「向こうから誘ってきた」子どもの“性的関心”利用し加害行為へ…卑劣すぎる小児性愛者の言い訳
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年端も行かぬ幼い子どもを性の対象とする「小児性愛」の問題は、性をタブー視する日本社会のなかでも特に忌避され社会的議論につながってこなかった。
しかし近年、ジャニー喜多川氏による男児への性加害が明らかになったほか、塾講師をはじめ教師やベビー(キッズ)シッターなど、子どもにとって身近な大人による加害行為も表面化してきた。
本連載では、小児性愛障害と診断され、子どもへの性加害を起こした者への治療に取り組む斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)が、治療やカウンセリングを通じ実感した加害者特有の「認知の歪み」について解説する。
今回は、子どもへの性加害経験者に見られる“特有の歪み”の実例を紹介する。(全5回)
※ この記事は、斉藤章佳氏による書籍『「小児性愛」という病――それは、愛ではない』(ブックマン社)より一部抜粋・構成しています。
小児性愛者の認知の歪み
性加害行為を“受け入れられた”、と感じているくらいですから、加害者たちは自分がしていることを「悪いこと」「相手を傷つける行為」だとは思っていません。だから「子どもから求めてきた」「子どもはよろこんでいた」と主張するのです。
何が彼らにそう思わせるのでしょう?
それは、子どもと性行為をしたいという強い欲求です。欲求を具現化し、完遂するために、認知――みずからが見ている現実や感じていることを、歪ませます。
目に映っているのは恐怖でフリーズしている子どもでも、彼らは「黙って自分を受け入れてくれた」と思い、痛みで目に涙がにじんでいるのを「目をうるませて感じている」と受け取る。そしてとてつもない恐怖に怯(おび)えている表情を見て、「かわいい」「愛おしい」と認知するのです。
私たちはこれを、“認知の歪み”と呼んでいます。
その定義は、「性的嗜癖行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」です。
性加害も「自分は間違っていない」正当化
先述のとおり、本人たちは子どもへの性加害をしたくてしたくてたまらないわけです。しかも、くり返し何度でもしたいのです。しかし、自分のなかにも「逮捕されれば一巻の終わりだ」「この子が誰かに話してしまうのではないか」という恐怖があり、それが多少なりとも実行を妨げます。「そもそも許されないことだ」と罪悪感を抱きながら実行する者、終わった後に「これを最後にしよう」と後悔する者もいます。
人は、やってはいけないと思いながら何かを行うときに苦痛を覚えます。背徳感を刺激されたと感じる者もいるでしょうが、それにも限度があります。
そこで自己や自分がしていることを正当化し、「自分は間違っていない」「何も悪いことをしていない」と認知を歪めます。子どもが求めている、よろこんでいるという、自分にとってだけ都合のいい現実をみずから作り上げるのです。
普通の人の耳にはふざけているとしか聞こえなくても、当人にとっては長年かけて育んできた思考体系なので、大真面目(おおまじめ)にそう思い込み、問題行動をくり返します。
ハラスメントやDVをくり返す人にも特有の認知の歪みがあり、性暴力をくり返す人にも当然あります。強制性交や強制わいせつ、痴漢、盗撮、露出……それぞれに特有の認知の歪みがありますが、「相手はよろこんでいた」「向こうから誘ってきた」などは、どの性暴力にも共通しているといえます。
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知識なくても「誘ってきた」子どもへの性加害者“特有”の歪み
そのなかでも子どもへの性暴力をやめられない人たちには、ほかに見られない独特の歪みがあると感じます。ここでは、私がクリニックで実際に加害経験のある当事者から聞いたものを挙げていきます。
認知の歪みとひと口にいっても、いくつかのカテゴリーに分けられますので、そのうちのひとつを紹介しましょう。
●被害者の自己責任にする
・あんな暗い夜道をひとりで歩いているから、触りたくなったんだよ。
・子どものほうから誘惑してきたから、自分はそれに応じただけ。
・大人とセックスしたがる子ども、セックスが好きな子どももいるからね。
自分が起こした問題行動の原因が、ほかならぬ被害者にある──これは子どもに加害した者に限らず、多くの性暴力加害者に共通して見られるものです。
こちらをチラチラ見ていたから、お酒に酔っていて隙を見せたから、痴漢が多いという噂(うわさ)の車両に乗ってきたんだから……と性倒錯の種類によってその内容は異なり、それぞれにバリエーションは豊富にあります。
年齢にもよりますが、被害を受けたなかには「自分が何をされたかわからない」という子どもが少なくありません。性についての知識がまだないので、性的接触による加害行為に晒されても、はっきり被害を認識できないのです。
彼らはそこにつけ込んで加害するにもかかわらず、自分は誘われたという捉え方をしています。知識がない子どもたちが「誘惑する」「セックスが好き」というのは論理的に無理があると誰でもわかるはずです。
また被害者の「落ち度」を理由にするのも、認知の歪みのひとつです。実際には落ち度でもなんでもなく、被害者はそこをたまたま歩いていただけだったり、たまたまその服を着ていただけだったりするのですが、加害者の認知では「性的接触をしていい理由」になります。
子どもの「性への関心」を利用して…
子どもの振る舞いを理由に、子どももセックスしたがっている、子どものほうから誘ってきたという認知については、次のようなケースがあります。
〈私が子どもに手を出したなんて、とんでもない。子どものほうから「おじちゃん、ちんちん見せて」といってきたんです。あのくらいの年齢の子だって、エッチなことに興味津々なんですよ。親や先生にはいわないだけで。〉(C 男性・55歳)
小学校低学年の女子児童に何度も口腔(こうくう)性交を強いた男性の弁明です。子どもがその行為のきっかけを作り、自分は子どもの求めに応(こた)えただけというのが、彼の認知です。
個人差は大きいですが、子どもにも多かれ少なかれ性的関心はあるでしょう。しかし、それは大人と同じものではありません。それぞれの成長段階に応じて、変化していくものです。
「性的関心がある」と「性的接触をしていい」のあいだには、大きすぎる飛躍があります。それを歪んだ認知によって一瞬で飛び越えて、彼らは子どもに対し行動を起こします。
子どもらしい好奇心を利用し、ときには誘導して子ども自身が望んでいるように思い込ませたうえで、ひとりよがりな欲望を果たすのですから、卑劣(ひれつ)としかいいようがありません。
(第3回に続く)
- この記事は、書籍発刊時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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