遺言書を見つけたらどうする? 相続人向け手続きガイド

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遺言書を見つけたらどうする? 相続人向け手続きガイド

被相続人の自宅から遺言書が発見されたとしても、すぐに開封してはいけません。遺言書の種類によっては、家庭裁判所での検認手続きが必要になるため、まずは遺言書を確認して、検認の必要な遺言書であるかを見極めることが大切です。

本コラムでは、遺言書発見後の手続きについて、わかりやすく解説します。

1. 遺言書を見つけたら相続人がやること

遺言書を見つけた場合、相続人としてはどのような対応が必要になるのでしょうか。

(1)遺言書を見つけても勝手に封を開けてはいけない

被相続人の遺言書が見つかったとしても、勝手に封を開けてはいけません。まずは、以下のような対応を検討するようにしましょう。

①未開封のまま遺言書の種類を見分ける

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

発見された遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言であった場合には、家庭裁判所での検認手続きが必要になるので勝手に開けてはいけません。他方、公正証書遺言であれば検認手続きは不要であるため、直ちに開封が可能です。

このように発見された遺言書の種類によって対応方法が異なります。まずは遺言書の種類を見極めることが重要です。各遺言の見分け方のポイントは、以下のとおりです。

自筆証書遺言 ・表題は「遺言書」
・署名は被相続人のみ
・中身は手書き
公正証書遺言 ・表題は「遺言公正証書」
・公証役場の名称が記載されている可能性あり
・中身はワープロによる印字
秘密証書遺言 ・表題は「遺言書」
・署名は公証人、遺言者、証人2人の合計4人分
・中身は手書き、またはワープロによる印字

②遺言書を勝手に開封したらどうなる?

遺言書を勝手に開封したとしても、そのことだけで遺言の効力が無効になるわけではありません。

しかし、検認が必要な自筆証書遺言・秘密証書遺言を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります。また、勝手に開封したことで遺言書の偽造や変造を疑われる可能性もあるので注意が必要です。

(2)公正証書遺言でない場合は「検認」をする

発見された遺言が公正証書遺言でない場合は、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。

検認とは、相続人に対して遺言の存在やその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、日付・署名の有無や内容、加除訂正の状態など検認日時点の遺言の内容を明確にし、遺言書の偽造および変造を防止するための手続きです。

なお、検認は、遺言書の有効性を判断する手続きではありません。

遺言書を無効にしない! 正しい保管場所と検認の知識

(3)遺言書の開封方法

遺言書が公正証書遺言であれば検認手続きは不要なので、その場で開封しても問題ありません。

これに対して、遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言だった場合、家庭裁判所での検認手続きが必要になります。その場では絶対に開封せずに大切に保管し、検認期日で開封するようにしましょう。

遺言書が相続人により勝手に開封されてしまうと、偽造・変造、破棄、隠匿のリスクがあるので、遺言者としては、公正証書遺言で作成するのが安心です。

どうしても自筆証書遺言を利用したいときは、封筒を二重にして、一番外側の封筒に「裁判所での検認まで決して開けてはならない」といったメッセージを記載したメモを入れておくとよいでしょう。

(4)遺言書が2通以上見つかった場合

遺言書が2通以上見つかり、内容に矛盾がある場合、遺言書が作成された日付を基準として、一番後に作成された遺言書が優先されます。

ただし、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、開封してみなければどちらが後に作成された遺言であるか判断できないので、2通とも家庭裁判所での検認手続きを経る必要があります。

2. 遺言書の検認後の流れ

以下では、遺言書の検認後の流れについて説明します。

(1)遺言書が無効である可能性も

検認は、遺言書の有効性を判断する手続きではないので、検認手続きをしたとしても遺言書の形式や内容によっては遺言が無効になる可能性があります。

  • 遺言書に日付や氏名が記載されていなかった
  • 遺言書に押印がなかった
  • 遺言書の筆跡が本人のものではなかった
  • 遺言書を作成した時点で本人が認知症になっていた

このように遺言が無効になる可能性がある場合には、まずは相続人同士で話し合って、遺言を無効とすることで問題ないかを確認します。

遺言を無効にすることに反対する相続人がいる場合、そのままでは遺産分割の手続きを進められないので、裁判所に「遺言無効確認の訴え」を起こす必要があります。

(2)検認後の流れ

遺言が有効なものであった場合、検認終了後は、以下のような流れで相続手続きを進めていきます。

①遺言書のすべての相続財産が記載されているかを確認

遺言書の検認が終わったら、遺言書にすべての相続財産が記載されているかを確認してください。

相続財産の記載に漏れがある場合には、遺言だけでは相続手続きを進めることができないので、漏れた遺産を対象として遺産分割協議を行う必要があります。

②遺言執行者の有無を確認

遺言者は、遺言内容を実現する役割を担う遺言執行者を指定できます。

遺言で遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者が相続人に代わって遺言執行の手続きを進めていきますので、遺言執行者の有無を確認するようにしましょう。

③【遺言執行者がいる場合】遺言執行者による相続手続き

遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者により相続手続きが行われます。

遺言執行者は、相続財産調査を実施し、その結果をまとめた財産目録を作成して相続人に交付します。相続財産の種類によって必要な手続きは異なりますが、代表的なものを挙げると以下のようになります。

  • 不動産……法務局で相続登記
  • 預貯金……金融機関で払い戻し手続き
  • 株式……証券会社で名義変更の手続き
  • 自動車……運輸支局で名義変更の手続き

④【遺言執行者がいない場合】各相続人による相続手続き

遺言執行者が指定されていない場合は、各相続人が上記の相続手続きを行わなければなりません。相続手続きをする際には、自筆証書遺言の場合、検認済み証明書が必要になりますので忘れずに持参してください。

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3. 相続トラブル回避のためのポイント

相続トラブルを回避するためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。

(1)相続人同士のコミュニケーションが重要

相続人同士が疎遠になっていると、相続が開始したときの話し合いもスムーズに進めることができません。日常的に相続人同士のコミュニケーションを密にしておくことで、相続時の相続争いを減らすことにつながります。

(2)無理せず専門家の活用を検討しよう

遺産相続にあたっては、法的知識が必要になるため、不正確な知識で対応してしまうと相続人同士でトラブルが生じる原因になりかねません。

自分たちで対応するのが難しいと感じるときは、無理せずに専門家の活用を検討するのがおすすめです。専門家を活用すれば、円滑かつ円満に遺産相続の手続きを進めることができるでしょう。

(3)遺言書の見直しと更新が大切

相続対策として早めに遺言書の作成に取り掛かった人は、時の経過とともに相続財産の構成や配分方法に変化が生じることがあります。

このような場合、そのままの遺言では、希望どおりの遺産相続を実現することができません。そのため、遺言者は、遺言を作成後も状況の変化に応じて遺言書の見直しや更新をすることが大切です。

(4)遺言書発見後の行動チェックリスト

遺言書を発見すると「何から手を付ければよいかわからない」という方も多いと思います。そのような場合には、以下のチェックリストを活用して、その後の行動を決めていくとよいでしょう。

  • 落ち着いて遺言書を保管する
  • 遺言書の種類に応じた対応をする
  • 必要書類を準備する
  • 相続人や相続財産を確認する
  • 相続税の申告と納付を行う
  • 遺産分割協議を行う
  • 専門家に相談する
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  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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