試用期間中に解雇?! 納得できない場合の対処法とは

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
試用期間中に解雇?! 納得できない場合の対処法とは

会社に採用されたとしてもすぐに本採用となるのではなく、一般的には試用期間という適格性を見定めるための期間が置かれます。

試用期間というと「お試し期間」のようなイメージを持たれる方も多く、簡単に解雇されてしまうと考える方も少なくありません。しかし、試用期間であっても労働契約は成立していますので、簡単に解雇されることはありません。

試用期間中に解雇されてしまった場合には不当解雇の可能性もありますので、しっかりと争っていくことが大切です。

1. そもそも「試用期間」や「解雇」とは?

そもそも「試用期間」や「解雇」とは、どのようなものなのでしょうか。以下では、それぞれの定義と基本的な内容を説明します。

(1)試用期間とは

試用期間とは、本採用までの間に労働者の適性や能力を見極めるために設定される期間です。試用期間の一般的な長さとしては、1か月から6か月程度ですが、法律上の決まりは特にありません。試用期間中に問題がなければ、本採用へと移ります。

このような試用期間は、法的には「解約権留保付労働契約」と理解されています。

すなわち、試用期間であっても会社と労働者との間には労働契約が成立していますが、試用期間を設けた趣旨や目的から一定の場合には解約権を行使して、労働者を辞めさせることができるということです。

(2)解雇とは

解雇とは、会社側の一方的な意思表示により、労働者との間の労働契約を終了させることをいいます。解雇には、以下のような4つの種類があります。

①普通解雇

普通解雇とは、労働契約上の債務不履行を理由として行われる解雇です。たとえば、以下のような理由による解雇が普通解雇にあたります。

  • 労働者の能力不足
  • 経歴詐称
  • 度重なる遅刻や欠勤
  • 協調性の欠如
  • 業務命令違反

②懲戒解雇

懲戒解雇とは、懲戒処分として行われる解雇であり、懲戒処分の中でも最も重い処分になります。たとえば、以下のような理由による解雇が懲戒解雇にあたります。

  • 職務上の不正行為
  • 重大な業務命令違反
  • 無断欠勤
  • 私生活上の犯罪行為
  • 重大なセクシャルハラスメント、パワーハラスメント

③諭旨解雇

諭旨解雇とは、懲戒処分として行われる解雇ですが、懲戒解雇よりも一段階軽い処分になります。労働者が懲戒解雇に相当するような違反を犯したものの、会社側の温情により、直ちに懲戒解雇とするのではなく、退職を勧告し、労働者に退職届を提出させたうえで解雇する方法です。

④整理解雇

整理解雇とは、経営状態の悪化にともなう人員整理を目的として行われる解雇です。上記の3つの解雇は、労働者側に何らかの違反があった場合になされる解雇ですが、整理解雇の場合、労働者側には一切落ち度がなく、会社側の一方的な都合によりなされる解雇です。そのため、他の解雇に比べて、整理解雇の有効性は、より厳格に判断されます。

2. 試用期間中に解雇…諦めるのが普通?

試用期間中に解雇されてしまったら、諦めて受け入れなければならないのでしょうか。

(1)試用期間中でも解雇には制限がある

試用期間というと「お試し期間」というイメージがあり、簡単にクビにされてしまうと考えている方も少なくありません。しかし、試用期間中であっても会社との間で労働契約が成立しています。そのため、本採用後の労働者と同様に、解雇をするためには厳格な規制が適用され、相応の理由がなければ会社は、試用期間中の労働者を解雇することはできません。

(2)試用期間中に解雇が成立するケース

試用期間中の解雇の有効性は、厳格な要件により判断されますが、以下のような事情がある場合には、解雇が認められる可能性があります。

①能力不足

試用期間は、労働者の適性や能力を判断するために設けられる期間ですので、労働者に能力不足があり、職務の遂行が難しいと判断される場合には、試用期間中の解雇が認められる可能性があります。特に、高度な知識や経験を期待して採用された中途採用の労働者に関しては、能力不足があった場合、試用期間中の解雇が認められやすいといえるでしょう。

②勤務態度や協調性の欠如

遅刻や欠勤を繰り返す、何度注意しても改善されない、会社からの業務命令を無視するなど、試用期間中の勤務態度に問題がある場合や、協調性が欠如していることが明らかになった場合には、解雇が認められる可能性があります。

③経歴詐称

採用時の経歴に重大な詐称があった場合には、試用期間中の解雇が認められる可能性があります。たとえば、一定の資格や経験を有していることを評価して採用したにもかかわらず、そのような資格や経験がなかったという場合には、解雇が認められる可能性が高いでしょう。

④病気やケガで復職が難しい

私生活が原因で生じたケガや病気により、職場への復帰が難しいという場合には、試用期間中に解雇される可能性があります。

(3)試用期間中の解雇で不当解雇にあたる可能性があるケース

試用期間を設けた趣旨や目的からしても、以下のような理由による解雇は、不当解雇にあたる可能性があります。

①新卒採用者に対しての「能力不足」

新卒採用者は、社会に出たばかりですので、即戦力としては期待していないのが通常です。採用後の教育や業務を通じて、能力を成長させていくものになりますので、能力不足があったからといって、直ちに解雇するのは不当解雇になる可能性があります。

