同じ仕事なのに正社員と待遇・給料が違う|同一労働同一賃金とは?
- 労働問題
1. 「同一労働同一賃金」に関する基礎知識
正社員と非正規社員が同等の仕事をしているのに、非正規社員の待遇を正社員よりも低く抑えることは「同一労働同一賃金」に違反する可能性があります。
(1)同一労働同一賃金とは
「同一労働同一賃金」とは、企業・団体内で正社員と非正規社員の間に生じる不合理な待遇差別を禁止する取り決めです。
業務の内容やそれに伴う責任の程度、およびこれらの変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものを考慮したうえで、正規・非正規という雇用区分の間で不合理な待遇の違いを設けることは禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法第8条、労働者派遣法第30条の3第1項)。
特に、業務・責任やその変更の範囲が正社員と同等である非正規社員には、正社員と同等の待遇であることが義務付けられています(パートタイム・有期雇用労働法第9条、労働者派遣法第30条の3第2項)。
上記の規制に違反した企業は、行政処分や行政指導などを受けるリスクを負います。
同一労働同一賃金は、不適切な待遇に悩む非正規社員の方にとって、会社に待遇改善を求める際の重要な根拠規定です。その一方で、非正規社員の待遇改善の傍ら、正社員の待遇が相対的に抑制される可能性が懸念されています。
(2)同一労働同一賃金の対象となる労働者
同一労働同一賃金は、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者に適用されます。
①短時間労働者
通常の労働者(=正社員)に比べて、1週間の所定労働時間が短い労働者です。
②有期雇用労働者
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者です。
③派遣労働者
派遣元事業主と労働契約を結ぶ一方で、実際の労働は派遣先の指揮命令下で行う労働者です。
(3)同一労働同一賃金が適用される待遇
同一労働同一賃金は、賃金だけに留まらず、すべての待遇が対象となります。たとえば、以下の待遇はいずれも同一労働同一賃金の対象です。
①基本給
毎月支給する賃金については、労働者の能力や経験、成果、勤続年数などの事実に基づき決定されなければなりません。
②賞与
賞与(ボーナス)の支給対象者や支給額については、貢献度に応じた金額を支給するべきで、正規・非正規と社員の雇用区分の違いで不合理な差を設けてはなりません。
③各種手当
手当の支給要件や支給額などについては、手当の内容に則して支給されるべきものです。正規・非正規と社員の雇用区分の違いで不合理な差を設けてはなりません。
④福利厚生
利用・享受できる福利厚生の種類や内容などについて、正規・非正規と社員の雇用区分の違いで不合理な差を設けてはなりません。
⑤教育訓練
受けられる教育訓練の種類や内容などについて、正規・非正規と社員の雇用区分の違いで不合理な差を設けてはなりません。
2. 同一労働同一賃金に照らした待遇差の可否
同一労働同一賃金に照らして、違反にならない待遇差と違反になる待遇差の例を紹介します。
(1)同一労働同一賃金に反しない待遇差の例
以下のような待遇差は、業務の内容や責任の程度、およびその変更の範囲に照らして合理的であるため、同一労働同一賃金に反しないと考えられます。
- 軽易な業務に従事する非正規社員の基本給を、より責任が重い業務を行う正社員よりも低く抑えた。
- 責任が重い業務を行う正社員には賞与を支給する一方で、軽易な業務に従事する非正規社員の賞与を正社員の半額とした。
- 欠勤が人事評価において考慮される正社員には精皆勤手当を支給する一方で、欠勤が人事評価において考慮されない非正規社員には精皆勤手当を支給しなかった。
- 長期勤続者に対して付与されるリフレッシュ休暇を、非正規社員については所定労働時間に応じた日数に限って付与した。
- 管理職に就く正社員を対象とする教育訓練を、軽易な業務に従事する非正規社員に対しては行わなかった。
(2)同一労働同一賃金に反する待遇差の例
以下のような待遇差は不合理な差別であり、同一労働同一賃金に違反すると考えられます。
- 同等の職務でありながら、非正規社員の基本給を正社員の6割に抑えている。
- 業務の内容や責任の程度が同等な状態で、正社員には支給している賞与を非正規社員には一律不支給としている。
- 同一の役職の社員に対し、正社員には役職手当を支給する一方で、非正規社員には役職手当を不支給にする。
- 非正規社員であることのみを理由に、正社員は利用可能な福利厚生施設を利用させない。
- 同等の職務を行っているにもかかわらず、正社員に対して行っている教育訓練を、非正規社員に対しては行わない。
3. 同一労働同一賃金に反する不合理な待遇を受けた場合の相談先
非正規社員の方で同一労働同一賃金に違反する不合理な待遇差別を受けた場合は、「総合労働相談コーナー」または弁護士に相談しましょう。
(1)総合労働相談コーナー
「総合労働相談コーナー」は、都道府県労働局や労働基準監督署に設置されています。同一労働同一賃金を含む労働問題の解決方法などについて、一般的な説明やアドバイスを受けられます。
ただし総合労働相談コーナーでは、会社に対する請求を代行してもらうことはできない点にご注意ください。
参考:「総合労働相談コーナーのご案内」(厚生労働省)
(2)弁護士
弁護士は、紛争解決を取り扱う法律の専門家です。弁護士に依頼すれば、待遇差の是正や未払い賃金の支払いなどについて、会社に対する請求を代行してもらえます。
弁護士は労働者の代理人として行動するため、ご自身の意向に沿ってスムーズに対応してもらえる点が大きなメリットです。 会社との交渉や法的手続きへの対応に要する手間が省けますし、法的な観点から説得力のある主張を行うことで、有利な解決を得られる可能性が高まります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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