ネットでの誹謗中傷! 名誉毀損で訴えられたらどうなる?
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1. ネット上の書き込みが「名誉毀損」になる?
どのような場合にインターネット上の書き込みが「名誉毀損」になるのでしょうか。
(1)「名誉毀損」とは
名誉毀損とは、「公然と事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させた場合」に成立する犯罪です(刑法230条1項)。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指すため、誰でも閲覧可能なインターネット上の掲示板やSNSなどに誹謗中傷の投稿をすると名誉毀損罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪が成立すると3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
(2)ネット上で名誉毀損になるケース
インターネット上での誹謗中傷により名誉毀損罪が成立した裁判例としては、以下のようなものがあります。
【あおり運転の加害者の勤務先として無関係な会社が投稿された事例】
平成29年に発生した東名高速道路でのあおり運転の事案に関し、逮捕された被疑者とは無関係であるにもかかわらず、インターネット上の掲示板で「○○は事故加害者の親である」「○○が代表を務める会社に事故加害者が勤務している」などの虚偽の書き込みがなされました。
この事件では、名誉毀損罪が成立し、被告人には罰金30万円が科されました。
(出典:裁判所「裁判例結果詳細」)
このように具体的な事実を摘示してインターネット上の掲示板などに虚偽の情報を投稿すると名誉毀損罪が成立します。
これに対して、単に「○○はアホ」「○○は役に立たない」などと事実の摘示を伴わない誹謗中傷をした場合は、名誉毀損罪ではなく侮辱罪が成立します。
(3)匿名でも個人は特定される
インターネット上の掲示板やSNSは、基本的には匿名で投稿がなされ、投稿自体からは個人を特定することはできません。しかし、完全な匿名が保障されているわけではなく、誹謗中傷の投稿については「発信者情報開示請求」という手続きにより個人を特定することが可能です。
匿名投稿でも個人は特定されるため、安易な書き込みは禁物です。
【誹謗中傷】ネット上の名誉毀損はどこから? 要件や刑罰を解説
2. 名誉毀損で訴えられたらどうなる? 流れを解説
名誉毀損で訴えられたらどうなるのでしょうか。以下では、名誉毀損で訴えられたときの民事上および刑事上の責任追及の流れを説明します。
(1)民事訴訟と刑事告訴でどう違う?
名誉毀損の法的責任には、民事責任と刑事責任の2種類があります。
①民事訴訟の場合
民事責任とは、名誉毀損により精神的苦痛を被った被害者に対して慰謝料の支払いをすることをいいます。被害者からは、民事責任の追及として慰謝料の支払いを求める民事訴訟を提起される可能性があります。
②刑事告訴の場合
これに対し、刑事責任とは、名誉毀損罪という犯罪行為に対して刑罰という制裁が科されることをいいます。名誉毀損罪は、被害者の告訴がなければ起訴することができない「親告罪」にあたるため、刑事責任を追及するには刑事告訴が必要になります。
(2)民事訴訟で損害賠償請求をされた場合
名誉毀損をされた被害者から民事訴訟で損害賠償請求をされた場合の流れは、以下のようになります。
①裁判所から訴状が届く
被害者が民事訴訟を提起すると、裁判所から加害者のもとに訴状などの書類が送られてきます。加害者としては、裁判所から書類が届いた時点で、被害者から民事訴訟を提起されたことを知ります。
②答弁書を作成して裁判所に提出する
訴状の内容を確認して、相手方に反論がある場合には期限までに答弁書という書面を作成して裁判所に提出します。裁判では、主張や反論があるときは、基本的には書面により行うことになります。
③第1回口頭弁論期日
指定された日時に裁判所に出頭し、第1回口頭弁論期日を執り行います。第1回口頭弁論期日では、原告からの訴状の陳述、被告からの答弁書の陳述が行われ、その後、次回以降の期日の日程を決めて終了となります。
なお、被告は、答弁書を提出していれば第1回口頭弁論期日を欠席することもできます。
④続行期日
裁判の期日は、基本的には1か月に1回のペースで行われ、当事者双方からの主張・立証が尽くされるまで続けられます。
⑤和解勧試
当事者からの主張・立証がある程度でそろった段階で、裁判所から和解の打診がなされることがあります。裁判所から提示された和解案を検討し、双方が応じる意向を示した場合は和解成立により民事訴訟の手続きは終了となります。
⑥判決
