かわいい動物写真・動画“無断転載”は罪に問えるのか?
飼い主によるアットホームな動画から、カメラマンによる写真作品までSNS上には日々数多くの動物写真や動画が投稿されている。リツイートやいいねで拡散された「癒し系」写真・動画を目にすることも日常茶飯事だ。しかし、それらの写真・動画を無断で転載、あたかもそのアカウントが作成したかのように見えるものが、撮影者のアカウントよりもリツイートやいいねを獲得していることが一部で問題になっている。
北海道の野生動物を撮影するカメラマンNG(@nagi0467)さんの訴えている被害もそのひとつ。自身が撮影したエゾシカの写真とそれに添えたつぶやきをそっくりそのまま無断転載されたというものだ。クレジット表記もなく、拡散されたツイートだけ見た人はNGさんが撮影した写真であることに気づくことはできない。
良い写真だと思ってくれてるなら嬉しいけど、許可なし引用元も無しはやめて欲しい🥲
— NG (@nagi0467) February 3, 2022
タイトルまで…🦌🌕 https://t.co/PnWjSMQFCc
botアカウントの目的は”アフィリエイト”?
bot(ボット)と呼ばれるものを中心に無断転載を行うアカウントはひとつやふたつではない。なぜ無断転載アカウントは数多く存在しているのか。インターネットの削除請求を多く手掛ける井川智允弁護士は、「それぞれのbotの目的は完全にはわかりませんが、アフィリエイトを目的としているアカウントもあるのではないでしょうか」と指摘する。
アフィリエイトとは広告の一種で、商品やブログなどのページに誘導することで、誘導した(リンクを設置した)人に広告費が払われる仕組みだ。つまり、ツイートが拡散されればそれだけ多くの人にリンクをクリックさせることができる。しかし、人の動画や写真を無断で使用し、アフィリエイト広告で報償を得ることに法律的な問題はないのだろうか。
ペットの写真では著作権の主張は難しい…
「自分が頑張って撮影した写真や動画を無断転載されたら嫌な気持ちになりますよね。これは著作権の問題になるのですが、具体的にどんな写真を転載されたかということがすごく大事になって、それによって結論も変わってしまいます。例えば、販売している写真を無断転載されれば権利の侵害が起きていますが、自宅で飼っているペットの写真や動画の場合では、現状では著作権を主張することが難しいのではないか…というのが正直なところです」(井川弁護士)
では、実際に転載されてしまった人はどうするべきなのだろうか。
「まずは無断転載をした人に直接問い合わせをすることです。話し合いや投稿の削除を拒否されてしまった場合には、SNS管理者(Twitter、Instagramなど)宛に問い合わせフォームなどを利用して連絡します。これでもなかなか事が進まないとなると、プロバイダ責任制限法に基づき、プロバイダ等に対して送信防止処置を依頼するという流れになっていきます」(井川弁護士)
日々議論が進む、インターネットをめぐる法整備
上記の手続きは「転載された側」が行う必要があり、多くの手間をかけなければならず、結果「泣き寝入り」というのが現状だ。一方で、インターネットをめぐる法整備については日々議論が進んでおり、井川弁護士は「最近では、名誉毀損にあたるツイートをリツイートしたとして賠償命令が出たケースや、違法にアップロードされた動画をダウンロードした人も処罰されるようになってきています」と裁判を契機に変わっていく可能性についても語った。
かわいい動物写真に対する気軽なリツイートやいいねが、時に「無断転載」被害に加担する可能性もある。共有の際には「誰が撮影したものだろう?」と指を止め、考えながら行う必要がありそうだ。
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