失業保険の受給期間は?もらえる条件と手続きの方法を解説
- 労働問題
1. 失業保険の対象者と受け取るための条件
「失業保険」とは、失業した労働者が次の仕事を見つけるまでの生活費等をカバーするための保険です。正式名称は「雇用保険」といいます。
多くの労働者は失業保険の被保険者とされており、被保険者が失業した場合には基本手当を受給可能です。
(1)失業保険の加入対象者
1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者は、原則として失業保険への加入が義務付けられています。
上記の要件は、正社員・非正規社員・派遣労働者などの雇用形態にかかわらず同じです。したがって、正社員でなくても、所定労働時間や雇用期間などの要件を満たしていれば、失業保険に加入する必要があります。
(2)失業保険の給付条件
失業保険(雇用保険)の基本手当は、被保険者が離職し、かつ以下の要件をいずれも満たす場合に支給されます。
①失業の状態にあること
ハローワークに来所して求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人とハローワークの努力によっても就職できない状態にあることが必要です。
②離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
特定受給資格者または特定理由離職者については、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可
2. 失業保険の受給期間(給付日数)はいつからいつまで?
失業保険(雇用保険)の基本手当の受給期間(給付日数)は、いわゆる会社都合退職の場合と自己都合退職の場合で異なっています。
会社都合退職の方が早めに支給が始まるほか、給付日数についても多くの場合、会社都合退職の方が長くなります。
(1)失業保険の受給期間(給付日数)
失業保険(雇用保険)の基本手当の受給期間(給付日数)は、下表のとおりです。
▼障害者などの就職困難者
被保険者期間1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
---|---|---|---|---|---|
45歳未満 | 150日 | 300日 | 300日 | 300日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 | 360日 | 360日 | 360日 |
▼特定受給資格者・特定理由離職者(就職困難者を除く)
被保険者期間1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
▼上記以外
被保険者期間1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
---|---|---|---|---|---|
全年齢 | 90日 | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
いわゆる会社都合退職の場合は、特定受給資格者に当たります。会社の退職勧奨を受け入れて退職した場合も、特定受給資格者となります。
また、いわゆる自己都合退職であっても、特定受給資格者または特定理由資格者に当たることがあります(後述)。
基本手当の支給が始まるのは、特定受給資格者または特定理由資格者に当たる場合は受給資格決定日(ハローワークへの申請日)から7日間経過後、それ以外の場合はさらに2か月間が経過した後です。
基本手当を受給できるのは、原則として離職日の翌日から1年間に限られます。受給期間を過ぎると、給付日数が残っていても基本手当が打ち切られてしまいます。
ただし例外的に、妊娠・出産等の理由によって就職できない場合には、ハローワークへの申請により、最長で離職日の翌日から4年後まで受給期間の延長が認められます。
(2)自己都合退職でも、短期間で失業保険を受給できることがある
いわゆる自己都合退職であっても、特定受給資格者または特定理由資格者に該当すれば、会社都合退職と同等の条件で失業保険(雇用保険)の基本手当を受給できます。
たとえば、会社において労働基準法違反やハラスメント等の不適切な取り扱いを受けた場合などには特定受給資格者、病気や介護を理由に退職した場合などには特定理由資格者に当たります。
3. 失業保険の受給手続き
失業保険(雇用保険)の基本手当の受給申請について、手続きの流れと必要書類を紹介します。
(1)失業保険の受給申請の流れ
失業保険(雇用保険)の基本手当の受給に関する申請および審査は、以下の流れで進行します。
①基本手当の受給申請
住所地を管轄するハローワークにて求職の申込みを行った上で、必要書類(後述)を提出します。
②受給資格の決定
ハローワークが受給要件の充足を確認した上で、受給資格の決定を行います。決定日は申請日と同日になります。
③雇用保険受給者説明会
基本手当の受給に関して、重要事項の説明を受けます。その後、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が交付されます。
④失業の認定
原則として4週間ごとに1回、失業の認定を受けることが必要です。失業の認定の申請は、受給申請時と同じハローワークの窓口で行います。
⑤基本手当の支給開始
受給資格の決定日から、特定受給資格者または特定理由資格者であれば7日間、それ以外の場合は7日間と2か月間が経過すると、基本手当の支給が開始されます。
(2)失業保険の受給申請の必要書類
失業保険(雇用保険)の基本手当の受給を申請する際の必要書類は、以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者離職票
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
- 身元(実在)確認書類(顔写真付き1種類または顔写真なし2種類。コピー不可)
- 写真2枚(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm。ただし、マイナンバーカードを提示する場合は省略可)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
4. 失業保険に関してよくある質問
失業保険に関してよくある質問と、その回答をまとめました。
Q1. 65歳以上で解雇された場合でも、失業保険は受給できる?
Q2. 会社都合退職のはずなのに、自己都合退職扱いにされたらどうする?
(1)65歳以上で解雇された場合でも、失業保険は受給できる?
65歳以上の労働者が解雇された場合、通常の基本手当は受給できません。
ただし、失業保険(雇用保険)の被保険者であれば、基本手当の代わりに「高年齢求職者給付金」を受給できます。
高年齢求職者給付金の額は、被保険者期間が1年未満であれば基本手当に相当する額(=賃金日額の5~8割)の30日分、1年以上であれば50日分で、いずれも一時金として支給されます。
(2)会社都合退職のはずなのに、自己都合退職扱いにされたらどうする?
たとえば退職勧奨に応じて退職したなど、失業保険(雇用保険)の基本手当の受給に関しては会社都合退職(特定受給資格者)となるはずなのに、会社が自己都合退職を主張するケースがあります。
このような場合には、ハローワークに対して会社都合退職であることを示す証拠を提出し、特定受給資格者として基本手当を支給するように求めましょう。
また、ハローワークの認定内容が間違っている場合には、雇用保険審査官に対する審査請求によって異議を申し立てることができます。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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