交通事故の損害賠償|請求できる項目・算定基準・金額相場

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交通事故の損害賠償|請求できる項目・算定基準・金額相場

交通事故の被害者は、加害者側に対してさまざまな項目の損害賠償を請求できます。弁護士基準(裁判所基準)に基づき、適正額の損害賠償を請求しましょう。

1. 交通事故の損害賠償金として請求できる項目

交通事故の被害者が、加害者(または損害保険会社)に対して請求できる損害賠償の項目は、積極損害・消極損害・慰謝料・物的損害の4つに大別されます。

(1)積極損害

「積極損害」は、交通事故によって実際に支出が生じた損害です。

一例として、以下の損害項目が積極損害にあたります。

①治療費

けがの治療のため、医療機関や薬局に対して支払った費用

②通院交通費

通院のために要した交通費

③装具・器具購入費

義歯・義手・義足・眼鏡・車いす・コルセット・サポーターなどの購入費用

④介護費用

将来の介護に要する費用

⑤入院雑費

入院中の日用品等の購入費用

⑥葬儀費用

交通事故によって死亡した被害者の葬儀のために支出した費用

(2)消極損害

「消極損害」は、交通事故が原因で収入が得られなくなったことによる損害です。

一例として、以下の損害項目が消極損害にあたります。

①休業損害

けがの影響で仕事を休んだ場合に減少した収入(有給休暇を取得した場合も請求可能)

②逸失利益

けがの後遺症や死亡によって労働能力が失われたことにより、将来にわたって減少した収入

(3)慰謝料

「慰謝料」は、交通事故によって受けた肉体的・精神的苦痛に対する賠償金です。

交通事故の被害者(または遺族)が加害者に対して請求できるのは、以下の3つの慰謝料です。

①入通院慰謝料(傷害慰謝料)

けがをしたことによる肉体的・精神的苦痛に対する賠償金

②後遺障害慰謝料

後遺症が残ったことによる肉体的・精神的苦痛に対する賠償金

③死亡慰謝料

死亡したことによる肉体的・精神的苦痛、および遺族が受けた精神的苦痛に対する賠償金

(4)物的損害

「物的損害」は、物(動物を含む)に関して発生した損害です。

一例として、以下の損害項目が物的損害にあたります。

①修理費(または買替費用)

壊れた車の修理費(修理費が買替費用を上回る場合は、買替費用相当額が上限)

②代車費用

壊れた車の代車を借りる際にかかった費用

③評価損

事故車となったことにより、中古車市場における評価が下がった場合の減少額

④レッカー代

事故車をレッカー移動した際にかかった費用

2. 交通事故の損害賠償の算定基準と金額相場

交通事故の損害賠償額の算定基準は3つありますが、弁護士基準(裁判所基準)が最も被害者に有利かつ公正な基準です。弁護士基準に基づいて適正な損害賠償額を計算し、加害者側に対して請求しましょう。

(1)交通事故の損害賠償に関する3つの算定基準

交通事故の損害賠償額の算定基準は、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3種類があります。

①自賠責保険基準

自賠責保険から支払われる保険金額の算定基準

②任意保険基準

加害者側の任意保険会社が独自に定めている算定基準

③弁護士基準(裁判所基準)

過去の裁判例に基づき、客観的な損害額を算定する基準

損害賠償の金額は「自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準」となります。したがって、弁護士基準が被害者にとって最も有利です。

また、弁護士基準は過去の裁判例に基づいているので、被害者は本来、弁護士基準による損害賠償を受ける権利があります。

弁護士基準による損害賠償を請求するためには、弁護士のサポートを受けるのがよいでしょう。弁護士に依頼すれば、法的な根拠を示しながら弁護士基準による損害賠償請求を行ってもらえます。

(2)自賠責保険基準・弁護士基準に基づく損害賠償金の相場

交通事故の各損害項目について、自賠責保険基準および弁護士基準に基づく損害賠償の金額相場を紹介します。

なお、任意保険基準は非公開であるため割愛します(自賠責保険基準よりもやや高額であるものの、大きな差はないケースが多いです)。

①積極損害

自賠責保険基準 弁護士基準
治療費 実費相当額 実費相当額
通院交通費 実費相当額 実費相当額
装具・器具購入費 実費相当額
※眼鏡の費用は5万円が上限
実費相当額
介護費用 補償対象外 家族が常時介護する場合:日額8000円程度
家族が随時介護する場合:日額6000円程度
職業介護者に依頼する場合:実費相当額
※ライプニッツ係数による中間利息控除を行います。
入院雑費 1日あたり1100円 1日あたり1500円
葬儀費用 100万円 150万円程度まで

②消極損害

自賠責保険基準 弁護士基準
休業損害 原則として1日あたり6100円
※上記を上回る収入減を立証した場合は、1万9000円を限度としてその実額
実際の収入減少相当額
逸失利益 収入、就労可能期間、被扶養者の有無などを考慮のうえ算出 事故前の収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間
※ライプニッツ係数による中間利息控除を行います。

③慰謝料

自賠責保険基準 弁護士基準
入通院慰謝料(傷害慰謝料) 1日あたり4300円
※対象日数は、被害者の傷害の状態、実治療日数などを勘案して治療期間内で決められます。
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」の別表Ⅰまたは別表Ⅱによる
後遺障害慰謝料 認定される後遺障害等級に応じて、1650万円(要介護第1級)~32万円(第14級) 認定される後遺障害等級に応じて、2800万円(第1級)~110万円(第14級)
死亡慰謝料 被害者本人:400万円
遺族(父母・配偶者・子):請求者の人数に応じて以下の金額
1人:550万円
2人:650万円
3人以上:750万円
※被害者に被扶養者がいるときは、遺族の慰謝料に200万円が加算されます。
被害者の家庭における立場に応じて以下の金額(被害者本人と遺族の総額)
一家の支柱:2800万円
母・配偶者:2500万円
その他:2000万円~2500万円

④物的損害

自賠責保険基準 弁護士基準
修理費(または買替費用) 補償対象外 実費相当額(修理費が買替費用を上回る場合は、買替費用相当額が上限)
代車費用 補償対象外 実費相当額
評価損 補償対象外 実際の価値減少相当額
レッカー代 補償対象外 実費相当額

※物的損害は、自賠責保険では補償されません。

なお、自賠責保険による補償には、以下の支払限度額が設けられています。支払限度額を超える損害については、自賠責保険によって補償を受けることはできません。

  • 傷害による損害:被害者1人につき120万円
  • 後遺障害による損害:認定される後遺障害等級に応じて、被害者1人につき4000万円(要介護第1級)~75万円(第14級)
  • 死亡による慰謝料:被害者1人につき3000万円

3. 被害者自身で、弁護士基準で算定された慰謝料を請求することは難しい

弁護士基準での交渉に相手方の保険会社が応じるのは、最終的に裁判を起こすことのできる弁護士が交渉するからです。ご自身で交渉をしても、保険会社が弁護士基準で対応してくれる可能性はかなり低いです。

自動車保険や火災保険に、弁護士特約が付いている場合は、特約から弁護士費用が支払われます。弁護士費用特約の上限は、多くの保険会社で300万円となっておりますので、大半のケースで、自己負担なく弁護士への依頼が可能です。ご自身が加入していなくても、同居の家族や配偶者が加入していれば、弁護士費用特約を利用可能な場合も多いです。

加入していない場合に、弁護士費用を考慮してもトータルでプラスになるケースも多くありますので、まずは無料相談等を利用して、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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