労働審判とは? 申し立ての手続きや費用、注意点を解説

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
労働審判とは? 申し立ての手続きや費用、注意点を解説

労働問題が発生したものの会社との話し合いでは解決できないというときは、「労働審判」という手続きを利用してみるとよいでしょう。労働審判は、裁判所を利用する紛争解決手段ですが、訴訟よりも迅速かつ柔軟に争いを解決できるという特徴があります。そのため、訴訟には抵抗がある方でも気軽に利用することができるはずです。
労働審判の利用をお考えの方は、まずは、労働審判の概要や手続きの流れなどをしっかりと押さえておきましょう。

1. 労働審判制度とは? 

労働審判とは、どのような制度なのでしょうか。以下では、労働審判に関する基本事項を説明します。

(1)労働審判制度はどんな制度?

労働審判とは、労働者と事業主との間に生じた労働関係トラブルを実情に即して、迅速かつ適正に解決することができる裁判所の紛争解決制度です。この制度は、平成18年4月に導入された制度ですので、裁判所の手続きの中では比較的新しい制度といえます。

労働審判は、以下の3人により組織された労働審判委員会が審理を担当します。

  • 裁判官1人(労働審判官)
  • 労働審判員2人(使用者側の有識者1人と労働者側有識者1人)

解決までの時間は、裁判に比べて短く、平均審理期間(平成18年~令和4年まで)は、81.2日とされています。

(2)労働審判の目的

労働審判の目的は、労働者と事業主との間に生じた労働紛争を実情に即して、迅速に適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています。 労働問題を解決する裁判所の手段には、他にも民事調停や民事訴訟などがありますが、労働問題に特化しているが、労働審判になります。

(3)労働審判の特徴

労働審判は、通常訴訟と比べると以下のような特徴のある手続きといえます。

①早期に審理が終わる

通常訴訟だと、訴え提起から判決までは、約1年程度の期間がかかります。また、複雑な争いのある事案だと解決までに1年以上を要することも少なくありません。

労働審判の平均審理期間は81.2日で、66.9%の時間が申し立てから3か月以内に解決しています。そのため、通常訴訟に比べると早期に審理が終わるという特徴があります。

②柔軟な解決が望める

通常訴訟では、裁判所が当事者からの主張立証を踏まえて、法的観点からどちらの主張が正当かを判断していきます。そのため、解決内容は、基本的には勝ちか負けかという明確なものになります。

労働審判は、労働審判委員会による判断(労働審判)以外にも、当事者の話し合いによる解決方法(調停)も準備されています。そのため、お互いに譲歩し合って紛争を解決するといった柔軟な解決も期待できます。

③非公開の手続きである

通常訴訟は、原則として公開の法廷により審理されますので、無関係な第三者によりトラブルの内容を傍聴されてしまう可能性もあります。

労働審判は、非公開の手続きで行われますので、労働者のプライバシーが確保することが可能です。

④裁判官以外の専門家が関与する

裁判官は、法律の専門家ではありますが、労働者と事業主の間に生じる実際の労働問題には疎い部分もあります。そのため、通常訴訟では、法的観点からは適切な判断がなされるかもしれませんが、労働問題の実情とはかけ離れた判断になることもあります。

労働審判では、労働問題に関する専門的な知識や経験を持つ人が、民間から選出されます。そのため、裁判官以外の専門家が関与する労働審判の方が事案に即した判断が期待できるでしょう。

⑤本人だけでも対応しやすい

通常訴訟では、主張は準備書面という形式で行わなければならず、法的観点から要件事実に基づいて主張立証していかなければなりません。そのため、専門的知識のない一般の方だけでは、適切に対応するのが困難です。

労働審判は、調停という話し合いの手続きも設けられていますので、通常訴訟に比べれば、本人だけでも対応しやすい手続きといえます。

(4)労働審判の対象

労働審判は、どのような労働者、どのような紛争で利用できる手続きなのでしょうか。以下では、労働審判の対象を説明します。

①雇用形態

労働審判の申立は、労働者および使用者のどちらからでも可能です。対象となる労働者を挙げると以下のようになります。

  • 正社員
  • 契約社員
  • パートタイマー
  • アルバイト

ただし、公務員は対象外です。

②紛争の種類

労働審判で扱われる主な紛争の種類には、以下のものがあります。

  • 賃金トラブル(給与の未払い、残業代の未払い、退職金の未払いなど)
  • 雇用トラブル(解雇、雇い止め、退職強要など)

③対象にならないもの

労働審判では、以下のような紛争については対象外とされています。

  • 労働組合と企業との紛争
  • 労働者同士の紛争(セクハラ、パワハラ、個人間の金銭トラブルなど)

2. 労働審判申し立ての手続きはどうやる?

