カメルーン人男性「難民訴訟」が最高裁に上告へ 争点は「逮捕状」の真偽
2月14日、難民申請を「不認可」とした国の処分の取り消しをカメルーン人の男性が請求した訴訟について、原告側は最高裁に上告する意向を示した。
上告にいたるまでの経緯
原告はカメルーンで独立運動を行い、政府による迫害から逃れるために亡命したフォン・フォン・クリストファーさん。
2012年に来日、同年10月と2018年6月の二度にわたって難民認定を申請したが不認定。2018年11月、不認定の取り消しを請求する訴訟を提起した。
2023年5月、東京地裁はクリストファーさんが「難民」に該当すると判断し、処分の取り消しを国に命じる判決を言い渡した。しかし2024年2月、東京高裁はクリストファーさんが「入管法上の難民に該当すると認めるに足りる事情は認められない」として、原告の請求を棄却。
クリストファーさんと吉田幸一郎弁護士は14日、日本外国特派員協会(東京都)で会見を開き、最高裁に上告する意向を示した。
「逮捕状」の真偽が争点となる
原告側は、クリストファーさんがカメルーン本国の労働組合・政党の構成員としてストライキ・独立運動を行ったことが原因でカメルーン政府に迫害されており、殺害されるおそれもあることを理由にして、「出入国管理及び難民認定法」の定義における「難民」に該当すると主張している。
地裁と高裁の訴訟で原告側が提出してきた主な証拠は、カメルーン政府が発行した逮捕状。カメルーン国内の弁護士を通じて入手したという。
また、クリストファーさんが政府から指名手配されたことを報道する現地の新聞記事も証拠として提出されたほか、地裁ではカメルーン国内の弁護士も証言を行った。
一方、被告である国側は、原告側が提出した逮捕状には「スペルミスが存在する」「罪状に対応する正確な罪名が記載されていない」などの問題があることから本物ではないと主張。現地の新聞記事や弁護士の証言などの真実性も否定している。
一審では証人としてカメルーン本国の弁護士が証言を行い、地裁は証言・証拠の真実性を認めた。しかし控訴審で高裁は国側の主張を受け入れ、証拠には嫌疑があると判断。
会見で、原告側は「そもそも日本とカメルーンでは法制度や政府の状態に大きな違いがある」「(基本的には公的書類に誤りがほとんど含まれない)日本での常識をそのままカメルーンにも適用した、不適切な判断だ」と訴えた。
吉田弁護士は、現地弁護士の証人尋問を実施した地裁と異なり、カメルーンの法律の専門家に照会することもなく判断を下した高裁の対応を批判。
クリストファーさんは「なぜ、(スペルミスなどの)他人の誤りのせいで、自分が罰を受けるような事態になっているのか」「カメルーンの書類制度は日本とは全く異なっている。書類の内容を確かめもせず、カメルーンの制度について知ろうともしないのに、判断しようとすることが理解できない」と語った。
難民認定申請者の「立証責任」
2022年に日本は過去最多の202人を難民認定したが、それでも認定率は約2%。NPO法人「難民支援協会」によれば同年にドイツは4万6787人を難民と認めて認定率は約21%。米国は4万6629人を難民と認めて認定率は約46%であり、日本は認定人数・認定率ともに先進国のなかでも著しく低い。
吉田弁護士は、基本的に財産をほとんど持たず弁護士に依頼することも困難であり、敵対している現地政府からの協力を得ることも不可能な難民認定申請者たちにとって、日本政府はあまりにも重い立証責任を課していると訴える。
「たとえばアメリカなら、現地の政府と対立する政党に所属していたことを証明できただけでも、難民と認定されていただろう」(吉田弁護士)
クリストファーさんは現地に妻子や家族も残して亡命してきたが、その時点での選択肢は日本しかなかった。「だが、こんなことになると知っていたなら来なかった」と語る。
吉田弁護士は「高裁の裁判官はそもそもカメルーンで内戦が起こっていることも知らなかったのではないか」と疑念を示し、「世界で何が起こっているのか、日本人ももっと知るべきだ」と語った。
カメルーン国内における「英語圏」出身者に対する弾圧や内戦などの問題は、世界にも徐々に知れ渡るようになっている。
日本の入管や裁判所における難民や外国人たちの扱いについても、世界の注目が集まることは避けられないだろう。
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