99件のセクハラ行為認定で辞職した岐南町長が「ひきょうだ」と捨て台詞…最後まで反論続け調査費全額負担も拒否

小林 英介

小林 英介

99件のセクハラ行為認定で辞職した岐南町長が「ひきょうだ」と捨て台詞…最後まで反論続け調査費全額負担も拒否
「お尻をさわられる」「頭をなでられる」などの被害が報告された(NOV / PIXTA ※写真はイメージ)

岐阜県羽島郡岐南(ぎなん)町の小島英雄町長が、99件のセクシュアル・ハラスメント行為をしたとして3月5日に辞職した。セクハラについては第三者委員会で認められたが、本人は「ひきょうだ」などと反論を続けた。

「指摘や激励のつもり」、文春報道で記者会見

きっかけは、週刊文春が2023年5月18日に報じた「〈6人が被害告発〉岐阜県岐南町長(73)はセクハラ常習犯 女性秘書が”抗議の辞職”」と題された記事だった。この記事を含む一連の追及記事では、女性職員6人が「お尻をさわられる」「頭をなでられる」などの被害を告発するなどし、証拠となる音声なども詳細に報じた。

「この度の件につきまして、町民をはじめ多くの関係者の皆さま方に大変お騒がせしましたことを深くおわび申し上げます」

報道を受けて同日、小島町長は岐南町役場で会見を開き、謝罪。行ったとされる行為については、「指摘や激励のつもり。(職員は)嫌がっていなかったため、セクハラと認識していなかった」と釈明に追われた。

セクハラ行為99件を認定、第三者委員会「即時の辞職」と断罪

同年7月末に初めて開かれ、24年2月まで数回開いた「岐南町ハラスメント事案に関する第三者調査委員会」は2月27日、調査報告書を取りまとめて公表した。第三者委員会は弁護士3人の委員で構成されており、退職した職員を含む合計271人を対象にアンケートやヒアリングを実施した。調査報告書の主旨は以下の通り。

・多数の女性職員に対して、「お尻をさわる」「背後から抱きつく」など、少なくとも99件のセクハラ行為や不相当な言動が認められる
・被害のうち、町長から突然胸をさわられ、お尻をさわられたものもあり、強制わいせつ罪(現・不同意わいせつ罪)にあたる可能性がある行為も確認された
・多数の職員に対し、「懲戒」「クビ」「降格」などの言葉を伴った恫喝(どうかつ)が日常的にあったことが認められた。なお、客観的に「懲戒」などにあたるような事実は認められていない
・差し押さえ情報を漏らす行為を認定。これは地方税法22条1項(秘密漏えいに関する罪)に反する
・私的理由で会計年度任用職員の更新を拒絶し、評価点数を操作するよう指示を出すなどの違法行為を認定

このように、報告書では99件のセクハラ行為などを認定。地方税法に違反する行為や嫌がらせともとれる行為もあり、報告書は「町長について『即時の辞職』以外の選択肢はない」などと結論をまとめた。

「怪文書」で調査妨害も、町長自らが関与か

この報告書の内容で、一つ気になったことがある。それは「怪文書」の存在だ。報告書によれば、第三者委員会が設置された直後の23年7月10日早朝、「岐南町職員有志一同」の名で「職員の皆さんへ」との表題の文書が職員の机の上に複数枚配布されていたという。回収された枚数は25枚で、総数は確認できていないとした。怪文書は、「文春は民間の雑誌業者で公的機関ではありません」「職員の誰が文春にリークしたか分かれば、警察の事情聴取が待っています」などと脅迫めいた内容だった。

複数枚配布されていたという “怪文書”

報告書によると、使われている特徴的フレーズが町長が普段から発言するものと似ていることや、特徴的フォント・文字サイズ・行間等の文字サイズについて、町長が議員時代に使っていた文書の見た目とまったく同じだったことから、町長自らが文書を作成し、配布に関与している可能性が高いという情報が複数から寄せられるなどしたという。

町長は3月5日に辞職、「ひきょう」なのはどちらか

「今のところは今年5月末までに辞めたいと考えている」

報告書で「即時の辞職」と結論を出された小島町長は2月28日に再び会見を開き、辞職する意向を明らかにした。その一方で、以下のように反論する場面もあった。

「今回の調査委員会の報告書は、ひと言で言えば中立性を欠いていた。もう少し丁寧な調査があってもよいのではないか」

「私らの時代は、頑張った、よくできた子には頭をなでてもらったという経緯がある。皆さんは若いからわかりませんが、そういうつもりで、頑張っているねとやった」

5月末にも辞めると明言していた小島町長だが、その後には「心が折れた。3月5日に辞職する」と早期に辞職する考えを明かした。

「多少、ボタンのかけ違いがあったかもしれないが、ここぞとばかりに言ってくる。自分の名前を出さない。これはひきょうだ」

そして3月5日に辞職届を提出した小島町長は記者団にこう話し、反論し続けたまま役場を去ることになった。

人事院によると、セクハラは「他の者を不快にさせる職場における性的な言動」や「 職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」をいう。小島町長は「ひきょうだ」と話していたが、町長という優越的な立場を利用したセクハラ行為こそ「ひきょう」ではないか。また、小島町長は第三者委員会の調査費1240万円(当初の740万円から増額)を、退職金1125万円から一部負担する意向を示しているが、増額分は「関係ない」として支払わない旨を主張。こちらは本人の判断であり難しいところだが、退職金を受け取らないのが望ましいのではないか。

小島町長の辞職に伴う岐南町長選挙は、4月9日告示、14日に投開票される。

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