自筆証書遺言の書き方|作成の注意点【ひな形ダウンロード可】
- 遺産相続
1. 自筆証書遺言のひな形
一般的なケースにおける自筆証書遺言のひな形は、以下のようになります。
自筆証書遺言の書き方について、ポイントを以下で説明します。上記のひな形と併せて確認してみてください。
(1)表題
表題には特に決まりがあるわけではありませんが、遺言書だということを明確にするためにも「遺言書」という表題を記載します。
(2)相続人の氏名
相続人の氏名は、戸籍に記載の氏名を記載します。「息子」や「○○ちゃん」などの曖昧な記載はトラブルの原因になるので注意が必要です。
(3)「相続させる」または「遺贈する」
推定相続人に遺産を承継させる場合は「相続させる」という文言を使います。
他方、相続人以外の人に遺産を承継させる場合は「遺贈する」という文言を使います。
(4)相続財産の記載
相続財産は、他の遺産と混同することのないように明確に記載します。不動産であれば登記事項証明書に基づいて記載し、預貯金口座であれば金融機関名・支店名・種別・口座番号により特定します。
(5)付言事項
付言事項には、法的効力はありませんが、相続人に最後に残しておきたいメッセージなどがあれば記載するとよいでしょう。
(6)日付
遺言書を作成した日付を記載します。日付の記載は、自筆証書遺言の要件となっていますので、必ず記載してください。
(7)署名・押印
最後に遺言者自身で署名・押印をします。押印に使用する印鑑は、実印以外でも問題ありません。
2. 自筆証書遺言の作成手順と注意点
以下では、自筆証書遺言の作成手順と注意点について説明します。
(1)自筆証書遺言で決められる事項
自筆証書遺言に記載することで法的効力が生じる事項としては、おもに以下のようなものが挙げられます。
①子の認知
婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子どもがいる場合、遺言により認知することもできます。認知された子どもは、法律上の親子関係が生じるので、遺産を相続する権利を取得します。
②遺贈
相続人以外の第三者に遺産を承継させるためには、遺贈に関する事項を記載します。
ただし、受遺者が遺言者よりも先に亡くなると、遺贈が無効になってしまうので注意が必要です。そのような場合に備えて、「遺言者よりも先に受遺者が亡くなった場合、受遺者の相続人に遺贈する」などの記載をしておくとよいでしょう。
③相続分の指定または指定の委託
相続分の指定とは、相続人の相続割合を定めることをいいます。法定相続分とは異なる割合で相続させる場合には、相続分の指定を行います。
ただし、相続人には、法律上遺留分が保障されていることから、遺留分を侵害するような内容だとトラブルが生じる可能性もあるので注意が必要です。
④遺産分割の禁止
遺言者は、5年間に限り遺産分割を禁止することも可能です。
相続争いを防止する観点からは有効な方法ですが、その間は相続財産が共有状態のままになってしまうため、自由な利用や処分ができません。
⑤遺言執行者
遺言者は、遺言で遺言執行者を指定できます。遺言執行者の指定は、必須事項ではありませんが、スムーズな相続手続きを実現するためにもできる限り指定しておいた方がよいでしょう。
ただし、法的知識や経験がない方を指定すると手続きが滞る可能性もあるため、弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
(2)自筆証書遺言の作成手順
自筆証書遺言は、以下のような手順で作成します。
①財産を把握する
まずは、どのような財産があるのかをすべて把握する必要があります。その際には、以下のような資料を準備し、財産の一覧をまとめた財産目録を作成するとよいでしょう。
- 不動産登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 預貯金通帳
- 生命保険証書
- 有価証券の残高証明書
②遺言作成に必要なものを準備
自筆証書遺言の作成にあたっては、以下のようなものが必要になります。
- 用紙
- 筆記用具
- 印鑑
- 封筒
用紙や筆記用具は、特に指定があるわけではありませんが、チラシの裏やメモ書きでは、遺言が無効だと主張されるリスクがあるので、遺言書専用の用紙・封筒セットを利用するとよいでしょう。
また、鉛筆や消えるボールペンだと偽造や変造のリスクがあるので、消えないボールペンやサインペンなどを利用しましょう。
③自筆証書遺言を作成する
