逮捕・犯罪歴を削除したい! 記事を削除できるケースと削除方法
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逮捕歴や犯罪歴に関する記事がインターネット上に存在する場合、何もしなければ半永久的に情報が残ったままの状態になりますので、その後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。このような逮捕・犯罪歴に関する記事については、一定の要件を満たせば削除が可能ですので、その手順やポイントをしっかりと押さえておきましょう。
本コラムでは、逮捕・犯罪歴の記事を削除できるケース・できないケースやその理由、削除方法などを解説します。
1. 逮捕歴・犯罪歴に関する情報 どこまで削除できる?
逮捕歴・犯罪歴に関する情報は、どこまで削除できるのでしょうか。以下では、逮捕・犯罪歴の記事を削除できるケース・できないケース、削除請求のポイントについて説明します。
(1)逮捕・犯罪歴記事を削除できる可能性が高いケース
逮捕・犯罪歴に関する記事が削除できるかどうかは、記事の内容によって左右されますので、一概にはいえませんが、一般的には、以下のような事情を考慮して削除の可否が判断されます。
- 事件の内容、態様、性質、時期
- 刑事裁判の結果、刑事処分の内容
- 個人の日常生活への支障の有無、程度
これを踏まえて、逮捕・犯罪歴に関する記事を削除できる可能性が高いケースとしては、以下のものが挙げられます。
①実名報道記事
実名報道記事は、本人のプライバシーを侵害し、更生への支障が生じることになるので、削除請求の対象となります。ただし、逮捕・犯罪歴の実名報道は、表現の自由として保護されているため、表現の自由よりもプライバシー権の保護が優越する場合に削除可能となります。具体的には、事件の内容、経過年数、社会的な影響などを考慮して、すでに事件が風化しているといえる場合には削除できる可能性が高いでしょう。
②誤った逮捕情報
誤認逮捕など事実とは異なる逮捕歴が記事になっている場合、本人の名誉や信用を著しく毀損するものといえるため、記事の削除や訂正報道を求めることが可能です。また、そのような記事を掲載したマスコミに対しては、損害賠償請求ができる可能性もあります。
③匿名掲示板への悪質な書き込み
匿名掲示板で、過去の逮捕・犯罪歴に関する書き込みがなされた場合、本人の名誉やプライバシーが侵害されることになり、投稿の削除を求めることができます。悪質な書き込みであった場合には、発信者情報開示請求により投稿者を特定して、投稿者に対する損害賠償請求も検討する必要があります。
(2)逮捕・犯罪歴記事の削除が難しいケース
以下のようなケースでは、逮捕・犯罪歴に関する記載の削除は難しいといえます。
①裁判所の判決文
裁判所の判決文については、司法の公開の原則から個人が特定される情報やプライバシー侵害などの例外を除いて、削除を求めることは困難です。
②犯罪事実を正確に記載した記事
誤認逮捕など誤った内容の記事であれば比較的容易に削除できますが、犯罪事実を正確に記載した記事については、本人のプライバシーと報道機関の表現の自由が対立するため、削除は容易ではありません。特に、公共性・公益性が高いと判断される記事は削除が難しいといえます。
(3)逮捕・犯罪歴記事の削除請求のポイント
逮捕・犯罪歴に関する記事の削除請求をする際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
①具体的な法的根拠、権利侵害の内容を明確にする
逮捕・犯罪歴に関する記事により、どのような権利が侵害されているのか、それによりどのような不利益が生じているのかを明確にすることが大切です。削除に応じるかどうかは、当該記事を掲載する利益よりも、逮捕・犯罪歴に関する記事により本人が被る不利益が大きいといえなければならないため、それを具体的に示すようにしましょう。
②証拠となる資料を準備する
逮捕・犯罪歴に関する記事の削除請求をする際には、証拠となる資料を添付する必要があります。そのため、当該記事が掲載されているサイトのスクリーンショットやURLなどの証拠を残しておきましょう。
③専門家のサポートを受ける
逮捕歴・犯罪歴に関する記事の削除を求めるには、法的根拠に基づいて削除請求をしなければなりません。法的知識や経験の乏しい一般の方では、適切な表現で削除請求をすることができず、削除依頼に失敗するリスクがあります。そのため、削除請求は専門家である弁護士に依頼した方がよいでしょう。
2. 【情報の種類別】逮捕・犯罪歴記事の削除依頼の手続きを解説
以下では、情報の種類別に逮捕・犯罪歴記事の削除依頼の手続きを説明します。
(1)報道機関・ニュースサイトへの削除依頼
報道機関やニュースサイトに逮捕・犯罪歴記事が掲載されている場合の削除依頼の手続きは、以下のようになります。
①削除依頼文の作成
各サイトにより削除依頼のルールは異なりますが、サイト内の問い合わせフォームまたは管理者へのメールにより削除依頼をするのが一般的です。その際には、以下のような事項を記載した削除依頼文を作成する必要があります。
- 削除を希望する記事のURL
- 削除を希望する記事の内容
