首都高速でタクシー降車? “横断”歩行者が死亡…はねたドライバーとタクシー運転手は罪に問われるのか
2月5日午前2時20分頃、千葉県市川市を走る首都高速湾岸線(西行き)で、走行車線を歩いていた人がトラック2台とトレーラーの計3台に相次いではねられ死亡する事故が発生した。
報道等によると、はねられた人の性別や年齢はわかっておらず、目撃情報からは走行車線を横断していたとみられている。
また、事故の10分ほど後に、タクシー運転手から「(事故現場に近い)千鳥町インターチェンジ付近の高速道路上で乗客が降車してしまった」と警察に110番通報があったといい、事故との関連性が調べられている。
“いるはずのない”歩行者との事故、ドライバーの過失は?
どれだけ気を付けて運転していても、“最低”速度が50km/hである高速道路上において、本来“いるはずのない”歩行者が目の前に飛び出してきたら、ドライバーが事故を回避するのは相当難しいと言えるのではないだろうか。
しかし、高速道路への歩行者の立ち入りは、年間1000件以上発生している。
高速道路上で対歩行者の事故が起きた場合、一般道と同様にドライバーの過失が大きくなってしまうのか。それとも“想定外”の事態であることが考慮されるのだろうか。
交通事故の対応に注力する鈴木淳志弁護士は、こう答える。
「捜査の結果次第だとは思いますが、高速道路は『自動車専用道路』であり、歩行者が入ってはいけないところとされています。そのため、運転手側の予見可能性は下がると思います。このような場合、民事の損害賠償では、むしろ歩行者側の過失が大きいものとして扱われ、過失相殺がなされます。
今回のような死亡事故の場合は、人身事故ですから、刑事事件としては扱われます。ただ、運転手の『過失』があったとはやはり言いにいため、処罰されないか、仮に処罰が求められたとしても軽い処罰に傾く事象ではあると思います」
国交省の統計(令和4年)によれば、「誤進入」をした理由として、原付き・自転車での誤進入も含め「道間違い・誤進入」が一番多く、半数以上を占めた。「認知症・精神障害」が原因とされる誤進入が11%、「酒酔い」によるものが3%となったほか、「その他」「不明」など原因がわからない・公表されていないものも計32%ある。
万が一、遺書が残されているなど、高速道路への立ち入りおよび事故が自殺目的だったと判断された場合には、「本人の意思になるため、運転手に過失はないという方向になり、刑事事件として処罰される可能性は低いと考えられます」(鈴木弁護士)。
高速道路に“降ろした”人は罪に問われる?
今回の事故で死亡した人は、前述の通り、高速道路上でタクシーを降りた可能性があるとして捜査が進められている。
高速道路の上で乗客を降車させた場合、タクシーの運転手およびタクシー会社は何か罪に問われる可能性はあるのだろうか。
今回の事故について詳しい状況は分かっていないが、考えられるケースを挙げ、鈴木弁護士に解説してもらった。
①ここで降ろしてと言われて一般道と同じように降ろした場合
高速道路で停車することが道路交通法違反となり、10万円以下の罰金を科される可能性があります(第75条の8第1項、第109条の3第1項4号)。
②乗客が勝手に降りてしまった(走行中の車から飛び降りた、引き止めたが降りた)場合
走行中の車から飛び降りる行為は道路交通法に違反しますが処罰対象は乗客自身です(第76条4項6号、第120条1項10号)。タクシー運転手が命じたという事情がなければ、タクシーの運転手は処罰対象にはならないと考えられます。引き止めたが降りたという場合、具体的な状況にもよりますが、基本的には①と同様と考えられます。
③車酔いなど体調不良だと言われ非常駐車帯に止めたが降りたきり戻ってこなかった場合
やむを得ない事情で非常駐車帯に停車する行為は道路交通法上も許されています(第75条の8第1項2号)。その後乗客が戻ってこなかったという場合については、乗客自身の行為なので、タクシーの運転手は処罰対象にはならないと考えられます。
④故障でドアが開き乗客が落ちてしまった場合
故障が仮に整備不良によるものである場合には、整備不良の車両を運転したことについてタクシー運転手が3か月以下の懲役または5万円以下の罰金を科される可能性があります(第62条、第119条2項2号)。また、タクシー会社対しても罰金刑が科される可能性があります(第123条)。
首都高は、高速道路内で歩行者を見かけた際は、道路緊急ダイヤル「#9910」に通報するようホームページ等で呼び掛けている。
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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