協議離婚とは
- (更新:2024年11月13日)
- 離婚・男女問題
1. 協議離婚とは? 調停離婚との違い
「協議離婚」とは、夫婦が話し合った末に、合意によって成立する離婚をいいます。夫婦の合意に基づいて役所に離婚届を提出すれば、協議離婚が成立します。
協議離婚のメリットは、スムーズかつ円満に離婚を成立させることができる点です。裁判所を通さないので手続きが簡潔に済みますし、最終的には合意によって離婚するため、夫婦間のしこりが残りにくい特徴があります。
なお協議離婚のほか、「調停離婚」も話し合いの末に夫婦が合意して成立する離婚です。ただし、調停離婚では調停委員が話し合いを仲介するのに対して、協議離婚は夫婦が直接話し合う点が異なります。
2. 協議離婚の進め方と注意点
協議離婚の手続きは、大まかに以下の流れで進めます。各段階において、注意すべきポイントを意識して対応しましょう。
(1)事前準備
(2)離婚条件の話し合い
(3)離婚公正証書の作成
(4)離婚届の提出
(1)事前準備
まずは協議離婚に向けて、以下のような準備を整えましょう。
(a)離婚理由の整理
なぜ離婚するのかを明確化します。配偶者を説得する際には、離婚したい理由をはっきり伝えましょう。
また、離婚の話し合いがまとまらない可能性もあるため、裁判離婚に向けて、法定離婚事由(不貞行為など)の証拠を確保しておくことが望ましいです。
(b)生活面での自立の準備
離婚後の生活を見据えて、ご自身の経済力だけで生活できるように、仕事・住居・公的支援などのめどを立てておきましょう。
(c)離婚条件の確認
金銭については慰謝料・財産分与・年金分割など、子どもについては親権・養育費・面会交流など、離婚協議において求める離婚条件の内容を整理しておきましょう。
十分な事前準備を行わないと、不利な離婚条件を受け入れてしまったり、離婚後の生活が破綻してしまったりするおそれがあるのでご注意ください。
(2)離婚条件の話し合い
配偶者との間で、離婚条件などを話し合います。離婚したい理由を明確に伝えた上で、求める離婚条件を根拠に基づいて提示しましょう。
慰謝料・財産分与・年金分割・親権・養育費・面会交流などの離婚条件は、離婚時に漏れなく取り決めるべきです。必要な離婚条件を決めないまま離婚すると、後で元夫婦間のトラブルに発展するおそれがあります。
(3)離婚公正証書の作成
配偶者との間で合意した離婚条件は必ず書面にまとめておきましょう。
公証役場で離婚公正証書を作成すれば、原本が公証役場で20年間保管されるため、紛失や改ざんなどのリスクを防げます。また、財産分与や養育費などが不払いとなった場合には、直ちに強制執行を申し立てることができます。
(4)離婚届の提出
協議離婚の話し合いがまとまったら、本籍地または夫婦いずれかの所在地の市区町村役場に離婚届を提出しましょう。離婚届の提出をもって、協議離婚が成立します。
なお、配偶者が離婚届を勝手に提出するおそれがあるときは、あらかじめ市区町村役場に不受理申出をしておけば、離婚届が受理されません。
3. 離婚協議書と離婚公正証書
(1)離婚協議書とは
離婚協議書とはどのような書面をいうのでしょうか。また、どのような方法で作成すればよいのでしょうか。以下では、離婚協議書に関する基本的事項について解説します。
①離婚協議書とはどのような書面か?
