財産分与とは
- (更新:2024年10月04日)
- 離婚・男女問題
1. 財産分与とは?
財産分与とは、離婚する夫婦が共有財産を公平に分けることをいいます(民法第768条第1項、第771条)。
結婚している夫婦は、互いに協力して生活を営みます。財産は各自が所有しますが、夫婦の協力によって得られたものと評価できるため、離婚時には公平に財産分与をすることになっています。
財産分与の割合は、夫婦の合意によって自由に決められますが、合意が調わない場合は家庭裁判所の審判・訴訟で決めます。この場合、財産分与の割合は半分ずつとなるのが原則です。
ただし、夫婦の一方が企業の経営者や芸術家であるなど、個人の才覚によって多額の資産を築き上げた場合、財産形成に対する貢献度に差がある場合には、必ずしも2分の1ではなく、貢献度を考慮して割合を決めることもあります。
なお、財産分与には以下の3つの要素が含まれると解されています。家庭裁判所が財産分与の割合・方法などを判断する際には、これら3つの要素を考慮します。
①清算的財産分与
もっとも一般的な財産分与が、清算的財産分与です。清算的財産分与では、夫婦が婚姻期間中に取得した財産を実質的な夫婦共有財産として、分配します。共働き夫婦が離婚をする場合でも、清算的財産分与として財産分与の請求をすることができます。
②扶養的財産分与
離婚することで夫婦の一方が経済的に困窮することが明らかな場合に、生計を扶助する目的で行われる財産分与の形です。
すでに存在する共有財産を分割するのではなく、困窮するであろう側の生活が安定するまでの期間、一定額の扶助金を支払うのが通例です。
とはいえ扶養的財産分与が行われるケースは非常に少なく、共働きの夫婦の場合は扶養的財産分与がなされることはほとんどないといってよいでしょう。
③慰謝料的財産分与
離婚の際には一方が「慰謝料」の支払いを求めることが多くあります。本来的には財産分与と慰謝料は全く別の性質のお金です。
ところがお金のやりとりが生じるという点では一致しますので、財産分与に慰謝料を含めることがあります。それが慰謝料的財産分与です。
不貞行為・DV・モラハラなどによって離婚の原因を作った側が、慰謝料を支払う代わりに多めに財産分与を行う考え方です。
2. 財産分与の対象となる財産・ならない財産
財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。これに対して、夫婦のうちいずれか一方に帰属すべき財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象になりません。
(1)財産分与の対象となる財産(共有財産)
婚姻中に取得した財産であれば、夫婦のうちいずれかの単独名義であっても、共有財産として財産分与の対象となります(民法第762条第2項)。
たとえば以下の財産は、婚姻中に夫婦のうちいずれか(または両方)が取得したものであれば、財産分与の対象です。
- お金:現金として手元に保管しているもの、金融機関の口座に入っている預貯金、定期預金、へそくりなど
- 不動産:一戸建て住宅、マンション、土地など
- 有価証券:株式、国債・社債など
- 動産:自動車など
- 美術品や宝飾品:絵画などの美術品や宝石などの宝飾品
- 年金:婚姻期間中に支払った個人年金など
- 退職金:すでに支払われているものに限らず、将来的に支払われる見込みのものも含む
- 帰属が不明な財産:特有財産であると証明できない財産
など
ただし、民法第756条に定める「夫婦財産契約」を締結していた場合は、この共有財産の範囲や取り扱い方を夫婦が自由に定めることができます。
民法の条文では「夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければならない」とされています。この契約を締結していれば、共有財産を財産分与の対象から外すことができるのです。
ただし、夫婦財産契約は「婚姻の届出までに」という要件があることから、婚姻前に契約を締結する必要があります。
(2)財産分与の対象とならない財産(特有財産)
夫婦のいずれか一方が婚姻前から有する財産、および婚姻中に自己の名で得た財産は、特有財産として財産分与の対象になりません(民法第762条第1項)。
たとえば以下にあげる財産は、特有財産として財産分与の対象から除かれます。
①夫婦のいずれか一方が婚姻前から有する財産
- 結婚した時点で夫婦がそれぞれ有した預貯金残高
- 結婚する前から夫婦のいずれかが所有していた不動産
など
②婚姻中に自己の名で得た財産
- 親族からの贈与によって取得した財産
- 相続によって取得した財産
③別居後に得た財産
- 別居後に稼いだ金銭
- 別居後に購入した家財道具
④日用品としての各々が使用するもの
など
ただし、結婚前に得た財産が、結婚後に配偶者の協力により増えた・価値が高まったといった場合には、分与の対象となることがあります。
共有財産については、以下のコラムもご参照ください。
3. 借金の財産分与について
借金についても、資産と同様に財産分与のルールが適用されます。すなわち夫婦のいずれかが婚姻中に負担した借金は、名義のいかんを問わず、原則として財産分与の対象です。
財産分与の対象となる借金がある場合は、資産額から借金額を控除した残額を基準に、財産分与の金額を決定します。
借金の財産分与での取り扱いについては、以下のコラムもご参照ください。
4. 【ケース別】財産分与の割合
(1)夫婦が共働きの場合
離婚における財産分与の基本である清算的財産分与では、夫婦が共有財産を形成した際の「貢献度」に応じて財産を分配することになります。
一般的には一方が専業主婦(夫)であっても貢献度は同等と考えられ、50:50の割合での分与が多い傾向です。したがって共働きの場合、共有財産を形成した貢献度は、50:50になると考えます。
5. 財産分与の方法:種類・決め方
財産分与の方法にはいくつかのパターンがあり、どのような方法で財産分与を行うかについては、協議または法的手続き(調停・訴訟・審判)を通じて決定します。
(1)財産分与の種類
財産分与の方法は、以下のパターンに大別されます。これらのパターンを組み合わせて、夫婦それぞれにとって望ましい財産分与の方法を検討しましょう。
①財産自体を分ける
(例)現金や預貯金を金額に応じて分ける、土地を分筆して分けるなど
②売却して代金を分ける
(例)不動産を売却して、売却代金を夫婦間で公平に分ける
③いずれか一方が単独で取得する
(例)不動産を夫が取得し、代わりに他の財産を妻が取得する(または、夫が妻に対して代償金を支払う)
④共有する
(例)不動産を夫と妻が共有する
(2)財産分与の決め方
財産分与の方法は、以下の手続きによって決定します。
①離婚協議
他の離婚条件と併せて、財産分与の方法を夫婦間で話し合います。合意が調ったら、その内容を公正証書にまとめて締結しましょう。万が一財産分与などが不払いとなっても、公正証書があればスムーズに強制執行を申し立てることができます。
②離婚調停
家庭裁判所において、調停委員の仲介のもとで、財産分与を含む離婚条件を話し合います。合意が調ったら、その内容が調停調書に記載され、離婚の成立とともに財産分与の内容が確定します。
③離婚裁判
離婚協議・離婚調停が不調に終わった場合は、家庭裁判所に離婚裁判(訴訟)を提起しましょう。法定離婚事由の存在を立証できれば、裁判所が離婚を認める判決を言い渡します。財産分与の方法についても、判決主文において結論が示されます。
④財産分与請求調停・審判
離婚時に財産分与の方法を決めなかった場合は、離婚後に財産分与請求調停を申し立てることができます。財産分与請求調停では、調停委員の仲介のもとで、財産分与の方法を話し合います。調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が審判を行い、財産分与の方法を決定します。
財産分与請求調停の申立期間は、離婚後2年以内に限られている点にご注意ください。
財産分与の進め方については、以下のコラムもご参照ください。
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