【誹謗中傷】慰謝料相場はいくら? 請求の流れと注意点を解説
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インターネット上で誹謗中傷の書き込みをされると、被害者の方は多大な精神的苦痛を被ります。そのような場合は、加害者に対して慰謝料を請求できます。もっとも、誹謗中傷の慰謝料は、投稿内容によって権利侵害の内容や程度が大きく異なり、慰謝料相場もそれに伴い変動します。
誹謗中傷の被害に遭ったときに、適切な慰謝料を請求するためにも誹謗中傷の慰謝料相場と慰謝料請求の流れを理解しておきましょう。
本コラムでは、インターネット上の誹謗中傷で請求できる慰謝料相場と請求の流れについて解説します。
1. 誹謗中傷で慰謝料が認められるには
インターネット上の誹謗中傷で慰謝料が認められるには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。以下では、誹謗中傷で慰謝料が認められる要件と慰謝料を請求できるケースについて説明します。
(1) 誹謗中傷で慰謝料が認められる要件
インターネット上で誹謗中傷をされた場合、民法709条の不法行為を根拠として慰謝料請求をしていくことになります。不法行為が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 違法な権利侵害があること
- 故意または過失があること
- 損害が発生していること
- 加害行為と損害との間に因果関係があること
特に、誹謗中傷の事案では、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの権利侵害があったことが要件になります。単に精神的苦痛を被ったというだけでなく、誹謗中傷により権利が侵害されたということを主張することが重要になります。
(2) 慰謝料請求が認められるケース
インターネット上での誹謗中傷で慰謝料請求が認められるケースとしては、以下のケースが考えられます。
①名誉毀損
名誉毀損とは、公然と事実を摘示して他人の社会的評価を低下させるような行為をすることをいいます。名誉毀損に該当し得るものとしては、以下のものが考えられます。
- ○○は同じ職場の○○と不倫している
- ○○は過去に性犯罪によるトラブルで逮捕されたことがある
②侮辱
侮辱とは、事実を摘示することなく公然と他人を侮辱する行為をいいます。名誉毀損と侮辱は、事実の摘示の有無により区別されます。侮辱に該当し得るものとしては、以下のものが考えられます。
- ○○はアホだ
- ○○はうざいから死んだ方がよい
③プライバシー侵害
プライバシー侵害とは、本人が公にすることを望まない個人情報や私生活を無断で公表することをいいます。プライバシー侵害に該当し得るものとしては、以下のものが考えられます。
- 掲示板などに他人の氏名、住所、連絡先などを書き込む
- 他人の運転免許証などの画像をSNSで公開する
2. 誹謗中傷の慰謝料相場と高額になるケース
誹謗中傷の慰謝料相場と、慰謝料が高額になるケースを以下でくわしく説明します。
(1) 名誉毀損の場合の慰謝料相場
インターネット上の誹謗中傷が名誉毀損に該当する場合の慰謝料相場は、以下のとおりです。
被害者が個人の場合……10~50万円程度
被害者が企業・事業主の場合……50~100万円程度
名誉毀損は、内容が真実であるかどうかは問われませんが、誹謗中傷の内容が虚偽であった場合には、慰謝料が高額になる傾向があります。
(2) 侮辱の場合の慰謝料相場
インターネット上の誹謗中傷が侮辱に該当する場合の慰謝料相場は、1~10万円程度になります。事実の摘示を伴わない侮辱は、名誉毀損に比べると権利侵害の程度が低いと考えられているため、誹謗中傷の慰謝料の中でも低い相場となっています。もっとも、侮辱の内容によっては慰謝料が増額される可能性もあります。
(3) プライバシー侵害の場合の慰謝料相場
インターネット上の誹謗中傷がプライバシー侵害に該当する場合の慰謝料相場は、10~50万円程度になります。プライバシー侵害の慰謝料も名誉毀損や侮辱と同様に、公開された内容によって慰謝料額は変動します。本人が知られたくない情報であればあるほど、慰謝料は高額になる傾向があります。
(4) 誹謗中傷の慰謝料が高額になるケース
