在宅勤務&オンライン授業の拡がりでトラブル増加? 新生活「隣人ガチャ」の不安を解消するには
隣の部屋の生活音が聞こえる、下の階の人に身に覚えのない文句を言われた…など賃貸住宅に住む人にとっても無縁ではない「隣人トラブル」。入居するまで隣の人がわからない様子は、昨年の流行語大賞でトップ10に入った「親ガチャ」(※1)をもじり「隣人ガチャ」とも呼ばれている。
(※1)子が親を選べないことを、ガチャガチャから出てくるアイテムのように例えた言葉。親の事情(経済力など)によって子どもの将来が決まっていることを皮肉・揶揄するように使う。
冒頭のような些細なトラブルから大きな事件に発展した例も少なくない。
隣人トラブルの果てに…
大阪府大東市に住む女子大生が、下の階に住む男によって殺害された事件(2021年4月28日)。男は女子大生を殺害した直後に死亡しているため、詳しい動機はわかっていない。だが直前まで容疑者の隣に住んでいた男性は、壁をたたかれるなどして恐怖を感じていたという。府警は容疑者が過剰に音に敏感になっていた可能性があるとしている。
東京都足立区のアパートでは、刃物を持った60歳の男が隣の部屋に押し入る事件が発生(2021年5月4日)。当時、隣の部屋には住人の男性のほか、遊びにきていた息子夫婦と孫娘がおり、男に応対しようと扉をあけた息子が切りつけられて死亡した。男は「声や物音がうるさく、我慢の限界だった」と供述した。
もちろんこれらは「隣人ガチャ」と揶揄できないほどの恐ろしい隣人の例だが、新型コロナウイルス感染症の拡大により在宅時間が増えたことから、以前までは気にならなかった時間帯の音が聞こえるようになるなど、隣人トラブルが増えているようだ。
一番多い「騒音」トラブル
「リモートワークやリモート授業など、コロナ禍でのあたらしい生活スタイルによるトラブルも増えている」と語るのは、アプリの作成やSNSを活用して賃貸住宅トラブルの予防啓発を行う「NPO法人 賃貸トラブル助け隊」(https://www.t-toraburu.com/)の担当者だ。
「インターネット付きの部屋のはずがネット速度が遅くて使えない」というような管理会社とのトラブルも目立つが、やはり「音」に関するトラブルが一番多いという。
総務省統計局によれば、地方公共団体の「公害苦情相談窓口」が受付した苦情の総件数が前年度のおよそ16%増加。家庭生活(※2)を発生原因とする騒音の苦情件数も大幅に増加している。
(※2)家庭生活が原因の騒音公害には、近隣住宅における空調・音響など機器の使用によるもの、ペットによるもの、浄化槽・生活排水・話し声・自動車の空ぶかしなどによるものが挙げられている。
さらに、悪臭への苦情もコロナ禍以前に比べ増加している。悪臭の原因は野焼きが多いが、ベランダでの喫煙や共有スペースへのごみの放置など、マンションやアパートでも悪臭によるトラブルのケースがある。
「騒音」以外にも「共有スペース」「駐車場」は要注意
マンションやアパートの「共有スペース」は悪臭だけでなくトラブルが起こりやすい場所だ。賃貸トラブル助け隊の担当者は、廊下に大きな荷物が置かれて通行の妨げとなりトラブルに発展するケースを挙げた。このようなトラブルは引っ越しシーズンの今の時期に特に増えるという。
突発的なトラブルは事前に調べて予防することは難しい一方で、「駐車場」のトラブルは比較的予防しやすい。
はみ出し駐車や、車幅などが原因で自分のスペースに駐車できないというトラブルが起きる駐車場。駐車時に接触事故が起きる可能性もあるため、賃貸トラブル助け隊では、契約前に隣の車の「車種」を確認しておくことを推奨している。
メールや録音などの「記録」に残すことが重要なワケ
どれだけ気を付けても巻き込まれる可能性がある隣人トラブル。万が一身近でトラブルが起きた際にはどうすればよいのだろうか。
賃貸トラブル助け隊担当者は、「気になることがあっても、絶対に『直接』やりとりしてはいけません。必ず、管理会社や家主にメールなど記録に残るように連絡をしましょう」と呼びかける。
「不動産や賃貸は近隣トラブルはもちろん、入居時にもトラブルが発生しやすいのですが、専門用語も多く素人ではどうしようもないと思うことも多いかもしれません。知識や経験がなくても出来る対策がメールや録音など記録に残すことです。実際、私たちへの相談の8割以上が記録に残すことで改善や解決に繋がっていますし、トラブルが大きくなっても、消費者センターや弁護士にも経緯を正確に伝えることができます」と、記録を残すことが事態を解決するための有効な手段になりうると説明した。
「近隣トラブルは誰に責任が問えるのか?」弁護士が回答
隣人トラブルは、個々のケースで正しい対処法が異なり、解決までの道のりも違う。引っ越しシーズンの今の時期に多い近隣トラブルの悩みについて、桐ヶ谷彩子弁護士に聞いた。
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