【後遺障害等級認定】申請方法と手続きの流れを解説
- (更新:2024年11月19日)
- 交通事故
交通事故の怪我の治療を続けても症状の改善が期待できず、後遺症が生じてしまった場合には、後遺障害等級申請を行う必要があります。後遺障害等級には1~14級まであり、等級が認定されるかによって、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額が変わってきますので、適正な後遺障害等級認定を受けることが重要になります。
そのためには、後遺障害等級申請の方法や流れをしっかりと押さえておきましょう。
1. 後遺障害等級認定の申請の種類
後遺障害等級認定の申請方法には、どのような種類があるのでしょうか。以下では、2種類ある後遺障害等級認定の申請方法について説明します。
(1)後遺障害等級認定の申請方法は2種類ある
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」および「被害者請求」の2種類があります。両者の違いをまとめると、以下のとおりです。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
申請者 | 加害者側の保険会社 | 被害者 |
メリット | 資料収集や書類作成をすべてやってくれるので手間がかからない |
・自分に有利な資料を提出できる ・後遺障害等級が認定されると、保険会社との示談前に保険金を受け取れる |
デメリット |
・自分に有利な資料を提出できない ・示談成立まで保険金が支払われない |
・資料収集や書類作成の手間がかかる |
(2)事前認定
事前認定とは、交通事故の加害者が加入する任意保険会社に後遺障害等級申請の手続きを任せる方法です。
後遺障害等級申請の手続きに必要な資料収集や書類作成などは、すべて加害者側の保険会社が行ってくれますので、被害者にはほとんど負担はありません。
しかし、保険会社がどのような資料を添付して申請を行ったのかがわかりませんので、申請過程が不透明というデメリットがあります。保険料の支払いをする保険会社が自らに不利になるような資料を積極的に収集し、提出してくれることは期待できません。そのため、適正な後遺障害等級認定の獲得を目指すのであれば、後述する被害者請求の方法がおすすめです。
(3)被害者請求
被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険会社に損害賠償金を直接請求する方法です。
事前認定とは異なり、後遺障害等級申請の手続きに必要になる資料の収集や書類の作成は、すべて被害者自身で行わなければなりませんので、被害者にとって負担の大きい手続きといえます。
しかし、弁護士に依頼すれば、申請手続きを代行してくれますので、事前認定の場合と負担の程度は変わりません。また、自分に有利な資料を収集して、提出することができますので、手続きの透明性が高く、納得いく結果が得られる可能性が高くなるといえます。
そのため、後遺障害等級申請の手続きは、できる限り被害者請求の方法で行うようにしましょう。
2. 後遺障害等級認定申請の手続きの流れ
後遺障害等級認定申請の手続きは、以下のような流れで行います。
(1)手続きの流れ
後遺障害等級認定申請をしてから、認定結果が出るまでには、1~2か月程度の期間がかかります。
(2)ステップ1|医師による「後遺障害診断書」の作成
後遺障害等級認定を申請するのは、医師から症状固定と診断された後になります。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の改善が期待できない状態をいいます。症状固定時期は、医師が判断しますので、医師と相談しながら症状固定時期を見極めていきましょう。
医師から症状固定と診断されたら、医師に「後遺障害診断書」を渡して、記載をお願いしてください。後遺障害診断書は、後遺障害等級認定の手続きにおいて特に重要な書類になりますので、記載に不備や漏れがないかを被害者側でもしっかりとチェックしましょう。
(3)ステップ2|自賠責損害調査事務所による調査
必要書類の収集および作成が完了したら、加害者が加入する自賠責保険会社に後遺障害等級申請を行います。
後遺障害等級認定の審査は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が公正・中立な立場で行います。自賠責損害調査事務所では、請求書類だけでなく、事故に関する事実確認が不十分な場合には以下のような調査を行い、後遺障害の有無や程度を明らかにします。
- 事故の当事者に対する事故状況の照会
- 病院に対する治療状況や検査結果の照会
- 事故現場の調査
(4)ステップ3|認定の可否
自賠責損害調査事務所では、調査結果を踏まえて後遺障害等級認定を行います。
