面会交流とは? 取り決めるべき内容を解説

  • (更新:2024年09月27日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
面会交流とは? 取り決めるべき内容を解説

子どもがいる夫婦が離婚する際には、親権者でない側と子どもの面会交流の方法を取り決めることが望ましいです。

1. 面会交流とは

「面会交流」とは、離婚により子どもの親権者でなくなった親が、子どもと会って交流することをいいます。

子どもは情操教育の観点から、普段から同居している親権者だけでなく、もう一方の親とも定期的に交流することが望ましいと考えられます。そのため、子どもがいる夫婦が離婚する際には、面会交流の方法を取り決めることが推奨されます。

なお、親権者ではない側と子どもには、それぞれ互いに面会交流する権利(=面会交流権)があると解されています。そのため親権者は、正当な理由なく面会交流を拒否することができません。

(1)面会交流の方法

面会交流の方法としては、非監護親と子どもとの直接の面会以外にも以下のような方法があります。

  • 手紙や写真の送付
  • メールや電話での連絡
  • プレゼントの受け渡し
  • 学校の通知表の送付
  • 学校行事への参加

2. 面会交流について取り決めるべき内容・決定方法

離婚する夫婦が子どもとの面会交流について取り決めるべき内容と、その決定方法について解説します。

(1)面会交流について取り決めるべき内容

面会交流については、主に以下の事項を取り決めましょう。

  • 面会交流の頻度
  • 面会交流の場所
  • 面会交流の際に行う活動
  • 子どもと直接連絡をとることの可否、連絡手段
  • 面会交流時の宿泊の可否

など

(2)面会交流の内容の決定方法

面会交流の方法は、離婚時に取り決めることが望ましいです。その場合、以下のいずれかの手続きによって面会交流の方法を取り決めます。

    ①離婚協議

    基本的には別居時または離婚時の夫婦の話し合いにより、面会交流の実施の可否および方法を決めます。

    当事者の関係性が良好である場合には、連絡方法だけ定めて、具体的な面会交流の方法などは当事者間でその都度連絡を取り合って決めるという方法もあります。

    合意が成立したら、その内容を明確化するため、公正証書にまとめて締結しましょう。

    ②離婚調停

    当事者間で話し合いをしても面会交流の可否および方法が決まらない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立て、調停委員の仲介のもと面会交流の方法を含む離婚条件を話し合います。

    面会交流調停では、当事者同士が直接顔を合わせて話し合いをすることはありませんので、感情的な理由によって面会交流の話し合いがもつれているケースでは有効な解決方法でしょう。

    面会交流の実施可否で争いがある事案では、家庭裁判所において試行的な面会交流を実施し、面会交流の実施に問題がないかどうかを調査することもあります。

    離婚およびその条件について合意が得られたら、その内容が調停調書に記載され、離婚の成立とともに面会交流の方法も確定します。

    ③離婚裁判

    離婚協議・離婚調停が不成立となった場合に、引き続き離婚を求めるときは、家庭裁判所に離婚裁判(訴訟)を提起します。法定離婚事由の存在を立証できれば、裁判所が離婚を認める判決を言い渡します。面会交流の方法についても、判決主文で結論が示されます。

離婚時に面会交流の方法を取り決めなかった場合は、離婚後に協議・調停・審判を通じて取り決めることもできます。調停または審判によって面会交流の方法を取り決める際には、調査官調査(※1)や試験的面会交流(※2)が行われます。

※1 調査官調査:家庭裁判所調査官による家庭環境の調査です。面会交流の方法を決定する際に、調査結果が参考資料となります。

※2 試験的面会交流:面会交流の際に問題が生じないかどうか確認するため、家庭裁判所調査官が立ち会ったうえで、実際に親子の面会交流を行います。

3. 面会交流は拒否できるのか

(1)面会交流は原則として拒否することはできない

面会交流は、子どもの健全な発達を図ることを目的とした権利ですので、子どもの利益を害すると認められない限りは、原則として、拒否はできません。

単に非監護親のことが嫌いで会わせたくないなどの事情だけでは、面会交流を拒否する正当な理由にはなりませんので注意が必要です。

(2)例外的に面会交流の拒否ができるケース

面会交流を実施することによって、子どもの利益が害されるなどの事情がある場合には、例外的に拒否できる場合があります。そのようなケースとしては、以下のものが挙げられます。

