婚約相手から婚約破棄された。慰謝料請求できるケースは?

  • (更新:2024年11月13日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
婚約相手から婚約破棄された。慰謝料請求できるケースは?

婚約相手から婚約破棄をされてしまうと、婚約破棄された側は、多大な精神的苦痛を被ります。このような婚約破棄により生じた精神的苦痛に対しては、慰謝料請求をすることができます。
ただし、婚約破棄をされれば必ず慰謝料請求ができるわけではなく、婚約破棄に正当な理由がないことが必要です。

1. 婚約破棄とは

婚約破棄とは、婚約が成立した当事者間において、一方的に婚約を取り消すことをいいます。当事者の合意に基づくものが「婚約解消」ですので、婚約破棄と婚約解消とは同意の有無によって区別されます。
また、婚約破棄の前提として、当事者間に婚約が成立していることが必要です。婚約は、婚姻の届け出が要件とはされていませんので、以下のような事情を総合的に考慮して、婚約の成否を判断します。

  • 婚約指輪の購入
  • お互いの親族への結婚のあいさつ
  • 職場や友人への結婚の報告
  • 結納の授受
  • 結婚式場や新婚旅行の予約

なお、婚約破棄と内縁破棄の違いについては、以下のコラムもご参照ください。

「婚約破棄」と「内縁破棄」、慰謝料請求における違い

2. 婚約破棄で慰謝料を請求できるケース

婚約破棄で慰謝料を請求するには、婚約破棄に正当な理由がないことが必要です。以下では、婚約破棄で慰謝料を請求できるケース・できないケースを紹介します。

(1)慰謝料を請求できるケース

婚約破棄を理由に慰謝料請求をするには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 婚約が成立していること
  • 正当な理由なく婚約を履行しないこと

婚約破棄に正当な理由がないケースとしては、次のようなケースが挙げられます。

①性格の不一致や価値観の相違

もともとは他人同士でしたので、多少の価値観の相違や性格の相違は避けられません。そのため、性格の不一致や価値観の相違は、婚約破棄の正当な理由にはなりません。

②心変わりした

婚約者以外に好きな人ができた、婚約者と結婚する気持ちがなくなったなどの一方的な気持ちの変化は、婚約破棄の正当な理由にはなりません。

③親の反対

結婚するかどうかは、当事者同士が決める事柄です。そのため、両親が反対していたとしても、それは婚約破棄の正当な理由にはなりません。

(2)慰謝料が高額となるケース

婚約破棄を理由とする慰謝料の金額は、ケース・バイ・ケースですので、一概にはいえませんが、一般的な相場としては、30~300万円程度です。慰謝料が高額になりやすいのは、以下のような事情があるケースです。

  • 婚約するまでの交際期間が長い
  • 婚約期間が長い
  • 婚約破棄の原因が婚約者からの暴力や不貞行為など有責性の高いものだった
  • すでに婚約者との子どもを妊娠または出産していた
  • 婚約をきっかけに仕事を辞めた

(3)慰謝料を請求できないケース

以下のようなケースでは、婚約破棄に正当な理由がありますので、相手に対して、慰謝料を請求することはできません。

①自分の暴力、不貞行為、侮辱が婚約破棄の理由だった

婚約者に対して暴力を振るったり、婚約者以外の異性と不貞行為をしたりしたことを理由に婚約者から婚約破棄をされたとしても、婚約破棄には正当な理由がありますので、慰謝料請求はできません。

②失業などにより経済状況が大きく変化した

失業などにより経済状況が大きく変化してしまうと、結婚生活を送ることが難しくなることがあります。このような大きな経済状況の変化があった場合には、婚約破棄の正当な理由となりますので、慰謝料請求はできません。

3. 婚約破棄による慰謝料請求の流れ

婚約破棄による慰謝料請求は、一般的に、以下の流れで行います。

(1)相手との話し合いによる請求

婚約破棄を理由に慰謝料請求をする際には、まずは相手との話し合いでの解決を図ります。一方的に婚約破棄をされたことで、相手のことを許せない気持ちもわかりますが、話し合いにより解決をするときは、感情的にならずに冷静に話し合いをすることが大切です。

話し合いで解決ができたら、口約束だけで終わらせるのではなく、必ず合意書を作成し、書面に合意内容を残しておくようにしましょう。

(2)内容証明郵便を送付

相手が慰謝料の支払いに応じなかったり、支払い条件でもめたりするなど話し合いが長引きそうな場合には、相手に対して、慰謝料を請求する内容を記載した文書を、内容証明郵便を利用して送るようにしましょう。

なぜなら、慰謝料請求権には、不法行為であれば3年、債務不履行であれば10年の時効が定められているからです。内容証明郵便を利用して請求をすることで、時効の進行をストップすることができますので、時効期間が迫っている場合には内容証明郵便を送付しましょう。

(3)損害賠償請求訴訟を提起する

相手との話し合いで解決できないときは、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。訴訟手続きは、非常に複雑かつ専門的なものですので、弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

4. 慰謝料以外に請求できる損害賠償

婚約破棄をされた場合には、慰謝料以外にも以下のような損害を請求することができます。

(1)婚約指輪

婚約指輪を贈られた女性に婚約破棄の原因がある場合には、男性は、女性に対して、婚約指輪の返還を請求できます。婚約指輪が処分されているときは、婚約指輪の価格相当額を請求できます。

