暦年贈与とは? 相続税対策での活用メリットと注意点

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暦年贈与とは? 相続税対策での活用メリットと注意点

「暦年贈与」は、幅広い人が利用できる相続税対策の一つです。
このページでは、暦年贈与を活用した相続税対策について解説します。

1. 暦年贈与による相続税の節税メリット

暦年贈与を活用すれば、相続税の負担を軽減できることがあります。

(1)暦年贈与とは|贈与税の基礎控除を利用した節税対策

「暦年贈与」とは、贈与税の基礎控除を利用した相続税の節税対策です。

贈与税の原則的な課税方式である「暦年課税」においては、毎年110万円の基礎控除が設けられています。
1年間に受けた贈与財産の金額が110万円以内であれば、贈与税は課されません。贈与を受けた額が110万円を超える場合には、超えた部分に対してのみ贈与税が課されます。

暦年課税の基礎控除を利用して、毎年少しずつ財産を生前贈与するのが「暦年贈与」です。長期間にわたって暦年贈与を行えば、非課税または低額の課税で財産を贈与しつつ、相続税の額を減らすことができます。

なお、110万円の基礎控除は、贈与を受けた額に対して適用されます。贈与する側は、たくさんの人に対して贈与をしても構いません。
たとえば10人に対して110万円ずつ、計1100万円の贈与をしたとしても、各受贈者が受けた贈与の額が年110万円以内であれば、贈与税は非課税となります。

生前贈与については、以下のページをご参照ください。

生前贈与とは? 相続税対策におけるメリットと注意点

(2)暦年贈与は「相続時精算課税制度」を選択したら利用できない

贈与税の課税方式には、暦年課税のほかに「相続時精算課税制度」があります。

「相続時精算課税制度」とは、一定の金額までの生前贈与について贈与税を課さない一方で、相続発生時にまとめて相続税を課す制度です。
60歳以上の直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の者が受ける贈与に限り、税務署長への届出によって相続時精算課税を選択できます。

相続時精算課税を選択する旨の届出を行ったら、届出に係る贈与者から受ける贈与を暦年課税に戻すことはできません。そのため、暦年課税の基礎控除を利用した暦年贈与はできなくなります。

ただし2024年以降は、相続時精算課税が適用される贈与についても年110万円の基礎控除が新設されました。相続時精算課税の基礎控除を活用すれば、暦年贈与と同等の節税効果が期待できます。

相続時精算課税制度については、以下のページをご参照ください。

相続時精算課税制度とは? 法改正でこれから相続税対策の「主流」に

(3)暦年贈与を利用した節税に当たっては「損益分岐点」の見極めが重要

暦年贈与は、必ずしも基礎控除の範囲内に収めなければならないとは限りません。
基礎控除額を超えたとしても、相続税を負担するよりは、生前贈与をした方が有利になることもあります。

ただし、生前贈与が多額になればなるほど、贈与税の負担が相続税よりも重くなる傾向にある点に注意が必要です。

暦年贈与によって効果的に相続税対策を行うには、贈与税と相続税の「損益分岐点」を見極めることがポイントになります。税理士のアドバイスを受けながら、暦年贈与の内容や金額などを慎重に検討しましょう。

2. 暦年贈与による相続税対策の注意点

暦年贈与を利用して相続税対策を行う際には、以下の各点に注意しましょう。

(1)最後の7年分には相続税が課される

暦年課税の場合、相続発生前7年間に受けた贈与は、相続税の課税対象となります(=生前贈与加算)。年110万円の基礎控除の範囲内で受けた贈与についても、最後の7年分には相続税が課されてしまうので注意が必要です。

これに対して、相続時精算課税制度を選んで贈与を行う場合については、年110万円の基礎控除を受けられ、かつ、生前贈与加算がありません。
父母や祖父母などから受ける贈与について、生前贈与加算を回避したい場合は、相続時精算課税制度の利用を検討しましょう。

(2)「定期贈与」はNG

「定期贈与」とは、毎年一定額の金銭を贈与する旨を合意した上で、その合意に基づいて行われる一連の贈与です。

定期贈与がなされた場合、合意の時点で全額の贈与が行われたものとみなして、贈与税が課税されます。
基礎控除の範囲内で毎年110万円ずつ暦年贈与をしても、それらが一連の定期贈与であると判断されれば、2年目以降の基礎控除を受けられないので要注意です。

暦年贈与を定期贈与と判断されないようにするためには、毎年贈与契約書を作成した上で、契約書の内容に沿って振り込みをするなどの対策を講じましょう。

(3)「名義預金」はNG

「名義預金」とは、口座名義人と実質的な権利者が異なる預貯金です。

特に親が子どもに対して行う暦年贈与では、振込先口座を完全に親が管理していることが問題視され、子ども名義の預貯金であっても親の「名義預金」と判断されてしまうことがよくあります。
暦年贈与が名義預金と判断されると、贈与者が亡くなった際に、贈与額すべてが相続財産とみなされ、相続税の課税対象となってしまいます。

名義預金としての課税を避けるため、暦年贈与によって金銭を贈与する際には、贈与を受ける人が管理する口座に振り込みましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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