離婚協議書とは、協議離婚をする際に慰謝料、養育費、財産分与など夫婦が合意した内容を記載した書面のことをいいます。
協議離婚では、市区町村役場に離婚届を提出することで離婚が成立しますので、離婚協議書の作成は離婚成立の要件とはされていません。
しかし、離婚後に、養育費や慰謝料、財産分与などの金額や支払い方法などをめぐってトラブルになることやお金を支払ってもらえないなどのトラブルが生じることがあります。夫婦間の合意だけだと、このようなトラブルがあった場合に合意の存在および内容を証明することができず、トラブル解決に多大な労力を費やすことになります。
離婚協議書は、離婚の際の合意の存在やその内容を証明する証拠となり、離婚後のトラブルを防止するために有効な書面になりますので、離婚時には必ず作成するようにしましょう。
②離婚協議書に記載すべき事項
離婚協議書に記載すべき事項に関して、法律上の定めはありませんので、夫婦が自由に記載事項を決めて記載することができます。しかし、以下の事項については、離婚協議書に盛り込んでおくことで、離婚後のトラブルを防止することが期待できます。
- 離婚に合意をしたこと
- 親権者の指定(父親と母親のどちらを子どもの親権者にするのか)
- 養育費の支払い(金額、始期と終期、支払期限、支払い方法など)
- 慰謝料(金額、支払い方法、支払い時期など)
- 財産分与(対象財産の特定、金額、支払い方法、支払い時期など)
- 面会交流(回数、時間、場所、方法など)
- 年金分割
③離婚協議書の作成方法
離婚協議書を作成するためには、上記のような離婚条件について夫婦で話し合いを行い、お互いの意見のすり合わせを行います。お互いに離婚条件について合意ができた場合には、その内容を文書に記載していきます。記載方法などは書店やインターネット上で離婚協議書のひな形を入手することができますので、それを参考に記載するのもひとつの方法です。
しかし、離婚条件は、夫婦によってさまざまですので、ひな形の内容がすべて夫婦に当てはまるというわけではありません。不備のない内容にするためにも、記載内容については弁護士に相談をすることをおすすめします。
離婚協議書は、2通作成し、お互いに署名捺印した後、双方が所持して保管しておきます。今後トラブルが生じた場合に役に立ちますので大事に保管しておきましょう。
(2)公正証書で作成するべき理由
離婚協議書を作成する場合、公正証書で作成することをおすすめします。離婚協議書を公正証書にしておくことのメリットについてご説明します。
①公正証書とは
公正証書とは、公証役場において公証人が作成した公文書のことをいいます。公証人は、法務大臣から任命された人であり、法律の専門家ですので、夫婦が作成する私文書に比べて、内容の正確性が高い文書を作成することができます。
②公正証書にするメリット
離婚協議書を公正証書にすることによって、以下のようなメリットがあります。
-
強制執行が簡単にできる
離婚協議書を公正証書にしておき、強制執行認諾文言をいれておくことによって、将来、相手が金銭の支払いを怠った場合には、相手の財産(給料や預貯金、不動産など)を差し押さえるなどして強制的に回収することができます。
夫婦が作成した離婚協議書だと、夫婦が合意をした内容を証明する効力はありますが、それだけでは強制執行を行うことができません。離婚協議書しかない場合には、裁判を起こして、勝訴判決を得てからでないと強制執行を進めることができないのです。
公正証書にしておくことによって、不払いの場合に裁判を行う手続き的負担から解放されるだけでなく、金銭の支払い義務者に対しても支払いを行った場合には直ちに強制執行されるというプレッシャーを与えることができます。
-
内容が正確
公正証書は、専門家である公証人が内容を精査して作成するものですので、法律の知識がない当事者が作成した離婚協議書に比べて内容の正確性が担保された文書であるといえます。きちんと合意したとしても離婚協議書の内容に不備があったり、曖昧な記載であった場合には、離婚後にトラブルが生じることがありますが、公正証書であればそのようなトラブルを防ぐことが期待できます。
-
紛失、偽造のおそれがない
当事者が作成した協議離婚書だと保管方法によっては、紛失してしまうというリスクが生じますが、公正証書の原本は、公証役場に保管されますので、紛失や偽造といったリスクを回避することができます。
4. 協議離婚がまとまらない場合の対処法
協議離婚の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることが次のステップです。
離婚調停では、仲介者である調停委員に対して、ご自身の主張を説得的に伝えることが重要です。弁護士にご相談いただければ、離婚調停に臨む際の準備や、調停当日の対応を全面的にサポートいたします。
5. 協議離婚を弁護士に依頼するメリット
協議離婚の話し合いは、弁護士を代理人として行うこともできます。この場合、弁護士がご本人に代わって配偶者との交渉を行います。
協議離婚を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
①精神的負担の軽減
配偶者と直接話し合わずに済むため、精神的な負担が大きく軽減されます。
②離婚条件についてのアドバイス
過去の裁判例や実務を踏まえて、適正な離婚条件についてアドバイスを受けられます。
③離婚調停へのスムーズな移行
離婚協議がまとまらない場合には、離婚調停へスムーズに移行できます。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
離婚・男女問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?