以下では、労働審判の申立手続きの方法や流れを説明します。

(1)労働審判申し立てのための準備

労働審判の申立てをするには、まずは以下のような準備を進める必要があります。

①証拠を集める

労働審判の手続きは、原則として3回以内の期日で終了することになっていますので、限られた期日内で効果的な主張立証を行っていく必要があります。そのため、労働審判申立て前から予想される争点に関する証拠を集めていくことが大切です。

たとえば、残業代の未払いの事案であれば、以下のようなものが証拠になります。

  • 雇用契約書、就業規則
  • 給与明細、源泉徴収票、賃金台帳
  • タイムカード
  • 勤怠管理システムのデータ
  • 業務日報

②労働審判手続申立書を作成

労働審判手続申立書のひな型は、裁判所の窓口または裁判所のホームページにありますので、そこから入手して利用するとよいでしょう。労働審判手続申立書の主な記載項目としては、以下のものが挙げられます。

  • 申立の趣旨(申立人が求める審判内容)
  • 申立の理由(申立人が求める審判内容を理由づける事実)
  • 予想される争点および争点に関連する重要な事実
  • 申立に至る経緯
  • 希望する解決案

(2)手続きの流れ

労働審判は、以下のような流れで進んでいきます。

①労働審判の申立

労働審判手続申立書および証拠を管轄の地方裁判所に提出することで労働審判の申立ができます。

②期日指定

労働審判の申立が受理されると、裁判所により労働審判の期日が指定され、当事者に知らされます。初回の労働審判手続き期日は、申立日から40日以内に指定されることになっています。

③第1回労働審判手続き期日

第1回労働審判手続き期日では、当事者から提出された書面や証拠に基づいて、争点の整理が行われます。労働審判では、多くの事件で第1回期日に労働審判委員会の心証が決まり、調停案が提示されますので、第1回期日の対応が非常に重要になります。

④第2回・第3回労働審判手続き期日

第1回期日で解決しなかった場合には、第2回以降の期日が指定されます。

第2回期日では、第1回期日で提出できなかった証拠の提出や調停案の検討結果などを踏まえた話し合いが行われます。多くのケースでは、第2回の期日で調停が成立しますが、当事者の合意が得られないときは第3回期日が開催されます。

⑤調停成立または労働審判

当事者が調停委員会から提示された和解案に合意すると、調停成立により労働審判は終了します。

合意が得られず調停不成立になった場合には、労働審判委員会が労働審判を行います。労働審判の内容に不服がある場合には、2週間以内に異議申し立てをすれば、労働審判は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行します。

3. 労働審判の費用

労働審判の申立てをする際には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

(1)実費と弁護士費用

①実費

実費とは、労働審判を申し立てる際に裁判所に納める必要のある費用をいいます。労働審判の実費には、以下の印紙代と郵便切手代が含まれています。

  • 印紙代……請求額によって変動し、300万円の請求であれば1万円
  • 郵便切手代……約2000円(裁判所によって異なる)

②弁護士費用

労働審判の申立てを弁護士に依頼すると、上記の実費に加えて、以下のような弁護士費用がかかります。

  • 法律相談料……1時間あたり1万円(税別)。無料相談を実施しているところもあります。
  • 着手金……数十万円程度
  • 報酬金……数十万円程度

弁護士費用は、依頼する弁護士によって異なりますので、相談時に費用の見積もりを出してもらうとよいでしょう。

(2)労働審判の解決金でもらえるお金の相場は?

労働審判で調停が成立すると、会社から労働者に対して、解決金というお金が支払われることがあります。解決金の金額は、事案によって異なりますが、一般的な相場としては、数十万円から数百万円の範囲になります。

4. 労働審判をするなら弁護士に相談を

労働審判では、会社に対して比較的短期間で的確な主張を行う必要があります。個人で行うには事前準備が難しいことが多いため、まずは労働問題に強い弁護士への相談をおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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