親が遺言書を書いてくれない|リスクともめないための対処法
- 遺産相続
1. 親はなぜ遺言書を書きたがらない?
親が遺言書を書きたがらない理由には、どのようなことがあるのでしょうか。また、遺言書を書かないことで生じるリスクについて、以下で説明します。
(1)親が遺言書を書きたがらない主な理由
親が遺言書を書きたがらない理由はさまざまですが、おもな理由としては以下のことが挙げられます。
①遺言書を書くのが面倒くさいと感じている
遺言書を作成するにはそれなりに時間と労力が必要になります。公正証書遺言になれば、2人の証人の手配も必要になり、さらに負担が大きくなります。
そのため、遺言書の作成が面倒くさいと感じている人は遺言書を書きたがらないといえるでしょう。
②遺言書はまだ必要ないと考えている
遺言書というと高齢者が亡くなる直前に作成するものだというイメージを持たれている方も少なくありません。
遺言書の作成のタイミングには特に決まりがなく、早ければ早いほど有効な対策となりますが、誤ったイメージを持たれている方だと、まだ遺言書は必要ないという理由から遺言書を書きたがらないといえるでしょう。
③相続トラブルは生じないだろうと考えている
遺言書を作成するおもな理由は、自分が亡くなった後の相続争いを防ぐという点にあります。家族が円満な家庭では、相続が発生しても相続争いは生じないから大丈夫だろうという理由で遺言書を書きたがらないでしょう。
(2)遺言書を書かないことで発生するリスク
遺言書がないと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
①行方不明の相続人がいて遺産分割協議が進められない
遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議により遺産の分割方法などを決めていきます。遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立させることはできないため、行方不明の相続人がいる場合、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。
このような場合には、「不在者財産管理人の選任」という特別な手続きが必要になります。
②相続人に認知症の人がいて遺産分割協議が進められない
相続人に認知症の人がいると、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。遺産分割協議を進めるためには、「成年後見人の選任」という特別な手続きが必要になります。
③寄与分に関するトラブルが生じる
生前に被相続人の介護などに尽力した相続人がいる場合、寄与分を主張することで本来の相続分よりも多くの遺産をもらうことができます。
しかし、寄与分を考慮すると他の相続人の相続分が減ることになるため、簡単には認めてもらえず、遺産分割調停や審判にまで発展することもあります。
④特別受益に関するトラブルが生じる
生前に被相続人から多額の贈与を受けた相続人がいる場合には、「特別受益の持ち戻し」により、公平な遺産分割を実現できます。
しかし、寄与分と同様に特別受益も争いになりやすい項目のひとつであるため、相続人同士の話し合いで解決できないときは遺産分割調停や審判にまで発展することがあります。
2. 親に遺言書を書いてもらうためのアプローチ方法
遺言書を書きたがらない親に遺言書を書いてもらうには、以下のようなアプローチが考えられます。
(1)話し合いの場を設ける
遺言書の作成は、相続対策として有効であるにもかかわらず、遺言制度に対する誤解から遺言書を書きたがらない人もいます。そのような場合には、まずは親と話し合いの場を設けて、遺言書への誤解を解くことが重要です。
親に遺言書の作成を拒否されないためにも、以下のような点に気を付けて話し合いを進めるようにしましょう。
- 遺言書を書いた後も自分の財産は自由に使っても問題ないことを伝える
- 遺言書の内容を子どもらに伝える必要はないことを説明する
- 財産が欲しいのではなく相続争いを防ぎたいことを伝える
(2)遺言書作成の必要性とメリットを伝える
遺言書を作成する必要性とメリットを理解すれば、それまで遺言書の作成に消極的だった親も遺言書に興味を抱く可能性があります。そのため、親に対して以下のような遺言書のメリットを伝えてあげるとよいでしょう。
- 相続人同士の相続争いを防ぐことができる
- 遺産分割協議が不要になるため、相続手続きが軽減される
- 自分の希望どおりの遺産相続を実現できる
- 相続人以外の第三者にも遺産を承継させることができる
(3)専門家の助けを借りる
遺言書の必要性やメリットをうまく伝えることができないという場合には、専門家である弁護士の助けを借りるのも有効な手段です。
親と一緒に弁護士のもとに相談にいけば、弁護士が遺言書の必要性やメリットを法的観点からわかりやすく説明してくれるので、親も納得してくれる可能性が高くなります。
また、実際に遺言書を作成する際にも弁護士に依頼することで、有効な遺言書を確実に残すことができます。遺言書を作成する親の負担も軽減されるため、積極的に遺言書の作成を検討してくれるでしょう。
3. 遺言書作成で親ともめることを避けるための対策
遺言書の作成に関して親ともめることを避けるためにも、以下のような対策を検討しましょう。
(1)家族間のコミュニケーションを強化する
親との関係性が希薄な状態でいきなり遺言書を作成する話を持ち出しても、不信感を抱かれて素直に応じてくれません。このような事態を避けるためにも、家族間のコミュニケーションを強化し、気軽に遺言作成の話題を出せるような雰囲気づくりをすることが大切です。
(2)財産目録の作成
自筆証書遺言を作成する場合、遺言書の全文、日付、氏名を自書しなければなりませんが、財産目録に関してはパソコンでの作成が認められています。遺言書のすべてを自力で作成しなければならないのは、親にとっては大きな負担となりますので、財産目録の作成については協力してあげるとよいでしょう。
(3)生前贈与の検討
相続対策として有効な手段は、遺言書以外にも生前贈与という方法があります。
遺言書の必要性やメリットを説明しても遺言書の作成に乗り気にならない親に対しては、生前贈与という方法も有効な相続対策になることを説明してあげるとよいでしょう。
年間110万円までの贈与であれば、贈与税の負担なく財産の移転が可能になるので、将来の相続税対策としても有効な手段となります。
(4)遺言能力に注意
遺言書を作成するにあたっては、親に遺言能力がある必要があります。
遺言能力とは、遺言の内容や遺言から生じる効果を理解できる能力のことをいいます。高齢の親が遺言書を作成する際に特に問題になるのが、認知症による遺言能力の欠如です。
認知症の程度によっては、遺言能力がないと判断される可能性があり、そのような状態で遺言書を作成したとしても無効になってしまうリスクがあります。 そのため、相続対策として遺言書の作成をお考えの方は、早めに行動することが大切です。
4. ご両親と一緒に専門家に相談するのがおすすめ
親に遺言書を作成してほしいという場合には、親と一緒に弁護士に相談するのがおすすめです。
親と一緒に弁護士に相談すれば、弁護士から親に対して遺言の必要性やメリットなどをわかりやすく説明することで、親も遺言作成に積極的になってくれる可能性があります。
また、遺言書の作成をするとなった場合も弁護士がしっかりとサポートしてくれるため、親の負担を軽減できるとともに有効な遺言書を確実に残すことができます。
自分で親を説得するのが難しいと感じるときは、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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