有給休暇とはどんな制度? 付与日数や法律をわかりやすく解説!
- 労働問題
1. 有給休暇とは
「年次有給休暇」とは、労働基準法に基づいて労働者に付与される有給の休暇です。単に「有給休暇」と呼ばれることもあります。
※本記事では「有給休暇」の表記に統一します。
(1)有給休暇の対象者
有給休暇が付与されるのは、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者です(労働基準法第39条第1項)。 正社員だけでなく、契約社員やパートやアルバイトなどの非正規社員に対しても、要件を満たせば有給休暇が付与されます。
(2)有給休暇の取得率の低さが社会的課題に
日本では、有給休暇の取得率が低く推移しています。
平成13年から平成29年にかけて、有給休暇の取得率は4割台と低迷していました。
働き方改革や法改正などによって近年では改善が見られるものの、令和5年における有給休暇の取得率は62.1%と、未だに100%からは遠い水準となっています。
有給休暇の取得は労働者の権利であり、労働のストレスを緩和して健康を維持する観点からも非常に重要です。そのため労働者においては、積極的に有給休暇を取得することが推奨されます。
2. 有給休暇に関する労働基準法のルール
有給休暇については、労働基準法第39条などにおいてルールが定められています。その中でも重要なものとして、以下の3点を解説します。
- 有給休暇の取得は原則自由|ただし会社の時季変更権あり
- 有給休暇の計画的付与|5日間の付与が義務付けられた
- 有給休暇の取得は付与後2年以内
(1)有給休暇の取得は原則自由|ただし企業側の時季変更権あり
有給休暇は原則として、労働者が請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39条第5項本文)。つまり、労働者は有給休暇を自由に取得できるのが原則です。
ただし例外的に、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に与えることができます(同項但し書き)。これを使用者の「時季変更権」といいます。
(2)有給休暇を取得させる義務|5日間の付与が義務付けられた
1年間に10日以上の有給休暇が付与される労働者については、そのうち5日間を、付与日から1年以内に時季を指定して与えなければなりません(労働基準法第39条第7項)。
有給休暇の取得率が低い状況を改善するため、2019年4月から5日間の有給休暇の付与義務が新設されました。
(3)有給休暇の取得は付与後2年以内
有給休暇を取得できるのは、付与日から2年以内です。2年間が経過すると、有給休暇の取得請求権が時効により消滅してしまいます(労働基準法第115条)。
有給休暇が時効消滅する前に、あらかじめスケジュールを立てて計画的に取得しましょう。
3. 有給休暇の付与条件・付与のタイミング・付与日数
有給休暇の付与条件・付与のタイミング・付与日数について解説します。
(1)有給休暇の付与条件と付与のタイミング
有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与されます(労働基準法第39条第1項)。正社員や非正規社員などの雇用形態を問いません。管理監督者にも有給休暇が付与されます。
なお、以下の各期間は、有給休暇との関係では出勤したものとみなされます(同条第10項)。
- 労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間
- 育児休業をした期間
- 介護休業をした期間
- 産前産後休業をした期間
有給休暇が付与されるのは、初回は雇入れの日から起算して6か月経過時、2回目以降は前回の付与日の1年後です。
出勤率と継続勤務期間の要件は、初回の付与については雇入れ後6か月間、2回目以降の付与については付与日前1年間について判定されます。
(2)有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数は、フルタイム労働者とそうでない労働者で計算方法が異なります。
フルタイム労働者とは、以下のいずれかに該当する労働者のことです。
- 1週間の所定労働日数が5日以上
- 1年間の所定労働日数が217日以上
- 1週間の所定労働時間が30時間以上
フルタイム労働者に付与される有給休暇の日数は、継続勤務期間に応じ、下表のとおりです(労働基準法第39条第2項)。
継続勤務期間 | 付与される有給休暇の日数 |
---|---|
6か月 | 10日 |
1年6か月 | 11日 |
2年6か月 | 12日 |
3年6か月 | 14日 |
4年6か月 | 16日 |
5年6か月 | 18日 |
6年6か月以上 | 20日 |
フルタイム労働者でない労働者に付与される有給休暇の日数は、継続勤務期間と所定労働日数に応じ、下表のとおりです(同条第3項)。
1週間の所定労働日数 | 4日 | 3日 | 2日 | 1日 | |
1年間の所定労働日数 | 169日以上216日以下 | 121日以上168日以下 | 73日以上120日以下 | 48日以上72日以下 | |
継続勤務期間 | 6か月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
1年6か月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 | |
2年6か月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 | |
3年6か月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 | |
4年6か月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 | |
5年6か月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 | |
6年6か月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
※1週間の所定労働日数と1年間の所定労働日数のうち、有給休暇の日数が多くなる方が適用されます。
付与された有給休暇は、原則として1日単位で取得できますが、会社によっては半日単位や1時間単位での取得が認められていることもあります。
4. 有給休暇に関するよくある質問
有給休暇についてよくある質問と回答をまとめました。
Q1. 有給休暇の取得理由を会社に伝える必要はあるのか?
Q2. 有給休暇を取得しなかった場合は繰り越せるのか?
Q3. 有給休暇を会社に買い取ってもらうことはできるのか?
(1)有給休暇の取得理由を会社に伝える必要はあるのか?
有給休暇の取得は労働者の権利であるため、どのような理由であっても有給休暇を取得できます。したがって、労働者が会社に有給休暇の取得理由を伝える義務はありません。理由を聞かれたとしても、答えたくなければ答えなくて構いません。
有給休暇の取得理由を答えなかったことを理由に不利益な取り扱いを受けた場合は、人事権の濫用などに当たる可能性があるので、弁護士にご相談ください。
(2)有給休暇を取得しなかった場合は繰り越せるのか?
有給休暇は、付与後2年以内であれば取得できます。したがって、いわゆる「有給休暇の繰り越し」は翌年度に限り認められます。
(例)
2024年4月1日に付与された有給休暇
→2025年3月31日までに取得しなくても、1年間(2026年3月31日まで)の繰り越しが可能
なお、就業規則等によって会社が独自に有給休暇の繰り越しを認めないルールを作っても、そのルールは無効です。あくまでも労働基準法の規定に従い、翌年度への繰り越しは認められます。
(3)有給休暇を会社に買い取ってもらうことはできるのか?
労働者に休息を与えるという有給休暇制度の趣旨に鑑み、有給休暇の買い取りは原則不可とされています。
ただし、労働者が退職する直前の時期に限り、労働契約・就業規則の規定や会社との合意に基づき、有給休暇の買い取りが認められることがあります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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