駅構内で女性“物色”? ひと気のない路上で突然「抱きつく」犯行…元モデル男性は初公判で “わいせつ目的” 否認
東京都世田谷区の路上で帰宅途中の女性に抱きつきわいせつな行為をしたとして起訴された元モデルの北畠亜都夢被告(27)の裁判員裁判の初公判が、2月19日、東京地裁で行われた。
北畠被告は2023年1月9日、同2月4日、同3月13日の3度にわたり、いずれも帰宅途中の女性にわいせつ目的で後ろから抱きつくなどして「強制わいせつ致傷罪」「強制わいせつ罪(未遂)」の罪で逮捕・起訴された。北畠被告は19日の初公判で、「いずれの犯行もわいせつ目的ではなかった」などと主張。公訴事実の一部についても否認した。
検察側の冒頭陳述
それぞれの事件には共通点が3つある。1つ目は被害女性が東急田園都市線「三軒茶屋」駅および周辺を利用していた点。2つ目は犯行時間が終電に近い夜間に限られている点、3つ目は被害女性が全員スカートを着用していた点だ。
検察は3つの事件について、それぞれ以下のように冒頭陳述を行った。
①1月9日の事件では、23時頃、三軒茶屋駅構内からAさんをおよそ15分にわたって追尾。集合住宅の敷地内で被告はAさんの背後から突然抱きつき、口をふさごうとしたが、Aさんが悲鳴をあげたため逃走した。強制わいせつ罪(未遂)にあたる。
②2月4日の事件では、午前1時頃に三軒茶屋駅付近から帰宅するBさんを約1時間にわたって追尾。途中Bさんがスーパーに立ち寄った際も入り口付近で待機し、人通りの少ない路上でBさんに背後から抱きつき、口をふさいだ。さらに、走って逃げようとしたBさんを追いかけコートをつかみ転倒させ、その場から逃走した。Bさんは右前額部、左手掌、前大腿部に全治10日のケガを負った。強制わいせつ致傷罪にあたる。
③3月13日の事件では、午前0時半頃、三軒茶屋駅付近を歩いているCさんを発見した被告が、それまで進んでいた方向から進路を変えCさんを追尾。およそ3分後に背後からスカートの中に手を入れスパッツの上から陰部付近をなでまわし、バランスを崩ししゃがみこむ姿勢になったCさんに対し、服の上から臀部(でんぶ)付近を触った。Cさんはバランスを崩した際、右膝部に全治一週間のケガを負った。強制わいせつ致傷罪にあたる。
検察官は裁判員らに対し、犯罪態様が悪質であること、被害者の処罰感情が重いこと、犯行動機が身勝手であること、再犯の恐れがあることを挙げ、量刑判断の参考にするように述べた。
「わいせつ目的ではなかった」弁護側の主張
これに対し弁護側は、いずれの事件も「ナンパ目的」で近づいたとして、わいせつ行為が目的だとする検察側の主張を否定。
さらに③の事件については、被告がCさんの陰部付近をなでまわしたり、臀部に故意に触れた事実はないとして公訴事実を否認した。その上でバランスを崩したCさんを介抱しようとした際に臀部に触れてしまったと主張した。
②③の事件で被害者にケガを負わせたことについても認めたが、②の事件では前向きにバランスを崩した女性が転ぶのを防ごうとコートを引っ張ったが倒れてしまったと説明。
また、いずれの事件でも、肩に手を回し抱きつく際に「お姉さん」と声をかけたといい、口をふさいだのは大きな声を出されたことへの反応でありわいせつ行為を目的としたものではないとも主張した。
三軒茶屋駅で女性を“物色”していたか
三軒茶屋駅構内から追尾を開始した①の事件では、Aさんを発見する前から被告が駅構内にいた様子が防犯カメラに写されていた。
さらに事件を起こした後、被告が走って駅に戻ってくる様子も防犯カメラには残されていたといい、その後も構内で“物色”を続けたのか、検察官によれば、事件同日にさらに2人の女性の後を追いかけていたようだ。
被告がAさんを発見し追尾を始めたのは23時頃。15分後に住宅街で事件を起こし、再び駅に戻ってきた被告が“最終的”に駅を離れたのは午前0時半頃だった。
日常的に三軒茶屋駅を利用する30代女性は、「駅周辺に飲食店が多いので、飲んで歩いて帰るという人も多いです。駅周辺は人も多いし、治安も良い。でもにぎやかな駅周辺と違い、一歩住宅街に入れば閑静で人通りも少ないです。そういう場所に女性が帰るのを狙っていたのかもしれません」と被告が“土地勘”を利用し犯行を行った可能性を指摘する。
被告は元モデルで恋愛リアリティー番組や『SASUKE』などへの出演経験もある。細見で目鼻立ちがくっきりとした、いわゆる“イケメン”の部類といえるだろう。スポーツマンでもあり、さらに実家は資産家だという。
“ナンパ”をせずとも交際相手には困らなかったように思われる被告が、なぜ「ひと気のない場所で女性に背後から突然抱きつく」などという愚行に及んだのか。今後の裁判が注目される。
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