②仕事の結果のみを理由にしている

仕事の結果が好ましいものでなかったとしても、それだけでは労働者の能力が不足しているかどうかを判断できません。仕事の結果は、労働者の能力だけで左右できるものではありませんので、そこに至る経過も踏まえて判断する必要があります。そのため、仕事の結果のみを理由として解雇するのは不当解雇である可能性があります。

③十分な指導が行われていない

試用期間中の労働者は、不慣れな環境で仕事をしなければなりませんので、会社による適切な指導がなければ十分に能力を発揮することができません。そのため、会社が労働者に対して十分な指導や改善の機会を与えることなく解雇することは、不当解雇にあたる可能性があります。

④上司に意見しただけ

試用期間中の労働者から上司に対して意見があると「試用期間中なのに生意気だ」などという理由で解雇されることがあります。しかし、このような解雇理由にはまったく正当性がありませんので、不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。

3. その解雇は有効? 無効?|解雇予告を受けたら確認すべきこと

会社から解雇予告を受けたとしてもすぐに受け入れてはいけません。不当解雇の可能性もありますので、以下のポイントを踏まえて行動するようにしましょう。

(1)自ら会社を辞めない、解雇を迫られても即答しない

会社から解雇予告を受けたとしても、感情的になって自分から会社を辞めてはいけません。自ら会社を辞めてしまうと、解雇ではなく、退職という扱いになってしまいますので、不当解雇であったとしてもそれを争うことができなくなってしまいます。

また、会社から執拗に解雇を迫られたとしても、即答するのではなく、弁護士に相談するなどして解雇の有効性を判断してもらうようにしましょう。

(2)解雇理由証明書の交付を請求する

解雇理由証明書とは、会社が労働者を解雇する理由が記載された書類です。労働基準法では、解雇予告を受けた労働者は、会社に対して、解雇理由証明書の交付を請求することができ、会社は、遅滞なく交付しなければならないとされています(労働基準法22条2項)。

解雇予告を受けた際には、会社から解雇通知書が交付されますが、解雇通知書には、一般的に解雇理由までは記載されていません。そのため、どのような理由で解雇されたかを明確にするためにも、必ず解雇理由証明書の交付を請求するようにしましょう。

なお、解雇理由証明書が交付されない場合には、労働基準法違反となりますので、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。

(3)面談や話し合いの場では録音をする

不当解雇の疑いがある場合には、会社との面談や話し合いの内容を録音しておくことをおすすめします。なぜなら、会社との会話内容によっては、不当解雇を立証する有力な証拠になる可能性があるからです。

会話から不当な動機・目的により解雇したことがわかったとしても、録音がなければ、それを立証するのは困難です。そのため、会社との話し合いに臨むときは、必ず録音をとるようにしましょう。

4. 解雇に納得できない場合の対処法

試用期間中の解雇に納得できない場合には、以下のような対処法があります。

(1)解雇に納得できない場合にすべきこと

解雇に納得できない場合には、以下のような行動をとりましょう。

①解雇の撤回を求める内容証明郵便を会社に送る

まずは、会社に対して解雇の撤回を求める内容証明郵便を送ります。不当解雇を争う場合には、解雇日以降の賃金も請求できる可能性がありますが、そのためには会社に対して就労意思を示さなければなりません。内容証明郵便の送付は、会社による解雇が不当解雇であるということを伝えるとともに、就労意思があることを示すという効果があります。

②交渉する

会社との交渉により解雇の撤回を求めていきます。交渉の方法には、特に決まりはありませんので、文書、電話、面談など相手の対応を踏まえて適切な方法を選択しましょう。

③裁判手続きを行う

会社との交渉では解雇の撤回に応じてくれないときは、労働審判の申立てまたは訴訟提起を行います。

労働審判は、事案に即して迅速かつ柔軟に労働問題を解決できる紛争解決手段ですので、話し合いによる解決の余地が残されているようであれば、労働審判の利用を検討してみてもよいでしょう。

他方、話し合いによる解決が難しい場合には、最終的に訴訟による解決を図ります。訴訟では、労働者の側で不当解雇であることを立証していかなければなりません。非常に複雑な手続きですので、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

(2)不当解雇に納得できない場合の相談先

不当解雇に納得できない場合には、以下のような相談先に相談してみるとよいでしょう。

①労働基準監督署

労働基準監督署は、企業が労働関係法令に違反しないように監督する行政機関です。

企業に労働基準法違反があった場合には、指導や勧告により違法状態の改善を求めてくれますが、不当解雇に関しては労働基準監督署では判断できません。ただし、無料で相談にはのってくれますので、今後の進め方についてアドバイスをもらいたいということであれば労働基準監督署に相談してみてもよいでしょう。

②弁護士

弁護士に相談をすれば、不当解雇であるかどうかを判断してもらうことができます。不当解雇であった場合には、弁護士に依頼することで、弁護士が労働者の代理人として会社との交渉や裁判手続きなどに対応してくれます。ひとりで対応するのが難しいと感じる場合は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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