「見て見ぬふりをしないで」東映セクハラ裁判 原告が声ふるわせ意見陳述

弁護士JP編集部

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「見て見ぬふりをしないで」東映セクハラ裁判 原告が声ふるわせ意見陳述
東映本社に併設された映画館「丸の内TOEI」(yu_photo / PIXTA)

映画会社「東映株式会社」に勤務していた元社員の女性(20代)が、精神疾患を発症したのは就業中に受けたハラスメントと長時間労働を強いられたことが原因として、損害賠償と割増賃金の支払いを求めている民事訴訟の第一回口頭弁論が、3月15日、東京地方裁判所で行われた。

女性は意見陳述で「素晴らしい作品を作りたくて東映に入社したが、セクハラやパワハラ、長時間労働が当たり前の世界だという考え方があった。我慢しなければならないと思い込んで我慢していたが、冷静に考えておかしい。なぜ団体交渉でも解決できず、裁判にまでしなければならなかったのか。見て見ぬふりをしないでほしい」と時折声をふるわせながら裁判官に訴えた。

提訴までの経緯

2019年4月に東映に入社した女性は「テレビ企画制作部」に配属。

同年、テレビドラマ『相棒』などの制作現場で、年上の男性フリーランススタッフから「しつこくLINEやショートメッセージなどで誘われる」「現場で手を握られる」などセクハラ被害を受けるようになった。

スタッフから女性に送られてきたLINE(提供:総合サポートユニオン)

被害について社内のホットラインにも相談したというが、「君だけじゃないから気にしなくていいよ」などと言われ、適切な対応がとられなかった。

その後、『仮面ライダー』シリーズでアシスタント・プロデューサーを務めるようになってからは、固定残業制の導入とともに勤務時間の記録がされなくなり、長時間の過重労働により体調が悪化。2021年6月には休職を余儀なくされ、翌7月には適応障害と診断された。

医師によって適応障害の発症時期とされた2020年2月までの1か月間、残業時間は休憩なしの計算で143時間を超えていた。また、撮影所に近い30人ほどが暮らす男子寮に住まわされた。周囲には女性が暮らしていることが周知されておらず、配慮のない状態で、心が休まる時間も取れなかったという。

女性は休職後に労働組合「総合サポートユニオン」を通じ、ハラスメントの被害救済や再発防止等を求め、東映側は第三者による調査を実施。女性のセクハラ被害が認定された。

さらに同社は、労働基準監督署から労働基準法32条(法定労働時間) 違反、同法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)違反、同法66条8の3(労働時間の状況把握)違反への是正勧告を受けた。

しかし、同社が女性の労災認定への協力を拒否。謝罪と賠償、再発防止等を求める最終解決案に対しても事実上回答を拒否したため、女性は提訴に踏み切った。

同社に対し安全配慮義務違反として損害賠償金314万9326円、固定残業代分の未払い分147万69円、付加金として136万2434円を求めている。

本件について東映は、「真摯に対応いたします」と弁護士JPの取材に回答。次回期日は、6月3日にウェブ上で行われる予定だ。

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