会社が解雇理由を教えてくれない|解雇予告をされたら確認すること
- (更新:2024年09月24日)
- 労働問題
1. 突然解雇予告をされたらどうすべき?
会社から突然解雇を予告された場合には、解雇理由を確認した上で、その後の対応を冷静に検討しましょう。
(1)解雇予告とは
解雇予告とは、使用者が労働者に対して、解雇する旨をあらかじめ伝えることをいいます。
会社が労働者を解雇しようとする際には、雇入れから14日以内である試用期間中の労働者など一部の例外を除き、原則として30日以上前に解雇予告をしなければなりません。解雇予告の日数を短縮する場合には、短縮した日数に相当する平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります(労働基準法第20条)。
会社が解雇予告をせずに労働者を解雇することは「即日解雇」と呼ばれます。即日解雇をする場合には、30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いが必要です。
(2)会社に解雇予告されたらやるべきこと
会社から解雇予告を受けたら、まず解雇の理由を確認しましょう。
解雇予告を受けた労働者は、会社に対して解雇理由証明書の発行を請求できます(労働基準法第22条第1項)。解雇理由証明書に記載された理由は、不当解雇を主張する際に攻撃すべき対象となるので、早めに確認しておくべきです。
解雇理由証明書の発行を拒否することは違法です。もし会社に解雇理由証明書の発行を拒否されたら、弁護士を通じて発行するよう求めましょう。
なお、解雇予告について納得できない状態で、退職届や退職合意書にサインしてはなりません。退職に同意していた旨を後に会社側に指摘されると、労働者は不利な立場に置かれてしまうおそれがあります。退職届や退職合意書へのサインを求められたとしても、拒否して持ち帰り、弁護士に相談しましょう。
また、実際に解雇されると、会社からの賃金の支払いが止まります。解雇後は雇用保険の基本手当などを受給できますので、どの程度の金額を受給できるかについてあらかじめ把握しておきましょう。
2. 会社が従業員を解雇できるケース
会社が労働者を解雇できる(クビにできる)のは、解雇の種類に応じた解雇要件を満たす場合に限られます。
(1)解雇の種類|懲戒解雇・整理解雇・普通解雇
解雇には、懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の3種類があります。
①懲戒解雇
従業員の就業規則違反を理由に、懲戒処分として行われる解雇です。
②整理解雇
業績が悪化した会社が、人件費削減等の目的で行う解雇です。
③普通解雇
懲戒解雇・整理解雇を除く解雇です。
(2)正当な解雇と不当解雇の違い
解雇は、その種類に応じた要件を満たさなければ行うことができません。要件を満たしている場合は正当な解雇として有効ですが、満たしていなければ不当解雇として無効となります。
懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の要件は、それぞれ以下のとおりです。
①懲戒解雇
以下の要件をいずれも満たすこと
- 就業規則上の懲戒事由に該当すること
- 就業規則において懲戒解雇を行うことがあり得る旨が定められていること
- 労働者の行為の性質や態様などに照らして、解雇の客観的合理的理由および社会的相当性が認められること
②整理解雇
以下の4要件に照らして、解雇の客観的合理的理由および社会的相当性が認められること
- 整理解雇の必要性
- 解雇回避努力義務の履行
- 被解雇者選定の合理性
- 手続きの妥当性(労働者側に対する説明等を尽くすこと)
③普通解雇
- 労働契約または就業規則に定められた解雇事由に該当すること
- 解雇の客観的合理的理由および社会的相当性が認められること
いずれの種類の解雇についても、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当と認められる場合でなければ無効となります(=解雇権濫用の法理、労働契約法第16条)。
(3)正当な解雇の例
たとえば以下のような解雇は、解雇要件を満たすため適法・有効と判断される可能性が高いです。
- 採用時に自称していた経歴が虚偽であることが判明したため、懲戒解雇した。
- 重大な犯罪行為をした労働者を懲戒解雇した。
- 会社の経営が著しく悪化し、役員報酬のカット、希望退職者の募集、新規採用の抑制などの手段を尽くしても改善しなかったため、労働者本人と労働組合に対する説明を十分に行ったうえで整理解雇した。
- 仕事のパフォーマンスが著しく低く、再三にわたって指導を行っても改善されないため、労働契約の解雇規定に従って普通解雇した。
3. 解雇に納得できない場合にやるべきこと
解雇の撤回を求める場合には、行政機関や弁護士に相談したうえで、法的手段により対抗しましょう。ただしその際には、避けた方がよいことがあるのでご注意ください。
(1)解雇に納得できない場合の相談先
解雇に納得できない場合の主な相談先としては、「総合労働相談コーナー」と弁護士が挙げられます。
①総合労働相談コーナー
都道府県労働局や労働基準監督署に設置されています。労働問題全般について、一般的なアドバイスを受けられます。
出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
②弁護士
法的紛争の解決を取り扱う専門家です。不当解雇の主張や未払い残業代の請求などについて、会社との交渉や法的手続きへの対応などを全面的に任せられます。
会社に対して不当解雇の主張などをしたいものの、ご自身だけでの対応は難しいと感じている方は、弁護士への相談がおすすめです。
(2)解雇に納得できない場合にとり得る手段
解雇に納得できない場合には、以下の手順で対応しましょう。
①会社に対して解雇理由証明書の交付を請求する
解雇の不当性を訴える主張を組み立てるためには、まず会社が主張する解雇の理由を把握することが大切です。
②解雇の撤回を求める内容証明郵便を会社に送付する
内容証明郵便で連絡することにより、本格的に不当解雇を争う姿勢を会社に伝えることができます。
③会社と交渉する
解雇の撤回等を求めて会社と交渉します。割増退職金などの条件次第では、合意退職を受け入れることも選択肢のひとつです。
④労働審判や訴訟で争う
会社との交渉がまとまらないときは、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて争いましょう。
出典:裁判所「労働審判手続」
いずれの手続きについても、弁護士に依頼するとスムーズに対応してもらえます。
(3)不当解雇の撤回を求める場合に避けるべきこと
会社に対して不当解雇の撤回を求める際には、後に不利な立場に置かれることがないように、以下のことは避けた方がよいです。
①退職届への署名・捺印
退職に同意していたと解釈されることがないように、退職届への署名・捺印は避けましょう。
②雇用保険の基本手当の本受給
雇用保険の基本手当は失業状態を前提として受給するものなので、本受給をすると不当解雇の撤回の主張と矛盾します。ハローワークでは、不当解雇を主張する方を対象として仮給付の運用を行っているので、仮給付の申請を行いましょう。
③解雇予告手当・退職金の請求
解雇予告手当や退職金を請求することも、不当解雇の撤回を求める主張と矛盾するのは避けるべきです。ただし、会社との和解交渉の過程で、会社側から好条件の割増退職金などが提示された場合には、受け入れることも有力な選択肢となります。
早い段階で弁護士に相談して、不当解雇に関する会社との争いを有利に解決しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年09月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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