- 当該記事により侵害された権利の内容
- 当該記事により生じている不利益の内容、程度
②交渉のポイント
削除依頼をする際には、削除を求める法的根拠を示さなければ、削除に応じてくれない可能性があります。過去の判例などを参考に削除の対象となる記事であることを論理的に説明することが重要なポイントになります。
また、威圧的・感情的な対応では削除に応じてもらうのは困難なので、丁寧な言葉づかいを心がけてください。
(2)検索サイト運営会社への削除依頼
GoogleやYahoo!などの検索エンジンには、検索キーワードを入力した際にサジェストや関連キーワードが表示される機能が搭載されています。このようなサジェストや関連キーワードに「本名 逮捕」などのワードが表示される場合には、以下のような方法で削除依頼することができます。
①Google、Yahoo!など、各社の削除基準
【Googleの削除基準】
- 暴力的または残虐な内容の検索候補
- 露骨な性的表現、下品な表現、冒涜的な内容を含む検索候補
- 特定の集団に対して差別的な内容の検索候補
- 著名人に対する不適切かつ抽象的な検索候補
- 危険な検索候補
【Yahoo!の削除基準】
Yahoo! JAPANでは、以下の事情を踏まえて、情報を公表されない被害申告者の法的利益と情報を公表する利益との比較衡量を行い、削除に応じるかを判断しています。
- 記載された情報の性質
- 当該情報の社会的意義、関心の程度
- 当該情報の掲載時からの時の経過
②検索結果削除請求の手順
検索サイト運営会社では、専用の削除申請フォームを設置していますので、まずは、専用フォームにアクセスします。
専用フォームに必要事項を記入して削除申請をすれば、削除請求は完了となります。
あとは、検索サイト運営会社の審査を待ちましょう。
③認められるケース、認められないケース
検索サイト運営会社の削除基準に該当する内容であれば、削除請求が認められる可能性が高いです。
他方、削除基準を満たさない内容である場合や、削除申請のルールに則っていない申請であった場合には、削除が認められません。
④報道機関への削除依頼と並行して行う
検索サイト運営会社への削除請求は、記事自体を削除するものではありません。そのため、検索サイト運営会社への削除依頼をする場合は、当該記事を掲載している報道機関・ニュースサイトへの削除依頼と並行して行うようにしましょう。
(3)掲示板・SNS運営会社への削除依頼
掲示板(5ちゃんねる、爆サイなど)やSNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)などに逮捕・犯罪歴記事が掲載されている場合には、掲示板やSNSの運営会社に対して、当該記事の削除依頼をしていくことになります。
①各サイトの削除依頼は管理者に問い合わせる
掲示板・SNSの運営会社では、それぞれ記事の削除に関するルールを設けています。各運営会社の削除に関するルールに該当する記事が投稿された場合には、専用の削除フォームを利用して、削除申請することが可能です。
②削除依頼が認められやすいケース
掲示板やSNSに投稿された逮捕・犯罪歴に関する書き込みが名誉毀損やプライバシー侵害に該当する場合には、削除依頼が認められやすいといえます。
そのため、削除依頼をする際には、これらの権利侵害に該当することを法的根拠に基づいて記載することが重要になります。
③悪質な書き込みの場合
掲示板やSNSに悪質な書き込みがなされたときは、投稿の削除だけでなく、投稿者への責任追及も検討していく必要があります。
ただし、匿名での投稿だとまずは投稿者を特定しなければなりませんので、発信者情報開示請求を行い、その後、損害賠償請求の手続きを行うようにしましょう。
3. 犯罪・逮捕歴の削除依頼に応じてもらえない場合の相談先
自分で削除依頼をしたものの、犯罪・逮捕歴の削除に応じてもらえなかったときは、以下のような相談先を利用してみるとよいでしょう。
(1)弁護士などの法律専門家
弁護士であれば、法的な根拠に基づいて削除依頼ができるので、犯罪・逮捕歴の削除請求は、弁護士などの専門家に依頼することで削除に応じてもらえる可能性が高くなります。
また、削除依頼に応じてくれないときでも記事の削除を求める仮処分の申し立てなどの法的手段により記事の削除を実現することも可能です。
自分で対応するのが難しいときは、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。
(2)法テラス
弁護士に相談・依頼したくても経済的な余裕がなくてできないという方は、法テラスの民事法律扶助の制度を利用してみるとよいでしょう。
民事法律扶助は、弁護士に無料で相談でき、依頼した場合には弁護士費用の立替えをしてもらえますので、普通に弁護士に依頼するよりも経済的な負担を軽減することができます。
ただし、民事法律扶助の利用には、収入や資産が一定基準以下であることが条件となりますので注意が必要です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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