「推し活ブーム」の裏でトラブルも…アイドル、アニメ“非公式グッズ”の自作はどこまで許される?
マンガ、アニメ、アイドル、Vtuberなど、今やジャンル・コンテンツを問わず盛んな“推し活”。しかしブームの裏で問題となっているのが、非公式グッズの存在だ。版権元と無関係な企業が無許可で販売するのみならず、ファンがグッズを自作して販売し、トラブルに発展するケースも出てきている。
ファンによる非公式のアイテム自作は、どこまでが「趣味の範囲」として許されるのだろうか。自身もアニメや漫画が好きと語る三木悠希裕弁護士に話を聞いた。
「ファンが勝手にグッズを作って販売」アイドルが経験した実際のトラブル
非公式グッズにまつわるトラブルの実例を紹介しよう。筆者の友人であるアイドルAさんの話だ。彼女は事務所に所属して活動するアイドルだが、自身の写真を使ったグッズをファンが勝手に自作・販売しているのを目撃。
売った側(以下、B)は「公式HPの写真をダウンロードして、仲間内で楽しむために業者に依頼して作った。お金は製作費をもらっただけ」と主張。しかし買った側は、「Bが『Aさん公認で作った』かのような発言をしたため買ってしまった」と告白したらしい。Aさんは現在、著作権侵害を理由にBと係争中だ。
上記のケースでは、アイドル側は「金銭の受け渡し=売買」として問題視している。もしBの主張通り、あくまで仲間内で楽しむためだけに作ったのだとすれば、それは問題とならないのだろうか。
「自分が楽しむために手作りしたり、親しい人に見せたりするだけなら『私的利用』の範囲と認められるでしょう。私的利用とは、『著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内に使用することを目的とする場合には、その使用する者が複製できる』というものです」(三木弁護士、以下同)
しかし今回のケースでは、私的利用と認められない重大なポイントがあるという。
私的利用と“認められない”重大ポイント
「たとえ仲間内だけで楽しむ目的であっても、グッズの制作を“独立した外部の業者”に依頼した場合は、私的利用にあたらず著作権侵害となります」
つまり、公式が提供する写真やイラストなどを使って外部の業者に依頼した時点で、私的利用の範囲から外れてしまうのだ。では、マンガやアニメの公式の画像をトレースしたイラストや、二次創作として描いたイラストでグッズを作る場合はどうなのだろう。
「公式画像をトレースしたイラストの作成や、二次創作は、著作権のうちの複製権、翻案権に抵触します。複製権とは、著作物を複製する権利のこと。翻案権は著作物を翻訳、編曲、変形、脚色などをする権利です」
二次創作の内容によっては、私的利用と認められない場合、同一性保持権の問題も発生する。同一性保持権とは、「著作物のタイトルや内容を、著作者の意に反して改変されない」という権利だ。
ただし、「著作権者の明示の許諾がある場合や、明示の許諾がなくても著作物の利用の実態からみて一定の合理的な範囲で黙示の許諾を広く認めるなどの余地はあります」と三木弁護士は話す。
「たとえば人気コンテンツの『ウマ娘 プリティーダービー』は、二次創作ガイドラインを公表しています。ガイドラインの範囲でなら、ファンが自由に創作活動を楽しんでよいと許されているわけです。このように明示的に許諾をしている場合以外で、無断でグッズなどを作成・販売してしまうと、著作権の侵害となることが多いでしょう」
判断が難しい「私的利用の範囲」は、「ネットに載せず販売などもせず、自分や親しい人とこっそり楽しむ分には、私的利用と認められる可能性がある」とのこと。
公式グッズとだませば“詐欺罪”成立も?
アイドルAさんの事例では、購入者側は「Aさん公認なら買っていいのかな」と判断してしまっている。この場合、グッズを制作・販売したBは著作権侵害以外にも罪に問われる可能性があるのだろうか。
「公式(公認の)グッズと思わせるようにだまして買わせた場合、もちろん著作権侵害にあたります。それだけでなく、刑法上の詐欺罪が成立する可能性もありますね」
現在ではスマホで画像をアップロードするだけでグッズが作れるアプリなども登場している。簡単に作れてしまうからこそ、「お気に入りの推しの画像でグッズを作りたい」と、気軽にグッズを作ってしまう人もいるだろう。
しかし一歩間違えれば、その行動は推しの権利を侵害してしまう。コミケ等での二次創作グッズの頒布も、「暗黙の了解」として公式から目をつぶってもらっているだけに過ぎず、基本的には著作権法に抵触する。そのことを念頭に置いた上で、公式のルールを都度確認しながら推し活を楽しんでほしい。
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