ひとり親(母子家庭・父子家庭)が受けられる公的支援

  • (更新:2024年09月24日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
ひとり親(母子家庭・父子家庭)が受けられる公的支援

離婚によってひとり親(母子家庭・父子家庭)になると、子育てや生活などさまざまな面で不安や悩みが生じることになります。そのような不安や悩みについては、公的支援を利用することで解消できる可能性があります。
国や市区町村が実施している公的支援は、「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費の確保」「経済的支援」の4本柱となっており、ひとり親家庭への自立支援が行われています。

1. 子育て・生活支援

ひとり親が受けられる子育て・生活支援には、以下のものがあります。

(1)就学援助支援

就学援助支援とは、経済的理由により就学が困難だと認められる学齢児童生徒の保護者に対し、市区町村が授業料以外の教育費を支援する制度です。

就学支援の対象者は、以下のいずれかの要件を満たす方です。

  • 要保護者:生活保護法6条2項に定める要保護者(生活保護を必要とする状態にある人)
  • 準要保護者:生活保護法6条2項で定める要保護者に準ずる程度に困窮していると市町村教育委員会が認める者(認定基準は各市町村が定める)

また、就学援助支援では、以下のような項目についての支援が受けられます。

  • 学用品費
  • 体育実技用具費
  • 新入学児童生徒学用品費など
  • 通学用品費
  • 通学費
  • 修学旅行費
  • 校外活動費
  • 医療費
  • 学校給食費
  • クラブ活動費
  • 生徒会費
  • PTA会費
  • 卒業アルバム代など
  • オンライン学習通信費

就学援助支援の認定基準や援助費目などは、市区町村によって異なりますので、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

(2)ホームヘルパー派遣制度

ホームヘルパー派遣制度とは、ひとり親家庭の保護者が就労、求職、疾病などにより、日常生活に支障が生じたときに、ホームヘルパーを派遣して家事や育児の援助をしてもらうことができる制度です。

支援対象者や支援の内容、負担金の有無などは、市区町村によって異なりますので、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

(3)子育て短期支援事業

子育て短期支援事業とは、ひとり親家庭の保護者が就労や疾病などにより、家庭で子どもの養育が一時的に困難になったときに、児童養護施設などで一定期間子どもの養育・保護を行う制度です。

支援対象者や利用料などは、市区町村によって異なり、制度を利用するためには事前に申請する必要がありますので、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

2. 就業支援

ひとり親が受けられる就業支援には、以下のものがあります。

(1)ハローワークによる就業支援

ハローワークでは、児童扶養手当受給者などを対象に、就労による自立支援を実施しています。具体的には、以下のような無料サービスをハローワークの相談窓口で行っています。

  • 全国各地の求人情報の検索
  • 仕事探しに関する相談・職業紹介、履歴書の作成や面接のアドバイス
  • 担当者制による個別支援
  • 就職後のフォロー

(2)高等職業訓練促進給付金

高等職業訓練促進給付金とは、特定の資格取得を希望するひとり親家庭の保護者に対し、修業中の生活負担軽減のために行われる金銭的な援助です。

高等職業訓練促進給付金の対象者は、以下のいずれの要件も満たすひとり親家庭の保護者です。

  • 児童扶養手当の受給者または同等の所得水準の人
  • 養成機関で1年以上のカリキュラムを修業して対象資格の取得が見込まれること
  • 仕事または育児と修業の両立が困難であること

また、対象となる資格の代表的なものとしては、以下のものがあります。

  • 看護士
  • 介護福祉士
  • 保育士
  • 歯科衛生士
  • 理学療法士
  • 保健師
  • 助産師
  • シスコシステムズ認定資格
  • LPI認定資格

高等職業訓練促進給付金制度により給付される金額は、以下のとおりです。

  • 訓練期間中:月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)。ただし、養成機関での課程修了までの最後の1年間は4万円加算
  • 訓練終了後:5万円(住民税課税世帯は2万5000円)

(3)自立支援教育訓練給付金

自立支援教育訓練給付金とは、ひとり親家庭の保護者が就労するための必要な養育訓練を受ける際に行われる金銭的な援助です。

対象となる教育訓練を受講し、修了した場合にかかった経費の60%(下限:1万2001円、上限:160万円)が支払われます。

自立支援教育訓練給付金制度を利用する際には、受講前に都道府県から口座の指定を受ける必要がありますので、お住まいの市または都道府県に相談するようにしましょう。

3. 養育費確保支援

ひとり親が受けられる養育費確保支援には、以下のものがあります。

なお、都道府県ごとに、養育費確保支援の要件や内容が異なりますので、お住まいの都道府県のホームページなどを確認するようにしましょう。

(1)公正証書の作成支援

公正証書の作成支援とは、ひとり親家庭の保護者が養育費の取り決めを公正証書で行った場合に、公証人に支払う手数料などを援助する制度です。

養育費の取り決めを公正証書でしておくことで、相手が養育費の支払いを怠ったときは、すぐに強制執行の手続きを行うことが可能です。継続的に養育費の支払いを受けるためには、公正証書で取り決めをしておくことが有効な手段ですので、支援の対象となる方は、積極的に利用していきましょう。

