女性受刑者「手錠つけて出産」 法務省通達で“禁止”後も継続の実態 小泉法相が明かす
2月8日の衆議院予算委員会で小泉龍司法務大臣は、女性受刑者の出産に際して事実上禁止されている「分娩(ぶんべん)室内での手錠の使用」が、2014年から2022年末の間に6件あったと明らかにした。
「両手に手錠を掛けられ出産」
出産を控えた受刑者に対する拘束具の使用については、2014年に上川陽子法務大臣(当時)がすべての刑事施設へ「分娩室では使用しないように」と、矯正局成人矯正課長名で通達していた。
ところが、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチが受刑者へヒアリングしたところ、2017年に出産した受刑者が「ベッドの上で両手で手錠を掛けられて出産した」と言っていた、との証言が得られたという。
さらに法務省へ調査を要請した結果、同省は「分娩室内で手錠が使用されていたとの記録はなかった」とし、分娩室に入出する前後については「妊娠中や出産後の女性受刑者に対して一般的に手錠を使用している」と回答していた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした日本の女性受刑者に関する調査報告書をまとめ、昨年11月に記者会見を実施。同省に対して2014年の通達を改めて積極的に強調することや、通達の改訂によって陣痛中および産後直後に拘束具を使用禁止にすることを求めていた。
「通達違反」発覚で現在は…
8日の衆議院予算委員会で小泉法務大臣は、立憲民主党・源馬謙太郎議員の質疑に答えるかたちで「2014年の通達後も追跡的に調査を続けてきた結果、2022年末までの間で6件、通達に違反をして手錠を使用してしまったケースがあった」と明かした。
これを踏まえて、2022年に改めて通達を徹底した上で、現在は分娩室外でも子どもと接する場合(抱っこ、沐浴〈もくよく〉、おむつ交換、授乳など)は手錠を使用しないこととしているという。
なお、これによって分娩室外で子どもと接していない時間などに“隙間”ができることから、「刑事施設の基本的な責務をベースに置きながら、適切な対応を考えていきたいと思っている」と述べた。
今回の小泉法務大臣の発言について、ヒューマン・ライツ・ウォッチは「法務省が通知違反を追跡調査していたこと自体は評価できるが、国会で質疑されるまで公表しなかったことを疑問に思う。同時に、法務省による追跡調査だけではなく、外部専門家委員会などによる独立した調査が必要だ。これには、現または元受刑者の聞き取りも含まれるべき。そして、マンデラルールズやバンコクルールズなど国際基準に沿った形で、陣痛中または出産直後の受刑者への手錠使用も通知の対象にすべきだ」とコメントした。
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