後遺障害等級認定結果については、等級認定の可否(該当・非該当)、具体的な認定等級(1~14級)、認定理由などを「後遺障害等級認定票」にまとめられ、被害者に通知されます。
(5)ステップ4|異議申し立て手続き(非該当で結果に納得いかない場合)
後遺障害等級認定の結果に納得ができないときは、異議申し立てをすることができます。異議申し立てには、以下の2つの方法があります。
①保険会社への異議申し立て
事前認定の場合は加害者側の任意保険会社に対して、被害者請求の場合は加害者側の自賠責保険会社に対して、異議申し立てを行います。
異議申し立ての手続きをしても、新たな資料や証拠を提出できなければ、認定結果が覆ることはありませんので、非該当となった理由などをしっかりと精査して対策したうえで、申し立てをしましょう。
②自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
被害者は、自賠責保険・共済紛争処理機構に対して、異議申し立てをすることもできます。
自賠責保険・共済紛争処理機構では、弁護士・医師・学識経験者で交際される紛争処理委員が等級認定結果の妥当性について審理を行います。
保険会社への異議申し立ては、何度でも行うことができますが、自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立ては1回限りの申請になりますので注意が必要です。
3. 後遺障害等級認定申請の必要書類
以下では、後遺障害等級認定申請の必要書類を説明します。
(1)被害者請求の必要書類
書類の項目 | 取り付け先 | 費用 |
---|---|---|
自賠責保険金・損害賠償額・仮渡金支払請求書 | − | − |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センター | 1通800円 |
事故発生状況報告書 | − | − |
後遺障害診断書 | 治療を受けた医師または病院 | 1通5000円~1万5000円程度 |
医師の診断書 | 治療を受けた医師または病院 | 病院により異なる |
診療報酬明細書 | 治療を受けた医師または病院 | 病院により異なる |
レントゲン写真などの検査結果 | 治療を受けた医師または病院 | 病院により異なる |
通院交通費明細書 | − | − |
付添看護自認書 | − | − |
休業損害証明書 | 勤務先 | − |
印鑑証明書 | 市区町村 | 1通300円 |
戸籍謄本 | 市区町村 | 1通450円 |
委任状 | − | − |
(2)事前認定の必要書類
事前認定の手続きでは、加害者側の任意保険会社がすべての手続きを行ってくれるため、被害者が準備しなければならない書類は、基本的には「後遺障害診断書」のみとなります。
4. 後遺障害等級認定の申請で知っておきたいポイント
後遺障害等級認定の申請をする際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
(1)病院への通院はしっかりと行う
後遺障害等級認定の申請をする前提として、まずは、適切な頻度でしっかりと通院を続けることが大切です。
通院頻度が極端に少なかったり、途中で通院を止めてしまったりすると後遺症が生じていないと判断され、後遺障害等級認定が却下されてしまう可能性があります。そのため、医師の指示にしたがいしっかりと通院を行いましょう。
(2)症状を明確に示す診断書を書いてもらう
後遺障害等級認定の手続きは、基本的には書類審査となります。事故により後遺症が生じたとしても、それが書面にしっかりと記載されていなければ、後遺障害等級認定は受けられません。
そのため、後遺障害診断書の作成を依頼する際には、自覚症状や他覚的所見などの症状を明確に示す診断書を書いてもらうことが重要です。
(3)後遺障害認定に有利な証拠集めをする
被害者請求の方法で後遺障害認定の申請をする場合には、定型的な必要書類以外にも認定にあたって有利になると考えられる証拠を提出することができます。
定型的な書類だけでは自分の症状がうまく伝わらないという場合には、その他の証拠を準備するなどして後遺障害等級が認められる可能性を高めましょう。
(4)後遺障害等級認定で実績がある弁護士に相談する
適正な後遺障害等級認定の獲得を目指すのであれば、後遺障害等級認定で実績がある弁護士に相談するのがおすすめです。
後遺障害等級認定の手続きは、後遺障害の内容や程度によって認定基準が異なり、適正な後遺障害等級を獲得するには後遺障害ごとの認定基準を踏まえた対策を講じる必要があります。実績豊富な弁護士であれば、認定されやすい後遺障害診断書の書き方や検査などのアドバイスができるので、なるべく早めに相談をしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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