相続税の配偶者控除とは? 「二次相続」も見据えた相続税対策が必要

  • 遺産相続
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
相続税の配偶者控除とは? 「二次相続」も見据えた相続税対策が必要

相続税には「配偶者控除」が設けられており、被相続人の配偶者が負担する相続税額は大幅に軽減されます。
ただし、配偶者控除は「相続税の先送り」に過ぎないので、二次相続も見据えた計画的・総合的な相続税対策を行いましょう。
このページでは、相続税の配偶者控除について解説します。

1. 相続税の「配偶者控除」とは?概要と手続きを解説

相続税の「配偶者控除(配偶者の税額の軽減)」とは、亡くなった被相続人の配偶者が取得した相続財産などについて、相続税の負担を軽減する制度です。

(1)相続税の配偶者控除とは

配偶者控除の適用を受けると、被相続人の配偶者が取得する遺産(課税対象財産)については、以下のいずれか高い金額まで非課税となります。

  1. 1億6000万円
  2. 配偶者の法定相続分相当額

法定相続分とは|遺産分割の割合と計算方法・相続順位を解説

相続税の配偶者控除を受けられるのは、法律婚の配偶者のみです。婚姻届を提出していない内縁のパートナーは、配偶者控除を受けることができません。

(2)配偶者控除を受けるには相続税の申告が必要|期限は10か月以内

配偶者控除を受けるためには、相続税額が0円となる場合を含めて、相続税申告を行う必要があります。

相続税の申告期限は、相続の発生を知った日の翌日から起算して10か月以内です。それまでにできる限り遺産分割を完了し、相続税の申告・納付を済ませましょう。
相続税の申告期限までに遺産分割が完了しない場合は、暫定的に法定相続分に基づく申告を行い、後に「更正の請求」や「修正申告」によって税額を修正します。

遺産分割協議と相続税申告については、以下のページをご参照ください。

遺産分割協議とは|進め方やうまく進まない場合の対処法を解説

相続税の申告が必要なケース|申告の流れと必要書類、申告書の書き方

2. 配偶者控除の活用時には「二次相続」に注意|計画的に相続税対策を

配偶者控除を活用して、配偶者が無税で被相続人の遺産を相続しても、その後に配偶者が亡くなった際には、子世代が多額の相続税を負担するケースが多いです。
子世代による「二次相続」も見据えた上で、計画的な相続税対策を行いましょう。

(1)配偶者控除は「相続税の先送り」に過ぎない

配偶者控除は、相続税の負担を先送りする制度に過ぎません。

配偶者控除の適用によって、たとえば母親が父親の遺産をすべて無税で相続しても、母親が亡くなって子どもが遺産を相続する際には、相続税が課されます。
むしろ、子どもが父親の遺産を一切相続していない分、母親の相続において課される相続税の負担はかなり重くなってしまう点に注意が必要です。

(2)配偶者控除をフルに利用しない方がよいケースもある

配偶者控除をフルに利用するよりも、二次相続を見据えて相続分を調整した方が、結果的に相続税の負担を抑えられることがあります。

たとえば、父Xが亡くなった相続において、相続税の課税対象財産が1億円分あり、法定相続人が母Aと子Bの2人であるとします。

課税対象財産を母Aがすべて相続すれば、配偶者控除によって相続税は一切かかりません。 しかし、母Aが亡くなって子Bがその遺産を相続する際には、1億円分に母Aが元々持っていた財産を加えた額に対して、一挙に相続税が課されます。
仮に母Aの相続における課税対象財産が総額1億5000万円だとすると、子Bに課される相続税の額は「約4300万円」です。

これに対して、Xの遺産(課税対象財産1億円分)を、母Aと子Bが半分ずつ分け合ったとします。
母Aが相続した遺産については、配偶者控除によって相続税がかかりません。一方、子Bが相続した遺産については「約800万円」の相続税がかかります。

その後、母Aが亡くなって子Bがその遺産を相続する際には、すでにBがXから相続した財産については相続税が課されないので、1つ目のケースに比べて相続税の負担が少なくなります。
仮に母Aの相続における課税対象財産が総額1億円だとすると、子Bに課される相続税の額は「約2300万円」です。

父Xの相続において配偶者控除をフルに利用した1つ目のケースでは、子Bが「約4300万円」の相続税を納付することになりました。
これに対して、配偶者控除をフルに利用せず、子Bも父Xの遺産を半分相続した2つ目のケースでは、子Bが納付する相続税の額はトータルで「約3100万円」でした。

なお、上記の計算は単純化したもので、実際の相続税の計算方法はさらに複雑です。

相続税の計算方法については、以下のページをご参照ください。

相続税の税率は? 相続税の計算方法と流れを分かりやすく解説

(3)二次相続を見据えた総合的な相続税対策を行うべき

上記の計算例のように、配偶者控除をフルに利用すると、二次相続を含めた税負担がかえって重くなってしまうことがある点に注意が必要です。

相続税の配偶者控除を利用する際には、子世代による二次相続も見据えた上で、トータルでの税負担を軽減できる総合的な相続税対策を行いましょう。
税理士や弁護士に相談しながら適切にシミュレーションを行い、効率よい遺産配分を決めた上で、その内容を記載した遺言書を作成することをおすすめします。

遺言については、以下のページをご参照ください。

遺言とは|必要なケースや無効にならい書き方

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

遺産相続に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す