(2)調停申し立てや裁判に関する費用補助

当事者間での養育費に関する取り決めを公正証書以外の方法(口頭の合意または合意書)で行った場合に、強制執行するためには、まずは家庭裁判所に養育費請求調停の申し立てをしなければなりません。

調停の申し立てにあたっては、戸籍謄本の取得費用、裁判所に納める収入印紙や郵便切手代がかかりますが、調停申し立てや裁判に関する費用補助制度を利用すれば、負担を軽減することができます。

4. 経済的・生活支援

ひとり親が受けられる経済的・生活支援には、以下のものがあります。

(1)経済的支援

①児童扶養手当

児童扶養手当とは、ひとり親家庭の生活の安定と自立促進などを図ることを目的として支給される手当です。

児童扶養手当の金額は、所得金額および子どもの数に応じて、以下のように決められています。

  • 児童1人のとき:4万4140円(全額支給)、4万4130円~1万410円(一部支給)
  • 児童2人のとき:1万420円を加算(全額支給)、1万410円~5210円を加算(一部支給)
  • 児童3人以上のとき:3人目以降1人につき6250円を加算(全額支給)、6240円~3130円を加算(一部支給)

児童扶養手当は、以下の要件を満たすひとり親家庭の保護者に支給されます。

  • 父母が婚姻を解消した子ども
  • 父または母が死亡した子ども
  • 父または母が一定程度の障害の状態にある子ども
  • 父または母が生死不明の子ども
  • 父または母が1年以上遺棄している子ども
  • 父または母が裁判所からDV保護命令を受けた子ども
  • 父または母が1年以上拘禁されている子ども
  • 婚姻によらないで生まれた子ども
  • 棄児など父母がいるかいないか明らかでない子ども

②母子(父子)寡婦福祉貸付金

母子(父子)寡婦福祉貸付金とは、20歳未満の子どもを扶養しているひとり親家庭の保護者に対して、就労や就学で資金が必要になったときに貸し付けを受けることができる制度です。

貸し付けを受けることができる資金の種類には、以下の12種類があります。

  • 事業開始資金
  • 事業継続資金
  • 修学資金
  • 技能習得資金
  • 修業資金
  • 就職支度資金
  • 医療介護資金
  • 生活資金
  • 住宅資金
  • 転宅資金
  • 就学支度資金
  • 結婚資金

なお、貸し付け条件については、貸付金の種類によって異なりますので、詳しくは、お住まいの自治体の窓口で確認するようにしましょう。

③ひとり親家庭の医療費助成

医療費助成とは、ひとり親家庭の保護者および子どもが医療機関を受診したときの医療費の自己負担分の助成を受けることができる制度です。

ひとり親家庭の医療費助成制度を利用する際には、所得制限が設けられていますが、対象となる方は、医療費の自己負担を1割に抑えることができます。詳しくは、お住まいの市区町村役場で確認してみましょう。

(2)生活支援

①公営住宅の優先入居/家賃補助

自治体によっては、ひとり親家庭だと、公営住宅の入居申し込みの際に優先的に入居を認めてもらえる制度があります。また、一定の要件を満たすひとり親家庭については、入居後の家賃の一部を補助してもらえる制度もあります。

②国民年金・国民健康保険料の減免制度

国民年金の保険料については、収入条件を満たせば保険料の全部または一部の免除を受けることができます。また、国民健康保険料についても、前年度の収入が一定額以下であれば、保険料の減額を受けられます。

減免制度を利用するには、所定の手続きが必要ですので、お住まいの自治体で手続きをするようにしましょう。

③水道・下水道料金の免除

一定の要件を満たす場合には、水道料金や下水道料金の一部を免除してもらうことができます。

免除を受けるには申請が必要ですので、お住まいの地域を管轄する水道局に申請をするようにしましょう。

④所得税・住民税の軽減

ひとり親家庭では、「寡婦控除」や「ひとり親控除」といった所得控除を受けることができます。これにより、所得税や住民税の負担を軽減することができます。

詳細については、会社員の方であれば勤務先に、自営業者であればお近くの税務署に確認してみましょう。

⑤通勤定期券の割引

児童扶養手当を受給しているひとり親家庭では、JRの通勤定期券を購入する際に、3割引で購入することができます。

通勤定期券の割引制度を利用する場合は、市区町村役場およびJRの窓口での手続きが必要です。

その他、専業主婦が離婚後に利用できる減免・割引制度については、以下の記事もご覧ください。
専業主婦の離婚届の書き方は? 離婚後に受けられるサポートも紹介

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