誹謗中傷の慰謝料の金額を決める際には、おもに以下の要素を総合考慮して判断することになります。
- 侵害された権利の内容
- 投稿内容の悪質性
- 投稿手段や方法の悪質性
- 投稿の目的
- 被害者に生じた不利益の内容、程度
- 被害者の地位や職業
- 被害回復の可能性
これらの要素を考慮して、悪質な誹謗中傷だと評価されれば、上記の誹謗中傷の相場を上回る慰謝料を請求することも可能です。誹謗中傷の慰謝料の金額は、具体的な事案によって大きく変動しますので、正確な金額を把握するためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
3. 誹謗中傷の慰謝料請求の流れ
誹謗中傷の慰謝料を請求する場合、以下のような流れで請求します。
(1) 証拠を集めて保存しておく
インターネット上で誹謗中傷をされたときは、誹謗中傷の投稿や書き込みを証拠に残しておくことが大切です。誹謗中傷の投稿のスクリーンショットや、当該ページを印刷するなどして保存しておくとよいでしょう。証拠を保存することは、慰謝料請求だけではなく、投稿者を特定するための発信者情報開示請求の際にも重要になります。
(2) サイトの管理会社へIPアドレスの開示請求をする
投稿者に対して慰謝料請求するには、投稿者を特定する必要があります。投稿者を特定するには、まずはサイト管理会社に対してIPアドレスの開示請求を行います。サイト管理会社が任意に開示に応じてくれないときは、裁判所に発信者情報開示請求の仮処分の申し立てを行います。
(3) プロバイダへの情報開示請求および保存請求をする
サイト管理者から開示されたIPアドレス・タイムスタンプにより、投稿者が誹謗中傷の投稿の際に利用したプロバイダを特定し、当該プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起します。プロバイダが保有している情報は3か月程度で消えてしまうため、訴訟中に情報が消去されてしまうのを防ぐために、アクセスログの保存請求も一緒に行います。
(4) 誹謗中傷の投稿者に慰謝料請求をする
プロバイダから投稿者の氏名・住所などが開示されたら、誹謗中傷の投稿者に対して、慰謝料請求を行います。慰謝料請求は、まずは交渉による方法で行います。相手が交渉に応じないときは、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。
4. 誹謗中傷の慰謝料請求における注意点
誹謗中傷の慰謝料請求をする際には、以下の点に注意が必要です。
(1) IPアドレスには保存期間がある
IPアドレスには保存期間があります。サーバー管理者などにより期間が異なりますが、一般的に投稿から3~6か月程度といわれています。IPアドレスの保存期間が過ぎてしまうと、投稿者の特定に必要な情報が失われてしまい、慰謝料請求ができなくなってしまいます。そのため、誹謗中傷の投稿に気付いたときは、すぐに発信者情報開示請求の手続きを進める必要があります。なるべく早めに弁護士に相談するようにしましょう。
(2) 加害者の情報開示までには4~6か月ほどかかる
誹謗中傷の投稿をした加害者を特定するには、通常、以下のような手続き・時間が必要になります。
- サイト管理者に対する発信者情報開示請求の仮処分……1~2か月程度
- プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟……3~4か月程度
そのため、スムーズに手続きが進んだとしても、加害者の情報が開示されるまでには、4~6か月ほどの時間がかかります。
(3) 開示請求や裁判には専門知識が必須
投稿者を特定するには、発信者情報開示請求の手続きが必要になりますが、それには専門的な知識や経験が不可欠です。知識や経験に乏しい一般の方では、手続きに手間取ってしまい、IPアドレスの保存期間が経過してしまうリスクがありますので、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。弁護士であれば迅速に手続きに着手し、加害者の特定を行ってくれますので、本人の負担はほとんどありません。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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