和解が成立しない場合、その後も審理が続けられ、最終的に裁判官が判決を言い渡します。
(3)刑事告訴された場合
名誉毀損で刑事告訴された場合の流れは、以下のようになります。
①警察による捜査の開始
名誉毀損の被害を受けた被害者から刑事告訴があると警察は捜査を開始します。名誉毀損の投稿をした犯人が特定できていないときは、警察の捜査によって特定されます。
②在宅または身柄事件として立件
被疑者が特定され、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときは、在宅事件または身柄事件として立件されます。
身柄事件になると逮捕・勾留され、被疑者は、警察署内の留置施設で身柄拘束を受けることになります。他方、在宅事件になれば身柄拘束を受けることはありませんが、警察からの出頭要請に応じて取り調べに対応しなければなりません。
③検察官による起訴または不起訴
警察による捜査の結果を踏まえて、検察官が事件を起訴するか不起訴にするかを判断します。不起訴処分となれば、前科が付くことはなく、身柄拘束されている場合には釈放されます。
④刑事裁判(公判請求、略式請求)
検察官により起訴されると刑事裁判により、罪を犯したのか、罪を犯したと認められる場合にどのような刑罰を科すべきかが審理されます。
名誉毀損罪で起訴されるパターンには、公判請求と略式請求の2つがあります。被疑者が罪を認め、略式請求に同意している場合は、書面審査のみで刑を言い渡す略式手続きを利用することができます。
名誉毀損罪は、有罪となった場合でも罰金刑で済むことが多いですが、前科の有無や投稿内容の悪質性によっては懲役刑が選択されることもあります。
(4)示談をすることが解決への近道
誹謗中傷の書き込みにより被害者の名誉を毀損してしまったときは、被害者との示談を成立させることが重要です。
被害者との間で示談が成立すれば、刑事事件において不起訴処分となる可能性が高くなり、前科が付くのを回避することができます。また、民事事件でも示談によりすべて解決済みとなれば、民事訴訟を提起されるリスクもありません。
示談金の額は、具体的な事案によってケースバイケースですが、個人の場合で10~50万円程度、法人の場合で50~100万円程度が相場になります。
3. 名誉毀損で訴えられたらまずは弁護士に相談を
名誉毀損で訴えられてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
(1)相談窓口
名誉毀損によるトラブルは、弁護士に相談することができます。弁護士への相談は基本的には予約制なので、早めに法律事務所に連絡し、相談の予約を入れるようにしましょう。
なお、経済的余裕がなくて弁護士に相談・依頼ができないときは、法テラスの民事法律扶助を利用すれば、無料で相談でき、弁護士費用も法テラスに立替えてもらうことが可能です。
(2)名誉毀損に強い弁護士の選び方
名誉毀損に関するトラブルを弁護士に依頼するのであれば、名誉毀損に強い弁護士に依頼すべきです。一般の方では、どの弁護士が名誉毀損に強いのかを把握していないので、以下のような観点から弁護士を選ぶとよいでしょう。
- 法律事務所のホームページに名誉毀損に関する解決実績やコラムが掲載されている
- 相談時に名誉毀損事件の経験の有無を確認する
(3)早期の相談が重要な理由
名誉毀損で刑事事件になった場合、検察官による起訴または不起訴の判断が出る前に被害者との示談を成立させなければなりません。起訴されてしまうと、ほとんどの事件で有罪となり、前科を回避するのは困難です。
そのため、早期に被害者との示談を成立させるためにも、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
(4)弁護士費用の相場
名誉毀損に関する弁護士費用は、依頼する事件の種類(刑事事件、民事事件)や逮捕の有無、請求額などによって異なります。そのため、弁護士費用の相場は、相談した弁護士に尋ねてみるとよいでしょう。
4. ネット上のトラブルを防ぐために知っておくべきこと
インターネット上のトラブルは、誰でも加害者になる可能性があります。誹謗中傷で他人の名誉を毀損してしまうと、民事および刑事上の責任を負わなければならないリスクがあります。加害者にならないためにも以下の点に注意して行動するようにしましょう。
- 匿名だからといって過激な発言をしない
- 人の言動を批判するときは人格攻撃にならないようにする
- 他人の意見や投稿に流されない
- 誹謗中傷の書き込みをしてしまったときはすぐに削除する
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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