休日出勤の残業代はどうなる? 知っておきたい休日出勤の基礎知識
- 労働問題
1. 休日出勤が残業(時間外労働)になるケース
休日出勤が残業になるのはどのようなケースなのでしょうか。
(1)そもそも「休日出勤」とは?
そもそも「休日出勤」とはどのように定義されているのでしょうか。以下では、休日出勤に関する基礎知識を説明します。
①休日の種類
休日には、「法定休日」と「所定休日」の2種類があります。
法定休日とは、労働基準法によって定められた休日をいいます。法定休日は、原則として1週間に1日、4週で4日以上、労働者に与えることが法律上義務付けられています。所定休日とは、法定休日以外の休日をいいます。法定休日とは異なり、法律上の義務ではありませんので、所定休日をどの程度与えるかは基本的には会社の自由とされています。
②休日出勤と休日労働の違い
休日出勤とは、労働義務がない日に会社に出勤して業務を行うことをいいます。これに対して、休日労働とは、労働基準法で定められている法定休日に会社に出勤して業務を行うことをいいます。休日労働の場合には、後述する割増賃金が支払われますので、休日出勤と休日労働をしっかりと区別して理解することが大切です。
③休日労働の割増賃金
法定休日に出勤する休日労働に対しては、法律上、割増賃金の支払いが義務付けられています。休日労働をした場合の割増賃金率は35%以上とされていますので、休日労働をした労働者には、1時間あたりの賃金を35%上乗せしたものが支払われます。
(2)休日出勤で残業代が支払われるケース
割増賃金の支払いが必要となる残業とは、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて働くことをいいます。
たとえば、所定労働時間8時間、週休2日制の会社で土日休みとされている会社において、ある週の土曜日に5時間働いたとします。土曜日の労働だけ見れば法定労働時間の8時間以内ですので、残業代の支払いが不要とも思えます。しかし、月曜から金曜日までの5日間ですでに40時間働いていますので、土曜日の労働は1週40時間という法定労働時間をオーバーします。そのため、土曜日の5時間の労働はすべて残業となり、25%以上の割増率によって増額した割増賃金が支払われます。
(3)振替休日と代替休日の違い
振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日とする代わりに、他の労働日を休日にすることをいいます。これにより、本来は休日だった日が労働日になり、振り替えられた日が休日になりますので、本来休日だった日に働いたとしても休日労働には該当しません。そのため、休日労働に対する割増賃金の支払いも不要です。
代替休日とは、休日労働をした場合に事後的に特定の労働日を休みにすることをいいます。振替休日と代替休日は、休日の振替が事前に行われるのか事後に行われるのかの違いがあります。また、休日を振り替えたとしても休日労働分の割増賃金の支払いが必要です。
2. 祝日に出勤するケース
祝日に出勤した場合の残業代はどうなるのでしょうか。
(1)祝日は法定休日にはあたらない
国民の祝日に関する法律(祝日法)では、「国民の祝日は休日」と定めています。実際に、土曜日や日曜日だけでなく、祝日も休日として扱っている企業も少なくありません。
しかし、労働基準法では少なくとも週1日、4週で4日以上の休日を与えることが義務付けられているだけで、祝日を法定休日と扱うとは定められていないのです。そのため、労働基準法上の休日付与義務に従って、別途法定休日を与えている限りは、祝日に働いたとしても休日労働に対する割増賃金は発生しません。
(2)祝日の残業代の計算方法
祝日法は、民間企業に対して、祝日を所定休日として扱うことを強制するものではありません。つまり、祝日を休日にするかどうかは、企業の経営判断に委ねられているのです。そのため、祝日の残業代計算は、就業規則や雇用契約で祝日が休日と定められているかどうかによって、以下のように変わってきます。
①祝日が休日と定められている場合
就業規則や雇用契約で祝日が休日と定められている場合には、祝日の労働に対しては、休日出勤として労働時間に応じた賃金が支払われなければなりません。しかし、「休日労働」にはあたりませんので、休日労働に対する35%以上の割増率は適用されません。ただし、祝日の勤務が1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えていた場合には、その部分については25%以上の割増率が適用されます。
②祝日が休日と定められていない場合
就業規則や雇用契約で祝日が休日と定められていない場合には、通常の労働日と同様に出勤しなければなりません。一般的な月給制では、祝日に働いた分の賃金も1か月分の基本給に含まれていますので、特別な手当の支給はありません。ただし、祝日の勤務が1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えていた場合には、その部分については25%以上の割増率が適用されます。
3. フレックスタイム制での休日出勤のケース
フレックスタイム制が採用されている会社では、休日出勤はどのように扱われるのでしょうか。
(1)フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、労働者が労働時間や始業・終業時刻などを自ら決めることで、生活と業務の調和を図りながら働くことができる制度です。
フレックスタイム制の導入により、労働時間を効率的に配分できますので、労働生産性の向上が期待できます。また、仕事と生活の調和を図りやすくなりますので、労働者としても柔軟で多様な働き方を選択できます。
(2)清算期間と総労働時間
フレックスタイム制では、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を定めたうえで、日々の労働時間や出退勤時刻を労働者が自由に決めることができます。総労働時間は、上限を3か月とする清算期間に応じて上限が設けられており、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間が残業(時間外労働)となります。
(3)フレックスタイム制の残業(時間外労働)とは
フレックスタイム制では、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えて働いたとしても直ちに残業代は発生しません。たとえば、清算期間が1か月と設定されている場合、その月の歴日数に応じて以下のように法定労働時間の総枠が定められています。
- 31日……177.1時間
- 30日……171.4時間
- 29日……165.7時間
- 28日……160.0時間
フレックスタイム制では、1日・1週間という単位ではなく、この法定労働時間の総枠を超えた場合に残業代が発生する仕組みになっています。
ただし、1か月を超える清算期間を定める場合には以下の要件を満たさなければなりません。
- 清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えないこと
- 1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないこと
これらの要件のうちどちらか一方でも満たさない場合、その時間は時間外労働として扱われます。
4. 休日出勤が残業扱いにならないケース
休日出勤をしたとしても、残業扱いにならないこともあります。以下では、休日出勤が残業扱いになるケースとならないケースを説明します。
(1)休日出勤が残業扱いになる条件
休日出勤が残業扱いになるかどうかは、休日出勤により勤務した時間が労働基準法上の「労働時間」にあたるかどうかがポイントになります。労働基準法上の労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間と定義されています。具体的な判断にあたっては、以下のような事情が考慮されます。
- 使用者の関与の有無、程度
- 業務性との関連性の有無、程度
たとえば、以下のようなケースについては、休日出勤が残業として扱われる可能性があります。
- 休日に業務に不可欠な研修に参加した
- 上司の指示により自宅に仕事を持ち帰って休日に作業した
- 休日に参加が強制されている社内行事に参加した
(2)残業扱いにならないケース
以下のようなケースについては、使用者による指揮命令下に置かれていたとは評価できないため休日出勤をしても残業扱いにはならない可能性が高いです。
①接待
接待のための飲食やゴルフなどが、単に取引先との親睦を深めるだけのものであった場合には残業扱いにはなりません。会社により強制・管理されているとはいえず、業務との関連性も希薄であると評価されるからです。
②出張の移動時間
出張の移動時間は通常の勤務時間に比べて自由度が高く、音楽を聴いたり、読書をしたり、スマートフォンをいじったり、睡眠をとるということも可能です。そのため、使用者の指揮命令下に置かれているとは評価できず、残業として扱われることはありません。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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