきたい人など、投稿の背景にはさまざまな感情があることは推察できる。しかし、これらの言葉が関係者らを精神的に追いつめることは想像に難くなく、さらなる悲劇を生む可能性もあるだろう。もちろん、「悪いことをした人はどうなっても仕方がない」という主張が問題の本質からずれていることは、一歩引いて冷静に考えれば明らかだ。

誹謗中傷“あるある”の内容でも有罪判決に

誹謗中傷する本人たちは「顔が見えないから」「みんなもやっているから」と“匿名性”に安心し気軽に投稿しているのかもしれないが、名誉毀損(きそん)罪や昨年7月に厳罰化された侮辱罪など、懲役刑の可能性もある罪に問われるリスクを背負うということも忘れてはならない。

「罪に問われるなんて大げさな」と思うかもしれないが、過去の事例を見ると、ネット上でよく目にするような投稿でも有罪判決を受けていることがよく分かる。

①ある建設会社が事件の犯人の親族だという疑いに同調し、「これ?違うかな」というテキストとともに無関係な会社のホームページのURLを投稿(名誉毀損罪、罰金30万円)

②SNSに「人間性を疑います。1人のスタッフを仲間外れにし、みんなでいじめる。1人のスタッフの愚痴を他院のスタッフに愚痴を言いまくる社長 1人のスタッフの話も聞けない社長」などと投稿(侮辱罪、科料9000円)

③インターネットの掲示板に「○○(被害者名)は自己中でワガママキチガイ」「いや違う○○(被害者名)は変質者じゃけ!」などと投稿(侮辱罪、科料9900円)

④インターネットサイトの口コミ掲示板に「詐欺不動産」「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人。」などと投稿(侮辱罪、科料9000円)

⑤集合住宅で被害者3人に対し「今、ほら、ちまたで流行りの発達障害。だから人とのコミュニケーションがちょっと出来ない。」などと言った(侮辱罪、科料9000円)

※②~⑤は法務省公表「侮辱罪の事例集」より。いずれも厳罰化前の2020年中に一審判決・略式命令のあった事例のため科料1万円未満だが、現在は1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料になる可能性があるので注意が必要

罪を逃れても「損害賠償請求」の可能性

名誉毀損罪や侮辱罪など刑事上の責任に問われずとも、誹謗中傷は被害者の訴えにより民事上の責任に問われ、巨額の損害賠償請求をされる可能性もある。

誹謗中傷と取られかねない投稿はしないことが基本だが、もし投稿してしまった場合は、拡散されないうちに早めに削除する、相手から訴えられた場合は誠実に謝罪をする、また話がこじれそうな場合は早めに弁護士に相談するのもひとつの有効な手段だろう。

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