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し、押印するという要件はありますが、それ以外は基本的には自由に記載できます。
ただし、記載内容が曖昧で不明確だと、希望する遺産相続を実現できない可能性もあるため、一義的に明確な内容になるようにしてください。
なお、遺言書を作成する際に、書き間違いをしてしまったときは、その場所がわかるように示したうえで訂正した旨を付記して署名し、訂正した箇所に押印をしなければなりません。正しい訂正方法でなければ、無効になるリスクがあるので、訂正ではなく書き直しをした方が安全でしょう。
④自筆証書遺言の保管
完成した自筆証書遺言は封筒に入れ、封筒の表側に「遺言書」と記載し、裏側に日付と名前を記入し、封印しておきます。自筆証書遺言は、基本的には遺言者自身で保管しなければなりません。そのため、自分の死後、相続人に見つけてもらいやすい場所に保管しておきましょう。
(3)自筆証書遺言を作成するときの注意点
自筆証書遺言を作成する際には、以下の点に注意が必要です。
①財産目録はパソコンなどでの作成が可能
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書する必要がありますが、財産目録については、パソコンで作成することも、通帳のコピーなどを用いることもできます。
財産が多岐にわたる場合、すべての自書するのは負担が大きいため、パソコンなどで作成した財産目録を利用するとよいでしょう。
②曖昧な表現は避ける
複数の解釈の余地があるような書き方だと、誰がどのような遺産を相続するかが特定できず、トラブルが生じる可能性があります。そのため、相続内容は一義的で明確な内容にしなければなりません。
③夫婦共同の遺言は作成できない
民法では、2人以上の人が共同で遺言を作成することを禁止しています。夫婦で相続対策として遺言を作成する場合には、1通の遺言書に2人分記載するのではなく、夫婦それぞれ単独の遺言書を作成するようにしましょう。
④血縁者であっても代筆はできない
自筆証書遺言は、遺言者自身で自書するのが要件ですので、たとえ血縁者であったとしても遺言者に代わって代筆をすることはできません。
自筆証書遺言をパソコンで作成するとき、気をつけるべきことは?
3. 自筆証書遺言作成後の保管方法
自筆証書遺言作成後は、基本手には遺言者自身で遺言の保管を行う必要がありますが、遺言書保管制度を利用すれば、法務局で遺言を保管してもらうことも可能です。
(1)「遺言書保管制度」を活用しましょう
遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局において保管してくれる制度です。
自筆証書遺言は、遺言者本人だけで作成でき、手軽で自由度の高いものなので、相続争いを防止するために有効な手段といえます。
しかし、遺言者の死後、遺言書が相続人に発見してもらえない可能性や、改ざんされてしまうおそれがあるなどデメリットも指摘されていました。
このようなデメリットを解消し、自筆証書遺言をより利用しやすくするために、令和2年7月の法改正により新たに導入されたのが遺言書保管制度です。遺言の種類として自筆証書遺言を選択する場合は、遺言書保管制度を活用するようにしましょう。
(2)遺言書保管制度用の様式
遺言書保管制度を利用する場合、一般的な自筆証書遺言の要件だけでなく、以下のような様式を満たす必要があります。
- 用紙のサイズはA4
- 記載した文字が読みづらくなるような彩色や模様がないもの(一般的な罫線は可)
- 最低限、上部5㎜、下部10㎜、左20㎜、右5㎜の余白を必ず確保する
- 用紙の片面のみに記載する
- 各ページにページ番号を記載する
- 複数ページある場合でもホチキスなどでとじない
(3)自筆証書遺言を開封する場合は「検認」が必要
自筆証書遺言を発見した場合、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。検認手続きは、遺言書の有効性を判断するものではありませんが、検認手続きを経ていないと不動産の名義変更や預貯金の払い戻しといった相続手続きを行うことができません。
ただし、遺言書保管制度を利用していれば、検認が不要になります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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