①非監護親が子どもを連れ去るおそれがあるケース

非監護親が過去に子どもを連れ去ろうとしたことがあり、現在も危険があるという状況では、面会交流を実施した場合には子どもの連れ去りをめぐるトラブルに子どもが巻き込まれてしまいます。そのため、このようなケースでは面会交流を拒否できる可能性があります。

ただし、非監護親による連れ去りが心配だという抽象的な危険を感じているだけでは、面会交流を拒否することはできません。

②子どもに暴力を振るったことがあるケース

同居中に相手が子どもに対して暴力を振るったことがある場合には、面会交流を認めることによって、子どもに再び危害を加えられるおそれがあります。子どもに対する暴力は、子どもの肉体だけではなく精神的にも多大な苦痛を与えますので、面会交流を拒否する理由になります。

ただし、暴力を理由に面会交流を拒否するためには、過去に子どもが非監護親から暴力を振るわれていたという証拠が必要です。証拠になり得るものの例としては、非監護親から暴力を振るわれた際に子どもが負ったけがの写真、けがによる医師の診断書、児童相談所や警察署への相談記録などがあります。

③一定以上の年齢の子どもが面会を拒否しているケース

面会交流は、子どもの利益のために行うものですから、子どもの意向も踏まえて面会交流の実施の可否を判断することになります。子どもの年齢が概ね10歳から12歳以上であれば、自分自身の意思を伝えることができます。

そのため、このような一定以上の年齢の子ども自身が面会交流を拒否している場合には、面会交流を拒否できる場合があります。ただし子どもの意向については、監護親からの聞き取りだけではなく、家庭裁判所の調査官による調査によって明らかにしていくことになります。

④子どもがDVやモラハラ行為を目撃し心に傷を負っているケース

面会交流に関しては、基本的には夫婦の問題と親子の関係は切り離して考えるのが原則です。しかし、非監護親のDVやモラハラ行為が子どもの心の傷となり、非監護親に恐怖心を抱いている場合は、面会交流の拒否が認められる可能性があります。

また、DVなどを理由に住所を秘匿している場合には、子どもとの面会交流が原因で住所を特定されてしまったり再び危害を受けたりする恐れがあるため面会交流の拒否が認められる可能性が高まります。

4. 面会交流を一方的に拒否した場合のリスク

すでに離婚調停や面会交流調停で取り決められた面会交流を拒否した場合、下記のようなリスクが発生するので注意が必要です。

(1)履行勧告

履行勧告とは、調停や審判で決まったことを義務者が守らなかった場合に、裁判所が義務を履行する(約束を守る)ように促す制度です。この履行勧告に強制力や罰則はありませんが、裁判所から直接自宅に勧告書類が届くためプレッシャーを感じるでしょう。

(2)間接強制

面会交流を拒否し続けることで、非監護親から間接強制を申し立てられる可能性があります。間接強制とは、調停や審判で決まった内容を守らせるためにお金を支払わせる手続きです。

なぜ「間接」なのかというと、非監護親は面会交流の約束が守られない場合でも強制的に面会を実行できるわけではありません。監護親が面会交流の義務を守らない場合も「直接」の強制はなじまないと考えられています。

そのため面会交流に応じない監護親に金銭的な負担を負わせることで自発的に面会交流の実施を促します。

実際に面会交流に応じない場合に課される間接強制金の額は、1回当たり2万円から30万円まで、様々な例があります。

ただし、間接強制をすることができるのは、調停や審判が成立しているだけでなく、面会交流の日時や頻度、方法などの内容が明確に取り決められている場合に限ります。

(3)損害賠償(慰謝料)請求

面会交流を拒否されたことで、子どもに会えず精神的苦痛を被ったとして、非監護親から損害賠償(慰謝料)を請求される可能性があります。

相手方は子どもの親であるという事実がある以上、子と面会する権利を持っているので、きちんと段階を踏んで取り決めたにもかかわらず長期にわたり面会させてもらえないと、やはり精神的に大きく傷つくのです。

また、裁判提起後に面会交流に応じたとしても、裁判所に請求が認められると慰謝料を支払わなくてはならなくなります。

(4)親権者変更申立

正当な理由がない一方的な面会交流の拒否を続けると、非監護親が親権者の変更を申し立てる可能性があります。それが裁判所で認められた場合、子どものための面会交流を自己都合で拒否する親は親権者としては不適切であると考えられるため、親権は相手方に移り、今まで通りの子どもとの暮らしができなくなってしまうのです。

今一度、面会交流の拒否が本当に子どものためなのか、正当な理由があるのかをよく考え、親の勝手な都合で拒否することがないようにしましょう。

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