榊英雄容疑者逮捕に至ったのは捜査機関の“やる気”? 著名人の性加害「逮捕される人、されない人」の違い

弁護士JP編集部

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榊英雄容疑者逮捕に至ったのは捜査機関の“やる気”? 著名人の性加害「逮捕される人、されない人」の違い
映画のキャスティングをチラつかせ性加害に及んだという榊氏。本人オフィシャルブログより(https://ameblo.jp/sakakihideo/entry-12176135824.html)

映画監督の榊英雄容疑者が逮捕されたことを受け、ほぼ同時期(2022年春)に週刊誌で性加害疑惑が報じられた俳優の木下ほうか氏、映画監督の園子温氏が頭をよぎった人も多いのではないだろうか。

木下氏は週刊誌に対して損害賠償請求訴訟を提起していたものの、昨年6月に木下氏が訴えを取り下げたことで訴訟が終了。園氏も週刊誌を訴えていたが、今年1月に自身の公式サイトで、週刊誌側がインターネット記事を全文削除することで和解したことを発表している。

著名人の性加害をめぐっては、昨年末から注目の集まる松本人志氏のほか、新井浩文氏(強制性交の疑いで逮捕・懲役4年)、高畑裕太氏(強姦致傷容疑で逮捕・不起訴)、香川照之氏(事件化せず)ら過去にもさまざま話題となっているが、逮捕されるケースとされないケースにはどのような違いがあるのだろうか。

逮捕されるかは「捜査機関のやる気次第」

刑事事件に詳しい杉山大介弁護士は「個別事案の前提事実は把握していないため、一般的な傾向の話にはなりますが」とした上で、「法律的には、どの事件でも逮捕状は出せるでしょう」と言う。

「強制性交や強制わいせつは法定刑が重く、被疑者が逃亡するおそれがあると推定されます。被害を主張する人と接触する可能性もあり、保護の必要性も高いことから、罪証隠滅のおそれも認められるという理屈で、令状は『請求すれば基本的に出てくる』ぐらいの位置づけになっています」

極端な話にはなるが、いずれの事件でも「捜査機関がやる気になれば」逮捕できてしまうという。

「逮捕は、あくまで捜査のための“途中段階”にすぎません。さすがに『犯罪ではないかもしれない』という強い懸念があるときには捜査機関も躊躇(ちゅうちょ)しますが、基本的には犯罪が確定していなくても逮捕できてしまうのです。

それにもかかわらず、逮捕された時点で犯罪があったかのように報道されるのは問題であり、これはおおむねメディア側に責任があります」(杉山弁護士)

榊氏が逮捕されたワケ

性加害で逮捕されるか、されないかは「捜査機関のやる気次第」というが、彼らはどのような場合に積極的な動きを見せるのだろうか。

「まず被害を訴えている人が刑事告訴をすること、そして刑事裁判という刑事手続をどれだけ求めているかによって変わってきます。

著名人が週刊誌報道をされたもののうち、当事者は示談済みで特に問題にする気がないものや、週刊誌で報道されているだけで捜査機関の動きが見えてこないものについて逮捕という事態が生じないのは、ある意味当然です。

このように『われわれの目に留まってくるか』ではなく、あくまで『当事者が捜査機関とどれだけ真剣に刑事手続について進めているか』によって、捜査手続が進むかが決まってきます。

“加害者”とされた人たちの行為に差があるというよりは、より属人的なものが影響してくると思うべきで、逆に言えば、刑事事件化していないから犯罪にあたる行為ではなかったという評価ができるわけでもありません」(杉山弁護士)

榊氏の件でも、元製作スタッフらが捜査に協力していたという。

「犯罪の成否については現状、私がコメントすべきでないと思っていますが、週刊誌報道後も刑事手続に向けて約2年間動き続けてきた一部当事者の強い意志が、捜査機関をも動かしているとは考えています」(同前)

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