なお、男性側に婚約破棄の理由がある場合には、信義則上、上記の請求はできないとされています。

(2)結納金

結納金は、結婚することを前提として贈られるお金です。婚約破棄に至った場合には、結納金の目的を達することができませんので、結納金を贈った男性側は、女性側に対して、結納金の返還を求めることができます。

(3)結婚式などのキャンセル料

結婚式場などの予約をしていた場合には、婚約破棄によりキャンセル料が発生します。このような婚約破棄により発生したキャンセル料は、婚約破棄の原因となった側が全額負担しなければなりません。

5. 婚約破棄と内縁破棄の違い

ここからは、言葉は似ているものの意味としてまったく異なる、婚約破棄と内縁破棄の違いについて解説します。

まずは前提の知識として、「婚約」と「内縁」の違いと、婚約破棄・内縁破棄の慰謝料相場について解説します。

(1)婚約とは

「婚約」とは、将来の結婚(婚姻)を約束することを意味し、法的には「契約」に該当します。

正当な理由のない婚約破棄は契約違反であるため、慰謝料請求の対象になります。

(2)内縁とは

「内縁」とは、婚姻届は提出していないものの、実態としては夫婦同然である状態を意味します。「事実婚」と呼ばれることもあります。

内縁関係にある者は、相続や税制優遇(配偶者控除など)などを除き、多くの場面で法律上の夫婦と同じように取り扱われます。

正当な理由のない内縁破棄は、婚姻関係と同様、内縁関係にも適用される同居・協力扶助義務(民法752条)に違反するため、慰謝料請求の対象です。

(3)婚約破棄と内縁破棄の慰謝料相場

婚約破棄の慰謝料は、前述のとおり、30万円から300万円程度が標準的です。これに対して、内縁破棄の慰謝料は、100万円から300万円程度の範囲に収まることが多いです。

婚約はまだ夫婦になる前の段階であるのに対して、内縁は夫婦同然の状態です。そのため、婚約破棄よりも内縁破棄の方が、慰謝料が高額になる傾向にあります。

なお具体的な慰謝料の金額は、婚約・内縁を破棄された側の精神的苦痛の大きさによって変わります。

6. 婚約破棄と内縁破棄の慰謝料請求の要件

婚約破棄・内縁破棄を理由に慰謝料を請求するには、それぞれ以下の要件を満たす必要があります。

(1)婚約・内縁の成立

第一に婚約・内縁が成立した事実を証明しなければなりません。

婚約は契約であるため、口約束だけでも成立します。ただし、後から婚約の存在を証明するためには、後述するように、一定の証拠が求められるケースが多いです。

内縁が成立するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 互いに(夫婦として共同生活を営むという意味で)婚姻の意思を有していること
  2. 法律婚の夫婦と同等の共同生活を営んでいること

内縁の成立を証明するには、長期間にわたって同棲している事実や、周囲に夫婦として扱われている事実などを主張・立証することになります。

(2)正当な理由のない婚約・内縁の破棄

婚約・内縁を破棄した場合、正当な理由がなければ不法行為(民法709条)又は婚姻予約不履行としての債務不履行(民法415条)に該当し、相手に対して慰謝料の支払い義務を負います。

婚約破棄・内縁破棄の正当な理由として認められ得るのは、以下のような事情です。

  • 相手からDVやモラハラを受けた
  • 相手が不貞行為をした
  • 相手が生活費を全く支払おうとしない

など

基本的には、法定離婚事由(民法770条1項)に相当するような深刻な事情だけが、婚約破棄・内縁破棄の正当な理由として認められます。単なる性格の不一致などは、正当な理由として認められないのでご注意ください。

7. 慰謝料獲得の可能性を高めるためのポイント

婚約破棄・内縁破棄の慰謝料を獲得できる可能性を高めるには、以下のポイントを押さえた対応が求められます。

(1)慰謝料請求の要件を立証できる証拠を集める

慰謝料請求が訴訟に持ち込まれた場合を想定すると、慰謝料を獲得するためには、各要件を立証できる証拠を集めることが重要です。

婚約の成立を立証するには、以下のような事実に関する証拠を集めることが効果的でしょう。

【婚約の成立を立証する証拠】

  • 婚約指輪の購入
  • 結納
  • 文書による結婚の合意
  • 親族への報告
  • 同棲

など

内縁の成立を立証するには、共同生活の実態があったことを示すため、以下に挙げる証拠が効果を発揮します。

【内縁の成立を立証する証拠】

  • 住民票における内縁の記載(「夫(未届)」「妻(未届)」)
  • 生活費の分担を示すもの
  • 親族や知人による証言

など

一方、婚約破棄・内縁破棄の正当性を主張する側は、以下の事実に関する証拠を提出して対抗します。

  • DV
  • モラハラ
  • 不貞行為
  • 生活費の負担拒否

など

裁判所にご自身の主張を認めてもらえるように、できる限り充実した証拠を準備しましょう。

(2)弁護士に依頼する

婚約破棄・内縁破棄について適正な慰謝料を獲得するには、弁護士を代理人として対応するのがおすすめです。

弁護士は依頼者に代わって、事実関係や裁判例などを踏まえ、法的な根拠に基づく慰謝料請求を行ってくれます。相手との交渉や訴訟による請求手続きも、弁護士に一任できるので安心です。

婚約破棄・内縁破棄の慰謝料請求をご検討中の方は、弁護士へご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年11月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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